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魔力極振りの迷宮探索  作者: 大山 たろう
第三章 星座
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美女と迷宮

 テストも終わり、蒸し暑い夏が終わりを告げ、秋の香りが漂ってくる。


 この時期に学校では文化祭が行われる。


 今日はその企画を決めるところである。


「このクラスには世にも珍しい唯一(ユニーク)の探索者がいるんだからさ、それを売りにしたらダメなの?」


 そう言ったのは以前飯塚さんにたらたら文句を垂れていた勇気のトリマキ......名前は知らんが、そいつが堂々と言い放った。

 しかし、飯塚さんは即座に否定する。


「ここは探索者は関係ないし、それに極光の勇者さんの力をどう活用するの?ソーラーパネルで発電でもするの?」


 そう言った途端にクラスから笑い声があふれる。


 そして提案した本人であるトリマキは顔を真っ赤にしたあと、うつぶせてしまった。

 また発電にしか役に立たないと言われた勇気も頭を抱えてうずくまってしまった。


「さて、笑ったところで、なにしようか? 私的には露店したいんだけど、どうかな?」


 そういったのは仕切っている文化祭委員。

 特に否定の案もなさそうなので、これで決まりそうな雰囲気がある。

 俺としては、手間のかからない、かといって高校生らしさを損なわないような都合のいい案であれば何でもいいのだ。


「それじゃ、露店にしちゃうねー、それじゃ、なにつくろっか?」


 特に何も考えずに提案した模様の文化祭委員。 (なお名前は知らん)

 あちらこちらから「焼きそば!」だの「たこ焼き!」だのと声が上がる。

 文化祭委員は忙しそうに黒板へと板書をとっていく。


 まだこれ続くかな......いうて文化祭は一か月後だから、そこまで手の込んだものはできないと思うんだが......


 皆が悩んでいるところ、傍観者を貫く俺。

 チャイムが鳴ってもある程度続きそうなので、さっさととんずらすることに決めた。


 やいのやいの、わいのわいの、キャッキャしているのを見ていると、チャイムが鳴る。


 よし、帰ろう!


 急いで教室を出ようとしたところで、放送が流れる。


「藍染君、それから斎藤君に影山君も、生徒会室に来て頂戴」


 はいっ生徒会長の呼び出し来ましたー!

 俺は二人に手招きをすると、さっさと生徒会室へと向かう。


「三人とも、座って頂戴。話は結構長くなると思うわ。あ、あと、そこのバッテリー全部補充お願い」


 さも当然のようにバッテリー補充を命じられた。しかも山ほど。

 まぁ特に対価も必要ないし、黙ってやるのだが。


 俺は手をかざす。


 数秒で真っ赤に変わったバッテリーの山を見た会長は、驚きを隠せないでいた。


 しかしすぐいつもの顔に戻ると、話を始めた。


「この学校の文化祭、来るわ」


「マジっすか......」


 思わず反応してしまう俺。そして何が何だかわかっていない二人。


「体育祭と同じような襲撃よ、しかも今回は野良のパーティーっぽいの。しかも結構つわもの、対人戦が本業の。おそらく相手の目的は強いやつと戦いたい、ってところかしら」


「なんでそこまで詳細にわかっているんですか!」


 驚きの声を上げた徹。しかし、俺は少し驚いていた。

 なぜなら、そこまで詳細に教えているということは、未来が変わらない、必然の運命だってことだろう。

 もう、この事象を回避できないから、俺たちに頼みを入れている、ってことだろう。


 もう一つの疑問は、なぜ今回は俺だけでなく二人まで呼び出したのか、である。

 これに関しては考えても答えが出ないのはわかっているため、いったん頭の隅へと置いておく。


 その間に会長と徹で話が少し進んでいるようだ。


 その野良パーティーは人を一人人質に取って、グラウンドへ現れる。


 そこで探索者に戦闘を申し込み、満足できなければこの人質を殺す、と脅す。


 そして勇者パーティーは戦うも負ける。


 満足できなかったそいつらのもとへ、俺たちが行かなければ人質が殺される。


 というのが内容らしい。


「質問いいですか」


「えぇ、どうぞ」

 俺は不安材料を減らすために質問をどんどんしていく。


 その結果はこうだ。


 Q,勇者パーティーは完全武装をしたうえで負けるのか


 A,その通り


 Q,人質はだれだ。


 A,女性教師。


 Q,顔バレの危険性は


 A.ほぼ確定でばれるわ。相手側の要求で顔は隠せない。


 これは早々に相談するわけだ。


 俺たちが隠れて探索者やっていると知ったうえで、この依頼を持ってくるわけだから、打てる手を打ったうえでダメだったのだろう。


 流石に教師の命と俺たちの顔ばれ、どちらをとるかなんて決まっているのだが、はいわかりましたと素直にうなずけない。


 もどかしさに苛まれているのは俺だけでなく二人もだったようだ。


「現状、勝てるのはあなたたちしかいないわ。探索者ギルドもこんな未確定の物事に高レベルの探索者を持ってこれるわけないし。つくとしても護衛探索者が二人、しかも新米。わかったら次の休みから迷宮でレベル上げてきて」


 そう決定事項を淡々と話す会長。そうだな、仕方ないので顔ばれの覚悟は決めとくか。

 あと会長にやり返しできるとしたら......そうだ!


「そしたらついでに会長も傲慢の大迷宮でレベル上げましょうよ、いつまでもそのステータスでうずくまっているわけにはいかないでしょう?」


 そういうと、会長は「ぐぬぬ......」と歯を食いしばり、拳を机にたたきつけた。

 この感じは、おそらくどこかで予知結果でも変わってしまったのだろう。こうなったら先の行動を読まれていることはない。

 よっし、俺の勝ち! なんで負けたか明日までに考えといてくださいねぇ!


 結構な煽り文句を垂らしていると、顔に出ていたのか、会長がゴミを見る目で見てきた。

 しかし俺は引かない。


「それで会長。行きますよね?」


「......はい。」


 会長は机に手を突き、うつむいた。そして対照的に俺は拳を高く天に突き上げガッツポーズをしていた。

 これで会長が俺に頼る頻度も減るな!


 そう考えていたら、横に座っていた男どもは二人で笑みを浮かべ、


「「美女と一緒に迷宮攻略できるな、ナイスだ!」」

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