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魔力極振りの迷宮探索  作者: 大山 たろう
第五章 試練
32/33

たどり着いた物語の終着点

こちら二話目となっております。十分にご注意ください。










「拓海、拓海......」


 紗耶香は姉と、空を見上げた。

 いつまでも連絡が取れず、家まで行ったが帰ってきていないという知らせ。そして夜に見た光。彼の魔力。


 彼女の能力はあくまで地球の記憶を見る物であって、月まで干渉できない。


 だが、状況証拠だけで十分すぎるほどのものが集まってしまった。


「ううっ......うあああああああああああ!!!!!」


 彼女は、雲一つないその空を。訪れた夏の空気を。無邪気に笑う子供を。彼の守ったその光景を見て涙した。




 姉は知っていた。

 妹が、偽装など持っていないこと。


 彼と、付き合っていること。


 それを知ったうえで、祝福したかった。あれを使わない未来を、選びたかった。


 けれど、昨日からの未来は、誰かによって阻害され、閲覧できなかった。


 できるだけ別の未来にならないかと奮闘したが、結局、これだ。



 なんて、ちっぽけな手だろう。






 妹が空に向かって叫ぶ。


 姉は一人彼の魔力がこもった唯一のものを抱きしめる。


 二人が、彼の死を惜しんだ。



 惜しんでいた。




「ただいま」





 その声は、後ろから聞こえた。


 きっと、幻聴だ。幻覚だ。私の作りだした、ただの妄想世界だ。


 けれど、振り返らずにはいられなかった。



 後ろにいたのは、まぎれもない、彼だった。



「拓海?」


「そうだよ」


「死ななかったの?」


「知らないの?俺は#双子座__ジェミニ__#があるんだから。一人消えても、また一人、出てくるだけだよ」



 そう、何でもなかったかのように言ってのけた拓海。






 二人は、彼に抱き着いた。






 河川敷。草木のにおいが、わずかな夏を感じさせるその空気が。

 雲一つない空が。ただ青く果てしない空が。




 いつか、当たり前になるだろうその光景が、今はとても新鮮で、新しくて、そして、心地よかった。

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