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魔力極振りの迷宮探索  作者: 大山 たろう
第二章 体育祭
8/33

迷宮探索2-1

 四月二週目となる土曜日となった。


 今日は迷宮にある実験をしに行く。まずは、一番近い迷宮まで自転車で向かう。


 そして仮面をつけ、いつものように迷宮にもぐると、分体(ドッペルゲンガー)を呼び出す。こいつ、結構消し方が特殊だった。二人で手を合わせると、合体したかのように二つが一つになる。そしてその時なら再召喚が可能らしい。


 迷宮の一階層、人目につかないところで発動する。

 すると、一人が二人になるような錯覚とともに、分体(ドッペルゲンガー)が生成される。


 俺と瓜二つの分体(ドッペルゲンガー)に任せるのは。


分体(ドッペルゲンガー)、俺が学校行ってる間とかも、迷宮でレベル上げしてくれ、できるか?」


 つまり、俺が迷宮に行かなくてもレベルアップできる環境を作る。


 分体(ドッペルゲンガー)は頷くと、スライムをつぶしながら奥へと進んでいった。


 これで俺がヒモ生活できる......じゃなく、俺もスライムを倒して二倍効率でレベリングだ。


 そう考え、俺は洞窟を進んでいく。


「そうだ、支援魔法の練習するか。」


 支援魔法はステータスを上げるために必要になるだろうから、しっかり練習しないと。


「対象:自身 全ステータス。『強化(エンハンス)』」


 すると、自分の周りにうっすらと光の膜が張られる。


 ・支援魔法適正が支援魔法lv1へと変化しました。


 この光の膜、ちょっと目立つから消したいが、MP消費増えるし支援魔法レベルも足りないんだよな......

 がっかりしながらも、一応発動しているのでステータスを確認する。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 藍染 拓海 人間 男 魔力タンクlv10


 HP10/10

 MP170/220

 筋力10(+1)

 体力10(+1)

 敏捷10(+1)

 知力10(+1)

 魔防10(+1)

 器用10(+1)

 幸運10(+1)


 スキル

 魔力譲渡lv2

 魔力回復増加lv2

 魔力操作lv1

 支援魔法適正

 分体(ドッペルゲンガー) lv1

 スキルポイント   11



 分体(ドッペルゲンガー) 人間 男 


 HP10/10

 MP0/220

 筋力10(+1)

 体力10(+1)

 敏捷10(+1)

 知力10(+1)

 魔防10(+1)

 器用10(+1)

 幸運10(+1)


 スキル

 魔力譲渡lv2

 魔力操作lv1

 支援魔法適正


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ま、まぁlv1でこれは上出来だろう。そして練習していた新しい文字で戦術の幅が一気に人がる!


 そんなことを考えながら、五階層、ボススライムを目指すのだった。


 ボス部屋の前。

 俺は、またこの彫刻のような扉の前で足を止める。


 また、殺されるかもしれない。


 その可能性が脳裏をよぎる。だが、ここを超えられないと百階層など夢のまた夢だろう。

 ここで俺は足踏みをしているわけにはいかない。


 俺は竦む足に喝を入れると、あの日と同じように扉を開く。


 やはり中央に陣取るキングスライム。


 また同じ戦法を取ろうと上を見上げると


 ―――なかった。


  シャンデリアが、復活していなかったのだ。


 迷宮の壁や床、装飾品などは、時間経過で消滅、そして再設置されるようになっているのだが、ボスを殺されるとわかったっ迷宮が対策したのだろうか。


 天井の明かりはシャンデリアではなく天井に星のように埋め込まれた水晶へと変わっていた。


 こうなると、同じ戦法は使えない。

 俺は迷わず新しい文字をを起動する。

 それは、操作。

 その名の通り操ることができるようになる中級クラスの魔法文字だ。


 俺はそれを組み込んだ魔法をナイフにかける。


「付与:魔法刀身」

 魔法陣は書き込まれた通りに魔力を拡散、操作で刀身を伸ばした形状を取らせて、それを固定する。

 それは、マイナーな魔法だった。

 というのも、理由が三つある。

 一つ目は、射出した時点で魔法陣は終了している魔弾と違って、この魔法は継続的に制御しなくてはならない。そのためコスパが非常に悪いのだ。

 二つ目は、伸ばしたところで、後衛である魔法使いが使う場面がない。

 最後に三つ目、魔法の構造上、どうしても長さを変えるときは、一度魔法陣を解いて、魔力を追加して、操作しなおしたうえで、また固定という四工程を踏む必要がある。そのため不意打ちには使えないだろう。


