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11話「銃と、人と、ヒトガタの夢」

「どうしてこうなるかなあ……」


 浜之助は自警団団員を救い、アマリやユラにセクハラの件を追及された後、アマリの依頼で銃が保管されているというシェルターを訪れていた。


 道中は順調。

 特に警備ドローンが障害となることもなく、浜之助は油断しきっていた。


 だから銃が保管されているシェルターに入った時、それが間違いだと気づかされたのだ。


「そのまま手を挙げてろ。間もなくリーダーが来る」


 浜之助が訪れたシェルターには、なんと他の未来人種たちが住んでいたのだ。

 当然、突然来訪した背の高い男に驚いた未来人種たちは、浜之助に銃を向けて周りを取り囲んだ。


 浜之助は反撃も逃走もする間もなく、仕方なしに武装を解除して、銃持ちの未来人種たちに命を預けている状態だ。


 銃持ちの未来人種の数は6人、ブーストパックとアサルトレールガンを使えば、逃げるだけなら可能かもしれない。

 ただその場合、失敗するリスクと交渉不可能になるという問題があり、ユラにも推奨はされなかった。


『今は我慢だ、はまのん。私の言う通りに話し合えば、向こうも分かってくれるはずだ』


 ユラの無線通信は指向性のある音声となっている。

 それはつまり、浜之助だけが聞き取れる声ということだ。

 そのため、こうしてユラの指示を受けていても、銃持ちの未来人種たちに聴き取られていなかった。


 浜之助は手を挙げたまま待っていると、奥から無精ひげの生えた帽子の男が現れた。


「君が、私たちのシェルターに侵入した侵略者だな」


 リーダーと思しきその帽子の男は、浜之助を警戒の眼差しで睨んだ。


「勘違いしないでくれ。俺は探索しに来ただけで、そちらの存在を知らなかったんだ。危害を加えるつもりはない」


「どうだかな。そうして私たちを油断させて根こそぎ奪うつもりだったのではないか?」


「物資を手に入れようとしていたのは否定しない。だが、奪うつもりはないんだ」


 浜之助は懇切丁寧に自分の目的と経緯を話すも、リーダーは懐疑的だ。

 こうなれば、合理的な安全保障と利益を追求するしかない。


「こうして武器を預けて拘束されている時点で、主導権はそちらだ。そちらの要求を教えてくれ」


「こちらの要求か? それはまずこのシェルターの安全だ。君を返したら、復讐に兵を連れてきたりはしないか?」


「ない、と言うしかない。けれど、外の危険性はそちらも知る通りだ。攻めようにも来ることさえ難しい。俺みたいな過去人種でもない限りな」


「何っ! 君があの、災厄を呼び寄せるという過去人種か!?」


 浜之助は、しまった、と顔をゆがめた。


『あっ。ごめんね、はまのん。言葉の選び方を間違えたよ』


 謝られても、取り返しがつかない。

 これでは、浜之助の信用はガタ落ちだ。


「何だって!?」


 リーダー以外の他の未来人種たちもその話を聞き、困惑し始めた。


「あの過去人種か!?」


「やばいぞ。一体誰がそんな禁忌を犯したんだ」


「今すぐにこいつを始末すべきだ! このシェルターにも厄災が降りかかるぞ!」


 それはまさに恐怖と混乱の渦だ。

 彼らは憶測の伝説と、見知らぬ人種を目の当たりにすることで、更に当惑とうわくしていった。


 このままでは殺される。

 浜之助はそう思い、いつでもブーストパックを押せるように構えようとした瞬間だった。


「静粛に!」


 リーダーの一喝が、シェルターの未来人種たちを黙らせる。


 そして、リーダーは慎重に浜之助に言葉を投げかけ始めた。


「君が過去人種だということは、冷凍睡眠から起こされたということだな」


 浜之助はやや遅れながらも、リーダーに返答した。


「ああ」


「ならば、君を起こした未来人種に不幸はあったのか?」


「今は、ない。将来的には知らないよ」


「そうか。では、少なくとも今すぐこのシェルターに危険が及ぶことはないわけだな」


 リーダーは腕を組んで考え、共に来た側近たちと話し合うこと数分、結論が出たようだ。


「君、名前は?」


「浜之助だ」


「よし、浜之助。君にはこのシェルターへの長期滞在は認められないが、他のシェルターへの荷運びや情報交換ができるわけだな」


「そうだ。何なら、今背負っている通信装置をくれてやってもいい。それがあれば、専用の回線も開けるそうだ」


「それは頼もしいな。では通信装置は受け取ろう。更に、君が私達と友好的に接しようとした努力を評価し、解放しよう」


 浜之助がほっと息つくも、リーダーの言葉には続きがあった。


「ただ条件がある。このシェルターには医薬品が不足している。そこで、君に近くの病院型のシェルターへ行って医薬品を持ち帰ってほしい。過去人種なら、簡単だろう?」


 リーダーは作り笑いで、浜之助に要求してきた。


「その担保として、君が着ているパワーアーマーを預からしてもらえるかな」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。これは過去人種しか使えないようになっているんだ。それに医薬品を大量に持ち帰るのは、このエクゾスレイヴがなければ無理だ」


