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第22話 第20回前川様会議

ポイント評価やブックマーク登録ありがとうございます。

「ああー、やっとテストおわったぁー!」


僕は思わず最後のテストが終わった瞬間、言ってしまった。僕はそれほどまでに疲れていたのかも。全教科付け焼き刃で勉強したけど自分のベストが発揮できてよかったと思う。2学期の中間からはしっかりと対策はできそうだし、今回乗り越えられてよかった。



帰りのホームルームも終わって帰宅の準備をしていると、岸さんに声を掛けられる。


「前川君!今日このあと予定ある?」


「特にないかな、家に帰ってテストの復習とかするかも...」


たぶん復習とかしないで寝るかも...


「前川君えらいね!私なんてテスト終わった日なんて遊びまくってるよ...。それでね、前川君とこのあとテスト終わったお疲れ様会をやりたいなーって思ってるんだけどどうかな?」


そういうもの苦手なんだよなー。前までは全部断ってたし、今回もあんまり行きたくはない。でも岸さんの顔を見てそんなの言えるわけがなかった。だって岸さんの目が潤んでいるから、無理なんて言えないよ。だから僕は明るく言った。


「いいよ!」


「やったぁ!みんなー!前川君、お疲れ様会来てくれるってさ!」

岸さんがクラスメイトに向かってそう言うと


「このみちゃん!ナイス!」

「テスト頑張った甲斐あったー」

「今日は猛アピールしないと、今までテストで出来なかったからね」」

「前川君の隣に座われたらいいなぁ...」

「この大チャンス逃しはしない!」


みんな喜んでいるみたいだった。僕は少し複雑な気分...。嬉しいけど少し不安が残る。

でもお母さん迎えに来るからなぁ、後から合流しようかな。

岸さんに聞いておこう。


「僕、一回家に帰ってからそのあと合流とかでもいい?お母さんがもうすぐ迎えに来ると思うから」


「うん、前川君だけじゃなくてみんなもそうだよ!制服のままお店に入ると気付かれちゃうからみんな一回私服に着替えるんだー」


ならよかった。後で合流するし電話番号教えておいた方がいいよね。


「岸さん、後で合流するときにわかんなかったら困るし、僕迷っちゃうかもしれないから一応電話番号教えとくね?いい?」


クラスメイトから一気に視線を浴びる。ちょっと何でそんなに殺気めいているんですか!


「えええ?!私に教えてくれるの!嬉しいけどほんとにもらっていいの?もしかしたらSNSとかに流しちゃうかもしれないよ、みんなに教えちゃうかもしれないよ?」


「え?でも岸さんはしないでしょ?」


「しないけどー、でも普通そんな気軽に電話番号教えるかなー」


「まあいいじゃん!はいこれ!」


僕は岸さんに電話番号を書いた紙を手渡す。


「僕は岸さんのこと信頼してるからね?ほかの人には見せないで、おねがい」


岸さんの耳元でつぶやく。あれ?岸さんの顔真っ赤だ


「う、うん!絶対誰にも言わないよ!」


「うん、ありがとう!じゃあ、またあとで」


僕はそう言って教室を後にした。お疲れ様会ちょっとたのしみ。




静寂に包まれた教室。前川君以外のクラスメイト全員が自分の席に座っている。前の教壇に立っているのは、学級委員長のレイちゃんだ。


「前川君も帰ったことだし始めるわ。『第20回、前川様会議』を始めます。」


前川君がいないところで私たちは会議という体で前川君のいいところを発表したり、前川君に対して抜け駆けしたものを報告する会だ。不定期で行われていたけど、最近はあんまりやってこなかった。でも緊急で前川様会議を行うに至った経緯がある。

それは...


「司会をやらせていただく相沢麗だ。まずこのように集まってくれてありがとう。昨日女子のRINEグループで急遽やると言って申し訳なかった。なぜこのような会議を急にやらなくていけなくなったか。それはみんな分かってると思うけど、この会議の最初の議題でもあるわ。それは前川君があまりに別人、あまりに優しくなってしまったこと。これは私たちにとってすごくうれしいことだけど、同時に覚悟を決めないといけないこと。」


レイちゃんはすごく真剣な顔をする。

そう、前川君の性格が優しくなってしまったこと。これが緊急事態だった。クラス内だけじゃなくて先輩、後輩、違うクラスの同級生内でも、もうこの噂は広まっている。明日から前川君へのアピールはものすごいことになると思う。

レイちゃんが続けて言う。


「今までは前川君があれだけ辛辣で、女子に酷く当たっていたおかげもあって何もなかったけど、これからは戦争よ。みんな今の前川君のこと好きなんでしょ?」


みんなうなずいている。私もこのテスト期間でもっと前川君のこと好きになった。

私も当然うなずく。



「私もよ、前川君とまた来年も同じクラスになりたいって思った。だからみんなで前川君とまた3年生で同じクラスに!特進クラスに行くわよ...みんな覚悟はできてる?」


「「「「「うおおおおおお!!!!!!」」」」」


みんな声を荒げて叫ぶ。そもそもなんでこんな話になるのか。それは3年生のクラス分けがこれから始まるからだ。この桜坂学園中学校は3年生になると特進クラスというのができる。特進クラスはその学年の中で上から40人、学力が高い順に入れるクラスだ。そのクラスには前川君が無条件で入る。これは例年通り学校の規則で決まっっている。1年生と2年生の時はランダムで前川君と同じクラスになれる。だけど3年生は実力だ。前川君と同じクラスになりたかったら特進クラスに意地でも行かないといけない。これはまぎれもなく他クラスとの戦争だった。


特進クラスに行くためには、二年生の2学期と3学期で相当勉強を頑張らなくてはならない!ここから私たちは本気で勉強しなければ前川君と3年生で同じクラスになれない!


「このクラスのまま3年生に上がるのよ、みんなで特進クラスにいくわよ!」


「「「「「「おおおおおーー!!!!!」」」」」


私たちは一致団結した。みんなで前川君と同じクラスに行けたらいいな!


「じゃあ、次の議題ね。今日のお疲れ様会の席決めよ!」


さっきまで仲間だったのに、一瞬にしてクラスメイト全員が敵になった。

読んでくれてありがとうございます。

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