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魔力極振りの迷宮探索  作者: 大山 たろう
第三章 星座
18/33

迷宮探索と新技術

 土曜日。迷宮都市にある傲慢の大迷宮は、本日も大盛況のようだ。


 人混みに押しつぶされそうになった拓海は、素早くその塊から抜け出し、近くの街灯にもたれかかると、三人に連絡をする。


 わりい、人混みがすごいから少し離れたところで待ってる。


 そう連絡すると、二人からすぐに連絡が返ってきた。


 会長は返事がないが、大丈夫だろうか......?


 とか思っているうちに、二人が上から降ってくる。どうやら上から見下ろして探していたらしい。


「うっす」


「おはよぉ」


 二人は準備万端のようだ。後は会長なのだが......


「遅くなったわね」


 その声がしたので振り返る。


 装備は何かおかしなところがあるわけではないオーソドックスなものを選んでいた。

 ちっ、どこかおかしなところがあったら即突っ込んでやろうと思ってたのに。


 そう思っていたら、後ろからひょこッと誰かの頭が飛び出した。


 誰かと思いのぞき込むと、飯塚さんだった。


「飯塚さん、おはよ」


 ここで男ども二人は「先に行ってる」と言い残して門へと向かっていった。なぜ俺を置いて先に行ってしまうのだ。

 と男どもを眺めていると、飯塚さんが口を開く。

「紛らわしいから紗耶香でいいわよもう......それより、今日の迷宮探索、一緒に行くから」

 とてもいつもの姿からは考えられないような小さな声で言った後、いつもの調子を取り戻して俺にそう報告する。


 いきなりパーティーが一人半ば強引というか事後報告で増えた。


 まぁ、パーティーを組めば経験値は分配されて少なくなるらしいが、一人ぐらいなら問題ないだろう。

 この強引さは治らないな。とあきらめた俺はさっさと先に向かっていった徹と司を追うように迷宮の門へ向かっていく。


 後ろからコツコツと音がしたかと思うと、会長が横に並んで歩いていた。しかし、飯塚さん.......紗耶香はまだ来ていない。

 後ろを見ると、何かに驚いて顎が外れたのか、口を大きく開けて停止していた。


「どうした、行くぞ紗耶香」


 そういうと、俺は門へと歩く。会長が横でふくれっ面しているが、なぜなのだろうか。俺には理由がわからない。


 そしてタッタッと軽い音が後ろから近づいてくる。やがて追いついた紗耶香だが、顔を真っ赤にしてふくれっ面していた。もう片方も今同じ顔してた!と見比べる。こうやって見ると似てるなぁ。


 両手に花という男なら誰しも憧れたことのあるであろう状況だが、両方の花が先ほどより悪化して不機嫌オーラをまき散らしていていきなりド修羅場という謎状況だ。解せぬ。


 俺はこの空気から少しでも逃れられるようにと、速足で門へと向かったのだった。


「おぉ、ここが傲慢の大迷宮かぁ......」


 俺がそう呼んでからその呼び名が定着したこの迷宮。俺が聞こえた声を真実だと信じる根拠は二つある。


 一つは単純に大きな門の迷宮が世界に七つあるからだ。七つの大罪しか出てこないだろう。


 そしてもう一つだが.....おっと、敵だ。


 どうやら石のゴーレム一体のようで、俺が前に出て「やるよ」と言ったら皆後ろへと下がった。


 エンカウントする。最近新しい文字習得していないな......幅持たせるためにも何か習得するか。


 そんなことを考えながら、慣れ親しんだ魔弾を拳銃から射出し、一撃でコアだけを削り取る。


「いつ見てもその魔弾のセンスはさすがだと思うよぉ」


 そう言ったのは司。腕を組みながらうんうんとしながら俺の腕をほめる。


「俺そんなにうまくはないだろう」


「いや、十分過ぎるわよ、普通の人はすぐ属性魔法に行くから、その誰でも使える魔弾って意外とだれも触らないのよ」


 会長もどこから持ってきたか知らない情報を俺に教えてくれた。魔弾は十分なら、それをアシストする使い方のできる魔法文字を習得したいな。


 考えながら戦闘を続行する。

 とは言っても基本一体で歩いているゴーレムを倒すだけだ。二体になっても問題ない。


「そうだ、ボス戦行くか?」


 そう、聞いてみる。レベル上げるならボスのほうが良いだろうし、それにこのままだと徹が暇で死にそうだ。


 その提案をした瞬間に徹の顔に一気に生気が戻ってきたので選択は間違えていないだろう。


 まぁ、この三人が賛同するかは別問題なのだが。


 きっと「私には危険すぎるわ」とか言って断るであろう会長とか思っていたら、案外好意的な返答が三人から帰ってきた。


 ならば、最近俺が(本当は双子座(ジェミニ)なのだが)が見つけたボス部屋、(たぶん中ボス)へと向かおう。


 頭にこびりついた経路を歩いて行く。いつからかはわからないが双子座(ジェミニ)に記憶共有とかの能力も来てたみたいだな。一切気が付かなかった。気が付いたらそういえば記憶あるな、という感覚だった。


