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23話「和解と生きがいと」

 立てこもりをしていた自警団を解散させた浜之助とアマリ。


 そんな2人の、主に浜之助の目下の課題はユラのご機嫌だった。


「――というわけだなんだよ」


 浜之助はユラの自室に近づくわけにはいかず、アマリの部屋に退避していた。


 もしも今、ユラに顔を合わしても気まずいだけで何もできそうになかったからだ。


「……とても私に啖呵たんかを切った人には見えませんね。そもそも、それを後回しにするなんて馬鹿ですか?」


「俺だって好きでそうしたわけじゃないんだよ。それにこれはシェルター全体の問題だ。俺にだけ押し付けないでくれよ」


 アマリは事の顛末を聞き、呆れてため息をついた。


「好感度云々(こうかんどうんぬん)を他人のせいにしないでください。ただ、そうですね。これは放置しておけない話ですね」


 アマリは浜之助の相談を受けて、うーん、と考え始める。


「浜之助は、ユラがドローンを憎んでいる理由をご存じですか?」


「ああ、肉親を殺されたとかで」


「……2度です」


「はあ?」


「ユラは肉親と、義理の両親を警備ドローンによってうしなっています」


 浜之助はアマリの言葉を聞き、血の気が引くのを感じた。


「マジかよ……」


「そういう意味では私も警備ドローンが嫌いですがね。アマリの義理の両親とは、私の肉親ですから」


「えっ? つまりユラはアマリと義理の姉妹なのか?」


「そうですよ。気づきませんでしたか」


 そう言われて見ると、ユラはアマリに親しく話していたのを思い出す。

 それが義理の姉妹なら、納得だ。


「ユラの肉親が亡くなったのは、私の両親がゲートを守り切れなかったからでした。だから責任を感じていたのでしょう。両親は周りの反対を押し切り、ワーカーのユラを娘として引き取りました」


 アマリは懐かしむように口にした。


「ですが、1年前、私の両親は警備ドローンと不意の戦闘になり、亡くなりました。あっという間の事で、ユラはショックで卒倒するほどでした」


「アマリは、大丈夫だったのか?」


「私もショックでした。ただ自警団にいる以上、突然仲間や親しい者が亡くなる覚悟はしていたので、思ったよりは大丈夫でした。それでも、数日引きこもりましたがね」


 アマリは何のこともないように話しているが、きっとその心は悲しみに張りつめているのだろう。


「ユラが過去人種の解凍を考え始めたのは、きっとその頃でしょう。寂しさや後悔を、新しい未知の体験で埋め合わせしようとしたのです」


 浜之助はそれを聞いて複雑な気分になった。


「俺が心の安定剤なのに、俺がユラの心を不安定にする材料を持ってきてしまったワケか。それは悪いことをしたな」


「知らなかったのなら、仕方がありませんよ。それに警備ドローンのハッキングができるようになれば、シェルター全てに恩恵があるのはユラも理解しているはずです」


 アマリは浜之助を慰めるように声を掛けた。


「きっとユラも、浜之助に言い過ぎたと反省しているはずです。だからすぐにでも――」


 アマリがそう言いかけた時、浜之助の端末に無線が入った。


「待ってくれ。無線だ。こちら浜之助、どうした」


 浜之助が端末に反応すると、返答は少女のものであった。


『はまのん、いるかい?』


「ユラか!?」


 浜之助はこちらから出向かなければユラとは話せないと思っていたので、驚く。


 これはどういう風の吹き回しなのだろう。


『はまのん、突然怒鳴ったりしてすまないね。私も少々意固地だったよ』


「いいや。悪いのは俺だ。知らずとはいえ、傷つけるようなことをした。すまない」


『悪いことをしたわけじゃないのに、謝らないでおくれよ』


 浜之助はユラの言葉に安堵する。


 正直に言えば、あれを最後に二度と話をできないのではないか。と、心配していたからだ。


 それが杞憂きゆうに終わり、浜之助は胸を撫で下ろしていた。


『はまのんは、初めて警備ドローンと戦闘した時のこと、覚えているかい?』


「それは、結構最近のことだからな。覚えているよ」


 浜之助はユラの急な話題の変更にいぶかしリながらも、応える。


『はまのんは銃もろくに扱ったことがないのに、自分の力で警備ドローンを倒したよね。あの時の興奮、私も共有できたことを感謝しているのさ』


「感謝、か。それはこっちのセリフだよ」


『そうかい? 私は通信越しとはいえ、はまのんをサポートして世界と繋がれたワケだよ。警備ドローンとの戦闘だというのに、そこには憎しみなんてなく。ただただ、はまのんを生かすために私は声を掛け続けたのだよ。それが、本当に楽しかったのさ』


 ユラはひとつひとつの記憶を解きほぐすように、言葉を重ねる。


『だから私は、はまのんをこれからもずっと助けたいのさ。はまのんの目を通して、世界を見たい。それが私の願いなのさ』


「ユラ……」


 浜之助はユラのその言葉に感銘かんめいした。


 自分の行動が、冒険が、助けが、ひとりの女性の生きがいとなっている。


 そう、浜之助はユラにとっての救世主となりつつあるのだ。


『私のトラウマは簡単にほどけない。だからこれからも直接ではなく、通信で浜之助をサポートするわけさ。それで、いいかい?』


「もちろんだ。これからも頼む。ユラ」


『そうだねえ。これからも、ずっと』


 浜之助はユラに感謝を伝えると、通信を切った。


「あら、私の出番はなかったようですね」


「いいや、アマリのおかげで自分の気持ちを率直に言えた。アマリも、ありがとう」


 アマリは浜之助の感謝を、恥ずかしそうに受け取った。


「それはそうと、味方の警備ドローンを増やすために浜之助にはもっと働いてもらいます。今あるだけじゃ、十分じゃないのです。交易エリアを確保する意味でも、もっと遠くへ出かけてもらいますよ」


「……楽できると思ったんだけどな」


「それはもう少しの辛抱です。交易エリアの駐屯所は増築されていますし、銃を持った自警団団員も増えています。安定化には、もう少しですよ」


「はっ。アマリは過去人種を酷使するのが得意なようだな!」


 浜之助は目下もっかの心配事が消えたことに気分を良くし、笑った。


 何事も順調、大きな障害はなく、まい進するだけの人生だ。


 だからこの先も、まだまだ突き進むことができる。


 浜之助は未来を、そう信じていた。


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