第18話 これからよろしく
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「えっと、心配かけてごめんなさい。この1週間休んでいたのは入院してたからです。どうして入院したかとかは原因はわかりません。でも起きた時に僕は記憶喪失になってました」
周りから「え?」とか「うそ...」いう声が聞こえたけど僕は続けて言った。
「僕は前川淳司には変わらないけど、何も知らない前川淳司です。僕はお母さんと妹の名前すらも忘れてしまいました。だからこのクラスにいる人の名前とかもわからないです。学校行くのも朝、岸さんに会っていなければ僕はテストに間に合わなかったと思います。みんなの知っている前川淳司とは違うけど、これから仲良くしてくれたらすごくうれしいな。あと前川様って呼ぶの禁止にしてほしいって思う。同じクラスメイトなんだし、気軽にため口で話せるなら話したい。えっと、分からないことだらけだからいろいろ教えてほしい。これからまた、よろしくお願いします」
僕はお辞儀をして席に座る。あれ、自分今何話したっけ?変な事言ってなかったよね...?
静かな教室に僕が椅子に座る音だけが聞こえた。
えっとだれか話してほしいな。すごく勇気振り絞って言ったんだから、しらけないでよ!
コミュ障の僕にはだいぶさっきのつらかったんだから。
1人の女子が話し出す。それをきっかけにみんなしゃべりだす。
「前川様が記憶喪失って言ってた?」
「うん、言ってた」
「うそ...」
「前川様、大丈夫じゃなかったんだ...」
「やばい、私悲しくて泣きそう...」
だんだんとざわざわしてくる。
泣き出す人も何人かいた、驚きを隠せずにいる口を手で隠している女子もいた。
「先生も少し気持ちの整理がしたいわ。ちょっとまって、もしかして緊急事態なんじゃ...。今日の職員会議で持ち出した方がいいのかしら...」
先生、できればそれはやめて!大事にしたくないの!僕は記憶喪失っていう設定になってるけど、ほんとは転生してきたから何も知らないんですって言えないだけだから!これでもし全校生徒の前でまた話すとかになったらシャレにならない。僕はもう一回立って話し出す。
「あの今までと違う前川淳司だけどこれから仲良くしてほしいでしゃう」
なんでかなー。僕はこういう時噛んでしまう。
最悪だ、穴があったら頭から入って埋めてほしい。
顔が熱い、逃げたい。
「前川様、いま噛んだ?」
「噛んだわね」
言わないでくれー。恥ずかしい!
「かわいいかった...」
「前川様ってかっこいいのに俺様系じゃなくて、かわいい系になるの?ギャップすぎるんですけど!」
「顔が赤くなった前川様かわいすぎた。今夜の私のピーーーーにするわ」
「神が神以上になってしまった、帰ったら儀式しなければ...にひひ」
かわいいって何??
それに、最後2人おかしいぞ!
でも、僕は華麗にスルーする。女子が何をしようが自由である。
でも隠してほしいぞ!
「性格めっちゃよくなって私前川様のこともっと好きになったかも...」
「私も!仲良くしたい!」
「帰りのホームルーム終わったら私話しに行こ!」
「はあ?!私からでしょ!あんたは引っ込んでさっさと家帰って勉強でもしてろ!」
「うっせ、だまれ!このクソ✕✕✕✕✕。お前が帰れ!」
女子がそんな汚い言葉使っちゃだめでしょ!
でも僕は華麗にスルーする。
僕の耳はどうやら高性能みたいだ。
「静かに!とりあえず、いったん帰りのホームルーム終わるわね。また明日ね、さようなら!」
「「「「「「さようなら!」」」」」」
先生が足早に教室を出ていく。
この掛け声と同時に全員僕に駆け寄ってくる。
今気づいたけどこの教室何で男子一人もいないの?助けてくれ!
「前川様、これからどうやって呼べばいいですか?前川君って呼んでもいですか?」
「このあと予定あります?一緒に勉強会でもしましょう!」
「前川様が休んでいる間私前川様にノート作ってましたの、よければどうぞ!」
「前川様、自己紹介しますわね、私の名前は...」
みんな同時に話しかけないでくれぇ。
僕の椅子の周りを囲っている女子たちのせいで帰るに帰れなかった。
「あの、ごめんなさい、えっと、ちょっと同時には...」
僕が困っているところに、さっきのクール系女子が話し出す。
「みなさん、前川君が困っているでしょう。一回黙りましょう」
クラスメイト全員が静かになった。すごいな、もしかして学級委員なのかな...。
僕は彼女に感謝する。
「ありがとう、助かったよ...」
「前川君、大丈夫よ。困らせちゃってごめんね?少しだけ時間くれる?」
この子は僕に明るくて、しかも前川君って呼んでくれる。さっきの僕の話をちゃんと聞いてくれたんだ。
距離が離れていないように感じてすごくうれしい。
「いいよ、それと前川君って呼んでくれてありがとう」
彼女は顔を真っ赤にする。
「じ、じゃあ、みんなでまずは自己紹介でもしましょうか!明日テストだけど、前川君ほんとにいい?」
「大丈夫だよ、むしろありがとう」
こうやってみんなを知る機会を作ってくれる彼女に感謝した。
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