「ここだ。」


 そうこうしているうちについた大きな扉の前。

「覚悟はいいか?」と目線でほかのメンツに確認をとると、皆頷いてくれた。これがパーティーだよね!一度やってみたかったんだ!


 そう考えるていたが一度中断し、扉を開く。



 そこに存在していたのは――――――


迷宮探索6-2

 そこに鎮座していたのは、体が人間なのだが、顔が牛という奇怪な生物......と言葉にすると難しいが、要はあれだ、ミノタウロスだ。ミノさんだ。


 しかし、いつも俺たちの見聞きしているミノさんとは大きく違うところが、体が黒いところだ。


「なぁ、あの黒さってデフォか?」


「んなわけねぇだろ! 聞いたことねぇか、変異種!」


 俺もその存在は知っていたものの、今まで遭遇しなかった......というよりも、こいつは探索者人生で一度出会えるかどうかってレベルのレアものだ。そんな奴がお目にかかれるのは、中々運が良い......いや、悪いか。


 なにせ変異種は通常種の数倍、下手すれば数十倍は力の差があるという。

 しかも今までのデータはすべてフィールドでのエンカウントである。ボスが変異だなんて聞いたことがない。


「変異種は大抵黒い色してるらしいぞ! 覚えとけ!」


 いつものように扉が閉まり、ミノタウロスが目を覚ます。


 徹から豆知識をいただいたところで、戦闘を開始しよう。

 実は扉が閉まる前に先手必勝してやろうかと思っていたのだが、なぜか絶対にしてはいけないという空気になってできなかった。


 まぁいい、後悔はあとでだ。

 魔弾を撃ちこむ。

 オルトロスも撃ちぬいた俺の魔弾に、撃ち抜けないものはあんまりない!たぶん倫理的に撃ち抜けないものばかりだが。


 とか思っていたのだが、分厚い胸板にはじかれ、あっけなく霧散してしまった。


「どうやら魔法は水属性しかダメみたいね......」


 どうやら会長の鑑定で見破ったようだ。しかし、魔法が聞かないとなると、結構まずいな、魔法刀身もあの様子だと聞かなさそうだし......俺ってお荷物?


 徹が黒い刀身に青い光をまとわせ、一直線に切りかかった。


 脚に直撃したはずなのに、びくともしないミノタウロス。


 どころか、口角をぐにゃりと歪ませると、背中の斧を地面にたたきつける。


 バゴォォォォォォン!


 地面を周囲事えぐり取って行く破壊の斧が、ただただ無慈悲に振り下ろされる。


 ミノタウロスはいま......そう、もぐらたたきとか、ワニワニパニックとか、そんなゲームを前にした子供のような印象を覚える。


 しかし、そうやすやすとつぶれる俺たちじゃあない。向こうも遊んでいるからだろう。結構な大振りの動きをみてからよけるのは結構簡単であった。


 ずっとこれを繰り返して疲労を狙う線も考えたのだが、よくよく考えたらあの筋肉が疲弊するのと運動不足の司がくたばるのと、どっちが早いかなど考えるまでもないだろう。


 ミノタウロスを見直す。ゴム以上に弾力がありそうなあの胸板をはじめとする筋肉。自然の鎧をどう崩すのか。


 とりあえず死ぬわけにはいかないので、双子座(ジェミニ)を使い、俺は二人に分かれる。




 初見だったようで司と徹は驚いていたが、戦闘中というのを思い出して一度驚きを引っ込めたようだ。これができるかできないかが生死を分けると感心していたが、すぐ思考を戻す。


 とりあえずお荷物は嫌なので、魔法刀身を使って俺が切りかかる。


「はぁっ!」


 しかし、掛け声もむなしくまったく切れないと感覚が悟ったところで、斧に潰され、双子座(ジェミニ)のもとへと戻る。



 次は双子座(ジェミニ)が行く番だ。


 魔弾をガッチガチに固め、固め、固め......恐らく世界一固い物質よりも固いであろうその魔弾を、本気でぶっ放した。


 おい、節約して戦っていたのに一撃に三割も持っていきやがって!


