たどり着いた物語の終着点
こちら二話目となっております。十分にご注意ください。
「拓海、拓海......」
紗耶香は姉と、空を見上げた。
いつまでも連絡が取れず、家まで行ったが帰ってきていないという知らせ。そして夜に見た光。彼の魔力。
彼女の能力はあくまで地球の記憶を見る物であって、月まで干渉できない。
だが、状況証拠だけで十分すぎるほどのものが集まってしまった。
「ううっ......うあああああああああああ!!!!!」
彼女は、雲一つないその空を。訪れた夏の空気を。無邪気に笑う子供を。彼の守ったその光景を見て涙した。
姉は知っていた。
妹が、偽装など持っていないこと。
彼と、付き合っていること。
それを知ったうえで、祝福したかった。あれを使わない未来を、選びたかった。
けれど、昨日からの未来は、誰かによって阻害され、閲覧できなかった。
できるだけ別の未来にならないかと奮闘したが、結局、これだ。
なんて、ちっぽけな手だろう。
妹が空に向かって叫ぶ。
姉は一人彼の魔力がこもった唯一のものを抱きしめる。
二人が、彼の死を惜しんだ。
惜しんでいた。
「ただいま」
その声は、後ろから聞こえた。
きっと、幻聴だ。幻覚だ。私の作りだした、ただの妄想世界だ。
けれど、振り返らずにはいられなかった。
後ろにいたのは、まぎれもない、彼だった。
「拓海?」
「そうだよ」
「死ななかったの?」
「知らないの?俺は#双子座__ジェミニ__#があるんだから。一人消えても、また一人、出てくるだけだよ」
そう、何でもなかったかのように言ってのけた拓海。
二人は、彼に抱き着いた。
河川敷。草木のにおいが、わずかな夏を感じさせるその空気が。
雲一つない空が。ただ青く果てしない空が。
いつか、当たり前になるだろうその光景が、今はとても新鮮で、新しくて、そして、心地よかった。




