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魔力極振りの迷宮探索  作者: 大山 たろう
第一章 入学
3/33

物語の主人公とラブコメ主人公と。

学校に登校する。迷宮に行くことに対して遠足に行く小学生並みに興奮したせいで寝る時間が遅くなってしまった......ねっむ、朝飯食えなかったなぁ......


 俺はボケた脳を起こすように自動販売機で炭酸ジュースを買い、すぐに開封して口の中に突っ込んだ。


 この時の俺はボケていた。


 「ぬうぅぅぅぅぅぅっぁぁぁぁああ!」


 マジナニコレ、めっちゃぎゅるぎゅるするぅぅぅ!


 腹に何も入れていないのに炭酸ジュースを胃袋に 直接攻撃してはそうなるのも当然だ。


 この時俺は誓った。もう朝に炭酸ジュースは買わない。と......

 しかし反省も時すでに遅し、その後数分間、自動販売機に手をついて「ぐああぁぁぁ・・・」と呻いていた。


 



 二日目朝からいろいろあったが、教室に入る。


 すると昨日の勇者......天ノ川が前に出て大声で話していた。


 俺は寝るふりをして聞き耳を立てる。


 「誰か、昨日考えたうえで、探索者になるという人はいないか!」


 と呼びかけていた。朝っぱらから元気なことだ。

 ちなみに俺が一緒に探索者にしようと思わない理由は単純。陽キャが苦手だからだ。


 小さくため息をつきながら聞き耳を立てていると、ある女子が彼のもとへ向かう。


 「私、探索者になるわ。」


 そう言ったのは昨日覚えた美女の飯倉さん。 


 そこで俺の背筋には強烈な電撃が走った。



 まじかぁぁぁぁぁ、興味あるなら俺が誘えば俺と来てくれたかもしれねぇってことなのかぁぁぁぁ!



 と、昨日の行動を恨む俺。


 そんな頭を抱えとはうずくまる俺とは裏腹に、天ノ川はとてもうれしそうに、


 「おお、ありがとう!これで目標人数そろったよ!」


 とイケメンスマイルをこれでもかと浴びせる。


 その笑顔に見ほれるように食いつく彼のパーティーメンバーの女性陣。


 そして飯倉は髪をかき上げ


 「ふん、感謝なさい。」


 と顔を赤らめながら答えるのだった。


 その反応を見た俺は




    やはり迷宮に青春ラブコメを求めるのはまちがっている。――完――




 と、席で撃沈した。


 イケメンいいよなぁ!陽キャいいなぁ!俺もモテたいなぁ!


 天ノ川に対して呪詛を吐き始めようと思ったところで、担任の先生が入ってきた。


 「席につけ、ホームルームを始める」


 相変わらず怠そうな先生は、これまた癒そうな顔をして一枚目のプリントを配る。


 「今日は部活動紹介の後に、クラスでホームルームだ。」


 一枚目のプリントの部活動一覧を配り終えた先生は、手に持った二枚目のプリント......をいやそうな顔をした後、どこか悪い笑顔を浮かべながら自己紹介カードを自身のかごに戻すと、


 「高校生にもなって自己紹介カードとか使わねぇだろ、各自で喋っておけ。仲良くなんて言わないから問題は起こすなよ」


 と言った後、先生は「体育館で部活動紹介あるから移動」と言いながら教室を出た。


 あの先生、怠惰デスねぇ......と馬鹿な事を考えていると、いつの間にかほとんどの人が移動していて、俺含めた三人の男子だけが教室にいる状況となっていた。。


 一人は前髪を目元まで伸ばした男子......昨日ずっと本読んでたやつか。


 もう一人は窓際でスマホを触っているぽっちゃり男子。


 二人は俺に近づくと、本を持っているほうが開口一番にこう言った。











 「お前も陰キャ側だろう。あんな勇者には内緒で探索者やらねぇか」


 その誘いに対する答えは俺の中で決まっていた。


 「もちろん、よろしく頼むよ。」


 俺は廊下を歩きながら、 #陰キャ__こちら__#側の二人の話を聞く

 まぁ、名前を知ってるわけがないので自己紹介からなのだが。


 「俺は藍染 拓海だ。よろしく」


 と名乗ると、二人のうち本を持っているほうが先に口を開いた。


 「俺は影山だ。よろしく」

 

 結構こっち側っぽいな。空気が。


 次にぽっちゃりが口を開く。


 「僕は斎藤 司だよぉ。よろしくねぇ」

 のびのびと話す人のようだ。

 理由はわからないが、俺はどこか仲良くできるという確信めいたものを感じていた。

 そんな意味も込めて返す。

 「おう、よろしく」


 それにしても探索者をやらないかと誘われたってことは、パーティーのお誘いとかかな?でもなー最初はソロでやりたいんだよなー!どうしよっかなー!

 なんて考えていたら、影山が口を開く。

 

 「探索者にならないかとは誘ったものの、パーティーを組むため誘ったわけではないんだ。」


 ん?それならなぜ誘ったんだ?