 が、魔力が大量にあり、後衛などいないソロの探索者の俺にはデメリットはほとんどないのだ。


 ナイフの刀身を槍より長くする。そしてスライムの魔石を突く。


 少しずつ吸収されているが、固定が少し抵抗していたようで、すぐに魔石を攻撃できた。


 しかし、破壊には至らず、魔法が吸収されつくされた。


 俺は吸収され維持の対象を失い、無用となった魔法陣を破棄すると、もう一度組みなおす。


「付与:魔法刀身」


 二回目の付与が終わったところで、スライムもそうはさせるかと触手をたたきつける。


 しかしその大振りの攻撃は俺には当たらず、また魔石を攻撃されるボススライム。


「これは......ループいただきましたー!」


 動きがほぼループ化し、俺も幾分か余裕が出てきた。


 スライムの触手をよけ、突いて、離れる。魔法刀身をかけなおし、またよける。


 その動きを八回ほど繰り返したところで、ボススライムは倒れる。


 ・ボススライムを倒しました


 ・経験値10を獲得


 ・レベル12になりました


 さっそくステータスを確認する


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 藍染 拓海 人間 男 魔力タンクlv12


 HP10/10

 MP170/220

 筋力10

 体力10

 敏捷10

 知力10

 魔防10

 器用10

 幸運10


 スキル

 魔力譲渡lv2

 魔力回復増加lv2

 魔力操作lv1

 支援魔法適正

 分体(ドッペルゲンガー) lv1

 スキルポイント   15



 分体(ドッペルゲンガー) 人間 男 


 HP10/10

 MP0/220

 筋力10

 体力10

 敏捷10

 知力10

 魔防10

 器用10

 幸運10


 スキル

 魔力譲渡lv2

 魔力操作lv1

 支援魔法適正


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 五階層ボスであるスライムを倒したため、六階層へと向かう門が開かれていた。


 俺は一度分体(ドッペルゲンガー) と合流すると、二人で、六階層への門をくぐった。



 涼しい風。

 生い茂る草花の香りが鼻をちらつく。

 太陽の光が心地よいここ六階層は、草原であった。


 先ほどまでのじめじめとした空気から解放されたからか、一層爽快な気分になる。


 周囲を見渡しても、草、草、草。


 迷宮という割には、迷わせる要素が皆無である。


 二人で少し周囲を探索する。この階層の敵は、っと......


 そう思っていた矢先、現れる。


 そこにいたのは、臭い、汚い、怖いの3Kがそろった、緑の肌を持つ魔物


 ―――ゴブリンが、現れた。


 俺は迷いなく魔弾を撃ちだすと、ゴブリンはギャアギャアといいながら、手に持つこん棒で抵抗してきた。


 俺はすんでのところで回避すると、もう一度魔弾を、今度は魔力をしこたま込めて頭部に向けて撃つ。


 ゴブリンは回避できず、頭が爆散する。

 その後、頭部と残された体は霧となって吸収された。


 ・分体(ドッペルゲンガー) のレベルが上がりました


 ・分体(ドッペルゲンガー) 内スキル、感覚共有を獲得しました。


 ・魔力回復増加がlv3になりました。


 おお、一気にレベルが上がる。分体(ドッペルゲンガー) の上昇の心当たりは......一緒に戦ったとか、そんなもんしか思いつかないな。魔力回復増加はさっきから減った魔力をフル稼働で回復させようとしてくれてるからだろう。