 隣でニヤニヤしている双子座(ジェミニ)。そして結果の魔弾だが、少し筋肉の鎧を抉ったのを確認した。


 どうやら魔法無効化するような魔法使い殺しじゃなくて、マジもの天然強度らしい。


 とか言っている間に双子座(ジェミニ)は斧に潰された。ので俺がスキルを発動する。


 また二人になったものの、結局有効打がないままだ。


 徹の剣は通らないし、司も魔法攻撃のため俺の攻撃を見て有効打足りえないと撃つのを控えているようだ。


 そして飯塚姉妹だが、姉はステータスがそもそも低いので端っこで待機、妹は苦手な水魔法をとりあえず打ち込んでいるらしい。


 決め手......決め手なぁ......


初の共同作業

 ......あ、そうだ、いままで試したことないやつやってみよう


 俺は昔思いついたものの試すことすらできなかったことをしてみることにした。



「紗耶香! 今から実験するぞ!」


「実験!? この状況で!?」


 そう驚く紗耶香。そう、試せなかったのは単純にいままで使う機会がなかったのと、一緒にする仲間がいなかったからだ。


 俺は紗耶香のほうに駆け寄ると、魔力譲渡で紗耶香の魔力を回復させる。


「今から俺が魔弾の魔法陣を一部開けて描くから、属性のところだけ紗耶香が水魔法を書いてくれ」


「え!? そんな急に言われても......」


 と急にわたわたしだす紗耶香。とりあえずやってみないことには始まらない。魔弾を書き、しこたま魔力を込める。


 紗耶香も覚悟を決めたのか、水属性攻撃の文字を書き始めた。


 その間に徹と司は自身の仕事をわかっているようで、ひたすらにヘイトを集めるように攻撃を開始した。


 向こうも致命打にならないと分かっているから、鬱陶しいのだろう。人が蚊に群がられて気分がいいなんてことはほとんどないはずだ。

 しかし、蚊の中にも人を殺しうるものは存在する。


今回ミノタウロスにとってのそれが、俺たちだっただけだ。


 と決め台詞を吐いた手前、起動しないなんていうヘマをこいたら一生の恥どころかここが一生の終着点になるわけだが、どうやらその心配は杞憂だったようだ。


 一文字を集中して書いたら大丈夫なのか、紗耶香は水属性の魔法文字を結構高い精度で書けていた。俺はそれを見て大体わかるが、書いてもうんともすんとも言わない。が、紗耶香の書いたそれは正しく動くようだ。


 完成した魔法陣を起動すると、そこから魔弾が現れる。


 しかしいつものように無色透明ではなく、青い光がとても強く輝いていた。


「でき.....た?」


 紗耶香はこの光景を見て驚いているようだ。俺も属性魔法を他者の力を借りてとはいえ撃てることに感動を少なからず覚えている。


 が、その感動に浸るのはあとでいいだろう。


 とりあえず目の前の敵を倒すところから始めないと。


 俺は全力で魔弾を射出する。


 青い光がレーザービームのように細く見えるほど素早く射出され、ミノタウロスの肉体へと迫る。


 そして、貫通。


 見事に、天然の鎧を貫き、魔石に穴をあけた。

 それは人間にとっての心臓に穴が開くぐらいの致命傷である。



 ドンドンと霧となって消えていくミノタウロス。しかしその目はどこか満足しているように見えた。


 満足した子供のように、無垢な、その瞳も―――――


 霧となって、消えていった。


 気付いたのは俺だけだろうか。ほかのやつらは勝った疲れからぐったりしている。


 ドロップも穴の開いた魔石だけだ。とはいえ、ボスのしかも変異種の魔石だから高く売れるだろう。


 そして、レベルマックス。


 やっと、やっと。


 この次の職業は一体、どんな名前になるのだろうか。


 四次職か。もう半分もとうに超えていたのか......


 これだけレベルアップが多いのも、ソロで潜っていて経験値分配がなく十割すべて入ってきているどころか、二十四時間経験値を稼ぎまくっているわけで。たまに二人で群れる系の階層を狂って全滅させてますし。そりゃ溜まるのも速いですわ。


 ちょっと今考えると死んでてもおかしくないな、と思えてきたが、生きているので良しとしよう。


 さて、四次職の名前は......


 ・魔力堤防(ダム)


 もはや俺はダムと呼べるまで進化したようだ......


 まぁ、そりゃぁそうだろう。


 いまやもうすぐで百万の大台へと到達しそうな魔力を収めた箱とかどこにあるんだってはなしだもんね!


 とはいえ、名前からもうわかる、俺のステータス、魔力以外伸びないな、って。


 まぁ、もういいんだ。#強化__エンハンス__#頑張るだけだから。


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