 影山は続けて事情を説明する。


 「というのも、司は生産職をする予定らしい。それで、探索者する予定なら素材を売ってほしいってことだ。コネがないし大変だろうからな」


「ごめんねぇ、こんなおはなしになっちゃってぇ」


 そうか、生産職も大変ってことだな......よし、同じ#サイド__陰キャ__#だし、金が足りないから迷宮に行ってるわけでもない。少しぐらいなら問題ないだろう。


 「まぁ、元から探索者なって戦闘職なるつもりだったし、構わないよ。その代わり、こっちのサポートもしてくれるんだよな?」


 と聞くと、司は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 まさか、サポートはしないけど売ってくれ、って?そんないじめっ子みたいなこと言うのか!?

 なんて思ったが、その考えは杞憂だったようだ。


 「もちろん。持ちつ持たれつを目指してるよ。最初のうちはスキルも弱くて使い物にはならないだろうから、時間はかかるだろうけど、絶対安くしてあげるよ!」


 なんだ、そんなことか。それなら問題なさそうだ。


 「まぁ、それは将来性に投資ってことで。ちなみに影山はどーするんだ?」


と聞くと影山は、

 

 「俺は近接職をするつもりだ。だが合わせられる自信がないから、ソロで始めようと思っている。」


 と答えた。まぁ、そうだよな。そんな都合よくパーティーになれるわけないか。

 まぁ、これも一つの仲間の形なのかもな。

 そうやって脳内でイケヴォで締めたところで、いつの間にか結構前にいた司がこちらに向かって叫ぶ。


 「部活動紹介はじまるよぉ!いそげぇ!」


 やっべ、忘れてた!

 三人は廊下を猛ダッシュして体育館へ向かった。



 部活動紹介が終わった。



 そういえば俺一つ聞き忘れたことがあったんだ。

 俺は影山を見つけると、その後ろに回り込むようにして体育館をでる。

 そして俺は頃合いを見計らって、意を決して話しかける。


 「なぁ、影山」


 俺は前を歩いている影山に声をかける。


 「どうした、拓海」

 影山は笑いながらこっちに体ごと向けて後ろ歩きで俺の話を聞こうとする。


 「俺、重要なこと聞いてなかった」


 それを聞いた瞬間、影山の顔から笑顔が消えた。

 

 「なにか、話していないことでもあったか?」


 彼は心当たりなどないような口調で俺に問う。

 だが、俺は聞いていない、これを聞くまで引けないんだ。


 「ああ、お前は俺に重要なことを話していない」


 「俺が?お前に?すべて話したはずだが?」


 「いいや、お前は言っていないはずだ。」


 俺が真面目なトーンで言うと、やはり心当たりがないようだ、わからないといった顔をして、壁にもたれかかる。


 「ほう......して、なにを聞いていない?」


 

 空気が重くなる。







 緊迫した中、二人の視線が交差する。









 緊張が最高潮に達したとき――――













 俺は口を開く。


 





「お前の苗字は聞いたが、まだ名前を聞いていない。」




 



 「俺は影山 徹だ。それで本題は?」




 

 「そうかそうか!それだけだ!」








 緊張が解ける。







 緊迫した空気が一気になくなった。





 顔から驚きの表情が取れない徹が拓海に問う。


 「―――え、それだけ?」

 無論。

 「おう、それだけ」



「――――――ふざけんなぁ!」


 徹の声が廊下に響いた。


 教室に戻り、自己紹介......とは名ばかりのおしゃべりタイムになる。


 皆、仲良くなった奴と話しているようで、クラスのあちらこちらで笑い声が聞こえる。


 無論、俺も徹や司と仲良くなったといえばなったのだが、ここで話すようなヘマはしない。

 なにがって?そりゃ、勇者組に隠れて探索者するってことだよ!

 たぶんだけどあいつら、俺が一人で行くこと知ったら馬鹿にしてくるだろ!

 そしてそのあと、階層マウント取ってくるんだぁ!

 という理由から、基本学校でその話はしないこととなった。


 ではなぜ、彼らと趣味の話をしないのか。


 それは、こちら側というのを全面にだすと、女子は同類以外は話そうとも思わないのでは、という推測からだ。


 せっかくの高校デビュー。俺の場合そっち側というのもばれていない可能性が高い。

 あいつらは本を読んだり、汗吹くときにアニメキャラのやつ使ってたりして、隠す気がないようなので俺だけお願いして隠させてもらうことにした。

 少しくらい女子にもてたいのも、仕方ないんじゃないかな!


 俺は淡い願望を抱きながら、女子の会話に聞き耳を立ててみた。

 しかし聞こえたのは天使の導ではなかった。


―――――天ノ川くん―――


――――勇気くん―――――


 何処もかしこも彼でもちきりだった。

 くっそ、時代は高身長イケメン男子か!


 高校で彼女を作ることを早々にあきらめかけたとき、チャイムが鳴る。


 俺は早く迷宮にもぐるべく、教室を一番乗りで駆け出す。

 先生は、部活動紹介の後、教室に入るなりチャイムが鳴ったら解散と言い教室を出て行ったので、終礼なしだ。


 自転車をこぎ、家に書類を取りに行く。

 書類には昨晩、きちんと説明したうえで母親にサインをもらっている。

 ちゃんと確認してから、それをカバンに入れると、自転車をこぎだす。


 途中でコンビニによって、昼食と飲み物も忘れず用意しておこう。

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