 そこに関しては気楽に考え、前を見る。


 ゴブリンはもういない。

 しかし、魔法陣によって多少恐怖耐性が与えられていても、気分が悪くなった。

 人型の魔物とはいえ、ためらいなく殺せた。


 その事実が、誇らしく、それに恐ろしく感じた。


 しかし、体育祭では恐らく人を殺すだろう。


 覚悟を決めないと。そう考え、もう少し六階層で戦闘を続けるのだった。


 迷宮探索2-2


 結局先日は、レベルが上がったところで撤退してしまった。今日は十階層ボスを倒す。そう考え、データをそろえていく。

 気が付けば昼になっていたので、昼食を食べてから出発する。


 いつものように迷宮にもぐる。そしてまたじめじめとした洞窟を自分の庭のように迷わず進む。


 慣れてきた五階層、ボスの部屋だが、一度ボスを倒すと三日間は再戦できないらしい。ドアを開けたがやはり誰もいなかったので、六階層へと向かう。


 草の生い茂るフィールド。俺は迷わないよう地図を見ながら、先人たちのつけた目印を頼りに進む。


 は目印と言われたら、赤い矢印とかを連想するだろうが、迷宮内でそれを置きっぱなしにしていると、迷宮の掃除屋と言われる徘徊型ボスが現れるらしく、人工物は長時間(とはいっても数週間ほどは大丈夫)おけないため、たまに生えている木や、花などを目印にしている。


 頼りにならないと思っていたが、木を見つけ一安心。そのまま木の上にある門から七階層へ。


 どうか次はわかりやすいところを、どうか......と思っていたが、神は俺を見捨てたのだろうか、また草しかない草原の中央がスタート地点のようだ。


「ぬぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅぅぅ」


 俺は一人うなり声をあげた。


「もう精神が疲れた......」


 やっと十階層へと到達。これで百階層の十分の一と考えると頭がくらくらしてきた。

 それでもマップ通りに進んでいくと、五階層と同じような扉があった。


 俺は、強化(エンハンス)をかけると、分体(ドッペルゲンガー)を呼び出した。そういえば、こいつ魔法使わないよな......なんでだ?


「なぁ、お前って、魔法使えるのか?」


 そう聞いてみると、コクコクと頷いた。


「じゃあ、次の戦闘、使ってくれるか」


 そう言ったが、なぜか首を横に振られた。

 とりあえず、強化(エンハンス)の上昇幅を見るためにステータス見るか。

 もう何回目だろうと思ったが、この少しずつ強くなっている感がとても癖になって、つい見てしまう。


 俺はステータスを慣れた手つきで確認した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 藍染 拓海 人間 男 魔力タンクlv13


 HP10/10

 MP185/240

 筋力10(+1)

 体力10(+1)

 敏捷10(+1)

 知力10(+1)

 魔防10(+1)

 器用10(+1)

 幸運10(+1)


 スキル

 魔力譲渡lv2

 魔力回復増加lv2

 魔力操作lv1

 支援魔法適正

 分体(ドッペルゲンガー) lv1

 スキルポイント   15



 分体(ドッペルゲンガー) 人間 男 


 HP10/10

 MP0/240

 筋力10(+1)

 体力10(+1)

 敏捷10(+1)

 知力10(+1)

 魔防10(+1)

 器用10(+1)

 幸運10(+1)


 スキル

 魔力譲渡lv2

 魔力操作lv1

 支援魔法適正


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 強化(エンハンス)やっぱりオール1かー.....。重ね掛けはしないほうがいいって書いてたしな......


