戦闘、そしておまけの会議
「はじめ!」
その合図とともに、俺は即座に双子座を起動した。
「二人に増えた!?」
と、魚座が叫ぶ。その時間がもったいない。
俺は二人で銃から魔弾を放つ。後半で魔力が切れましたじゃあシャレにならないので、俺は百分の一も込めずに撃ちだす。
一気によけたかと思うと、本体の俺へと一直線に向かってきたかと思うと、一気に地面に沈んでいった。
これが魚座の能力か。
俺は即座にそこから引こうとしたが、ステータスの低さが災いし、すぐに足を掴まれてしまい、転んだかと思うと殺されてしまった。首を切られたか。
しかし、俺は即座に双子座から復帰する。
「おまえ、今絶対にやっただろう!なぜ生きている!」
叫ぶ魚座。その間に俺は一気に強化をかけると、射出で一気に距離を詰めた。彼と話すだけ時間の無駄のような気がしてきた。俺は悪ガキよりかわいい女の子とお話がしたいんだが!
「うっ!」
零距離の二人。俺は腹へと射出を撃ち込んで魚座を吹き飛ばす。壁へとたたきつけられた魚座に、俺は魔弾を撃ちこむ。しかし、撃ち込んだ先に魚座はいなかった。
何処へ行ったか、感覚強化による索敵を展開すると、地面から、俺を通り抜けて双子座の首を取りに行った魚座の気配が見つかった。
すぐに双子座は反撃しようと後ろを向くが、もう遅かった。
壁から出てきた魚座が、一瞬にして首を持って行った。
俺は即座にスキル双子座を起動し、またニ対一を展開した。
「お前! なんで死なないんだよぉぉぉぉぉおおおおお!」
叫ぶ魚座。やはり話す暇を与えないほうがよさそうだ。上の面面は俺が無限に出てくることに興味津々のようだった。
しかし、まだ戦いは終わっていない。
俺は操作で鎖を動かし、彼を縛り付ける。
「なんだこれ、抜けられない!」
そう、最近発覚したのだが、あの鎖に縛られるとスキルを封じられるらしい。まぁ、これで終わりだ。
俺はリモートマジックを起動し、魔弾を二人で百五十展開した。
そして一切の容赦をかけず、魔弾を射出した。
ドガガガガガガガガガ!
十秒ほどしか破壊音は流れなかったものの、その跡地が凄惨さを物語る。
少しして、魔法が切れた感覚がした。もしやと思い先ほどの魔弾の現場を見ると、目の前の原型をとどめていなかった魚座が元に戻っていた。
「うわあああああああ! また最下位だぁぁぁぁぁああああああ」
死んだことよりもそちらが気になるようで、悲痛な叫びをあげていた。
「俺の勝ち、でいいんだよな?」
「そうだね、君の勝ちだ。しっかし、君の双子座、どんな能力なんだい?全員の能力教えるから、教えてくれないかい?」
「まぁ、構いませんよ。全員の能力、あとでしっかり教えてくださいよ?」
「あぁ、もちろんさ。それで、どんな内容なんだ?」
「俺を作り出します.......が一番正しい表現だと思いますよ」
「それでは先ほどの無限湧きはどう説明するつもりなんだい?」
「俺と双子座、どちらかが生き残っていれば、もう片方を作り出せる、ですね」
「確かにその通りだな。ちなみに消費は?」
「今は一回100ほどですね」
「......なぜあんなに連発できるのか疑問だが、ステータスまでは聞かないわ。今後の研究の参考にさせてもらうわね」
そう言って、天秤座は訓練場から立ち去って行った。
すると今度は、水瓶座がやってきた。
ほかの人たちはすでに退出していたようで、俺と二人っきりのようだ。
「お疲れ様です。これで序列九位ですよ! いやほんと、いきなり彼に勝つなんてびっくりしましたよ!」
「あぁ、ありがとう」
そういうと、声の高さ的に女性......というよりテンション的に女の子だろう、水瓶座は距離を詰めてきた。
「ところで、その装備類はどこで手に入れたんですか?」
「まぁ、ちょっとした伝手とか傲慢の大迷宮とかだな」
「へぇ、あそこにもぐれるだなんて、すごいです!」
なんて言ってくれた。褒められるのは普通にうれしいな。
しかもこの感じ、下心ありありのビッチじゃなくて天然でしてるからなおたちが悪い。
一旦距離をとり、「みんなのところへ行くか。」というと、「はい!」と元気な声が返ってきた。後ろをちょこちょことついてくるウサギっぽさで、俺より年下感が漂ってきた。表で出会うことなどないだろうが、年下だったらこの距離は犯罪臭が......