 と考えていると、ある点に気づいた。


分体(ドッペルゲンガー)、お前、MPゼロだったのか」


 そういうと、分体(ドッペルゲンガー)は嬉しそうにコクコクと頷く。


 俺はとりあえず半分ロスはあるもののほど魔力譲渡をする。


「魔法は使えるか?」と聞くとコクコクと頷いていた。


 よし、行くか。


 俺は、その門を開いた。


 ボス戦、スタートだ。



 門の奥には、玉座の間のような場所が広がっていた。

 しかし玉座の間とはいうものの、人間社会のような赤いカーペットに黄金が、といったような華美なものではなく、野蛮さと力の象徴ともいえるようなつくりをしていた。


 壁には牛の頭が飾られ、角の先に火がともされていた。


 天井はここも星のように無数の光る水晶が地面を明るく照らしていた。


 最奥には、大きな玉座。何かの骨で組み立てられたかのようなそれは、その王が座るにふさわしいと思える出来だった。


 ボスゴブリンが現れる。しかし攻撃はしてこない。


 ボスゴブリンはこちらに目もくれず、玉座に座る。


 すると、横のドアから、十五体のゴブリンが現れる。

 そいつらはこん棒ではなく、盾や剣、弓、杖と、役割分担までしっかりしているようだ。


 俺はすぐさま分体(ドッペルゲンガー)と二手に分かれると、魔弾を乱射した、


 一部は盾にふさがれたようだが、結構な数が後衛のほうまで行ったようで、杖と弓は後ろへ引いている。


「付与:魔法刀身」


 俺はその隙に剣を持っているゴブリンに切りかかる。

 ぐぇぇという声とともに、そいつは霧となった。


「ゲギャギャギャ!」


 怒った様子の弓持ちと杖持ちは、俺に向かって遠距離攻撃をしてきた。


 すぐさま俺は今まで使いどころのなかった魔法を使う。


 収束、操作。


 二文字で組めるこの魔法は、相手の遠距離攻撃を吸い込み、俺の支配下に置ける。


 勢いが強いと収束しきれずに突っ込んで来るため、格下にしか使えない魔法だが、しっかり効いたようだ。


 俺は撃ち込まれた魔法を射出し返す。


 すると跳ね返ってきた自身の攻撃に対応できず、後衛がほとんど霧と化す。



 俺は残りの後衛に魔弾を撃ちながら、何もできずに残ってしまった盾持ちに対して射出を行う。


 射出というのは、魔法文字を使ったものではなく、手から魔力を一気に放出し、衝撃波を飛ばしているようなものなのだ。


 それ単体に威力はほとんどないものの、#吹き飛ばし__ノックバック__#が大きい。


 盾持ちは射出をもろに食らい、壁と挟まれ、あっけなく死んだ。


 残すは、ボスのみである。


 玉座から立ち上がると、そばにあったこん棒......というには優しい、巨大くぎバットのようなものを担ぎ、雄たけびを上げた。



 しかし俺は空気を読まずに雄たけびしている口の中に魔弾を撃ちこんだ。


「ガハッ!!グォォォオォオォォオオオオオ!」


 やっべ、さらに怒らせた!


 ゴブリンが俺に走ってくると、こん棒をすごい速さで振り下ろす。

 俺はとっさに右に飛んだ。

 態勢を立て直し、魔弾をもう一度撃ち込む準備に入る。

 しかし、ボスゴブリンは振り下ろしたこん棒をそのまま俺のほうへ振ってきた。


 これはまずい、つぶれる!

 俺はすぐにバックステップをする。しかし、魔弾を撃ちこめなかった。


 決めた、俺は回避に専念する。頼んだぞ、分体(ドッペルゲンガー)

 そう人任せをしながらこん棒のリーチより遠くに構える。

 ボスゴブリンがこっちに走ってくるところで、こけた。何を無様な、と思っていたが、どうやら分体(ドッペルゲンガー)が、魔弾を足に命中させたらしい。


「お手柄!」


 そう言いながら、俺はこけたボスゴブリンに魔法刀身を付与しっぱなしだったナイフを振るった。


 ボスゴブリンが霧となる。

 その場に残ったのは、魔石と、青い台座だけだった。


 ・レベルが15になりました


 ・一次職、魔力タンクをマスターしました。二次職への転職が可能です


 ・分体(ドッペルゲンガー)のレベルが上がりました


 ・分体(ドッペルゲンガー)内スキル、入れ替わりを習得しました。


 お、ちょうどよくレベルもマックスになったか。

 そして二次職だが......まぁ、どーせロクな名前じゃなさそうだ。

 転職はあとですると決め、今は目の前の台座に目を向ける。

 これが、転移台座か。


 転移台座。それは、十階層毎に設置されていて、ボスを倒すと出現する。ボスの魔石を置くと使えるようになり、例えばここから一階層へ行ったり、一階層から一気に十一階層まで行けるわけだ。


 俺はためらいなく魔石を台座に乗せる。すると、俺の体にある魔法陣にホタルのような魔力の塊が入り込んだ。


 これで使えるな。

 俺は分体(ドッペルゲンガー)と一つになると、台座に手をのせた。


「転移、一階層」


 疲れ切った俺は家へと帰る。






 こうして、おおよそ二週間で十階層を攻略した。


 しかし、ここからが本番だと言わんばかりに、迷宮は拓海を待ち構えるのだった。

ちょっと体調が雲行き怪しいので、次回遅れるかもしれません、ご了承ください

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[気になる点] 魔法刀身か魔術刀身か名称が二つ有るのでなにかが違うのですか? それともただの誤字ですか? [一言] 面白そうな設定なので楽しみに見ています 次の更新も待ってます。
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