一気に胃が痛くなる俺だった。
「大丈夫ですか?」
お前のせいだよコンチキショウ!!!かわいい女の子と話したいとは言ったが!話せててうれしいんだが!客観的に見てこんなに犯罪っぽくなるだなんて誰も思わないだろうが!
しかし癒されてしまっている俺がいるあたり、強くは言えない。
俺は結局黙りこくったまま、先ほどの部屋へと戻るのだった。
「それでは、会議を行いましょうか」
そう言い放ったのは天秤座だ。この会議において進行役を担っているらしい。まぁ、このお母さんみたいな感じを見るに適任だろう。
「双子座のためにはじめから説明しますが、この会議ではこの端末を耳に着けてもらいます。これから翻訳された音声が聞き取れるので、外国語無理だよぉ!っていう双子座と魚座、一応まだ水瓶座もそっちを聞いてください。ついてこれなくても自己責任です」
少なくともその四人は日本人らしい。十二分の四って三分の一が日本人って、結構確率高いな......
「今回の会議の議題は......そうですねぇ、どのような戦力配置にするか、ってとこですかねぇ? まぁ、それでは会議をはじめまーす」
そう、少し投げやりに始められた会議。
俺はわからないことばかりなので、とりあえず情報を聞くしかないだろう。
「情報整理もかねて、一度すべて話してはくれないだろうか?」
「それがいいだろう、私から概要を説明させていただく。」
そう声を発したのは天秤座だった。やはりお母さんの資質があるようだ。
「内容はこうだ。夏の初め、来るべき日が訪れる。この運命は不変である。遥か彼方より送られた戦士は、この地球を侵略する。防ぐためには、十三人の星、九の到達者の二十二人で迎え撃て。これが第一節だ」
不変の運命? 遥か彼方の戦士? 星? 到達者?
謎は多いものの、少しずつ落ち着いて考えよう。
不変の運命はもう確定してしまった未来。遥か彼方の戦士......迷宮みたいなどこか別の世界か、それとも宇宙侵略とか? まぁ、今の情報では何も決められない。次。星は......これは、おそらくこの星王会議に来ている人たちだろう。この空席を埋めるってことか。そして到達者か......どこかに到達した人ってことか。スキルがマックスとか? いや、それならここの人たちも到達者でないとおかしいだろう。 技術......は判断基準がない。ならば.......ステータスだ。それが到達すると何かが......?
まぁ、これ以上は考えても仕方ないだろう。おそらくこれはほかの誰もがわかっているだろう。
「ここで第二節を......と思ったが、正直めんどくさい。今回は宇宙が戦場で全方位から攻撃された時の配置を決める。」
「ここは星座順でいいのではないだろうか?追加能力で星座の出ている時期に能力が向上したとの報告もあった。全員のベストパフォーマンスを考えるなら、無理に動かすべきではない。」
そう言ったのは今まで口を閉ざしていた体格の大きな人。
「まぁそう結論を焦るな獅子座。今回は到達者七名のことだ。そいつらをどう配置しようものか。」
「データがない以上、上と下に三人ずつ、一人は遊撃が妥当じゃねぇか?」
「そうだね。情報が入り次第、また連絡を入れるよ」
ほとんどというより全部天秤座と獅子座が決めてしまった。
「さて、話すことも終わったことだし、車で爺さんに元の場所へ戻ってもらって構わないよ。めぼしい情報もなかったようだし。」
と天秤座。ならば俺は課題とテスト勉強をしてもかまわないのか!
「わかりました、一応双子座に情報を集めてもらいますが、期待はしないでください」
「それは助かるよ」
話が終わったので、俺は車で送ってもらって自宅へと帰り、双子座に頼むと俺は課題とテスト勉強へと励むのだった。