「うーん、そうか。では構わない」


「えっ? いいのか」


 浜之助はあっけに取られたが、それは条件を上乗せできるか吹っ掛けてきただけだということは、ユラから教えられた。


「人質が取れない以上、こちらは君を信用するしかない。言うまでもないが、指示に従わなければ信用を失うワケだ。忘れないでくれ」


 浜之助はそれがこのシェルターとイデアのシェルターの関係が悪くなるという脅しと知り、内心舌打ちをしたのであった。




『向こうのリーダーとの通信の結果、高いレートで銃と物資を交換することに決まったよ。足元を見られてしまったねえ』


「武器を売るっていうのは、自分の首を絞めることにもなりかねないからな。売ってくれるだけ御の字じゃないのか?」


『浜之助の言う通りだねえ。でもうちのシェルターだって、物資が豊富なわけじゃないよ。だから浜之助にはこれまで以上に探索と物資入手を頑張ってもらわないとね』


「……うへえ」


 浜之助は今、病院型のシェルター内部へと侵入している。

 内観は病院特有の飾り気のない白い塗装の通路が、延々と繋がっている感じだ。

 たまにある病室の中は、簡易ベットの他、白いシーツやカーテンの色で消毒されており、窓には緑豊かな森と清涼感のある清流の映像が流されていた。


『だけど心配しないで欲しい。浜之助ばかりに荷物の運搬や探索は任せておけないからね。警備ドローンを破壊し、安全な運搬路を確保したら、自警団も浜之助を手伝えるよ』


「それは助かるな。じゃあ、後々(のちのち)交易も任せられるか?」


『銃さえ手に入れれば、交易路の各地に駐屯所を設営して、警備ドローンの侵入を防ぐ計画があるそうだよ。あまのんは将来的に、はまのんがいなくとも交易の運用ができるようにするつもりらしいねえ』


「日常的な外の業務は自警団に、俺は探索に集中できるわけだな。何だか、ストラテジーゲームの役割分担みたいで面白いな」


 浜之助は談笑しつつも、今度は周囲の警戒を怠らない。

 通路の角をカバーリングして安全のクリアを欠かさず、薬の保管所を探し続けた。


 そうして細やかな探索を行っていると、目当ての看板がある部屋にたどり着いた。


「薬剤保管所、か」


 浜之助は引き戸になっている扉を、慎重に横へずらして、中の様子を見る。

 すると、保管所の奥で何か動く気配を感じた。


「コンタクト、エネミー」


『えっ? またスキルの技名かい?』


「違う。敵と接触したという意味だよ」


 浜之助は水平にアサルトレールガンを構えたまま保管所に侵入する。

 中は、受付のような場所と待合のような椅子が置かれていて、受付の先には貯蔵されている薬の山が見えた。


 ただそこは、薬だけではない。

 薬品棚をむさぼる、謎の生き物もいた。


「<ヒトガタ>――<ストーンドッグ>!」


 浜之助が知る<フォールンギア>には警備ドローンだけではなく、ミュータントも存在している。

 そのフォールンギアではヒトガタと呼ばれる、人に似たミュータントが世界を徘徊していて、彼らは人間を襲うのだ。


 一説には未熟な人間の形をしているため、元の人間に戻ろうと、完成体である人間を襲うらしい。


 このフォールンギアというゲームではヒトガタの製造方法や、その経緯の描写も克明に描かれている。

 ただし何故ヒトガタが生み出され、何の意図があったのかは、まだ解明されておらず、謎が多いのだ。


 だがもしかしたらフォールンギアの答えが、今という未来で証明されるかもしれない。


 その事実に、浜之助は少し身震いした。


「ストーンドック……、肉眼で見ると増々気持ち悪いな」


 ストーンドックは、人の頭と犬の胴体である人面犬と言うより、人間の骨格を犬の骨格に取り換えたような不思議な形をしていた。


 だから犬の顔面に引き延ばされたぶさいくな顔も、背骨の浮き出た背中も、生々しさがある。


 そこにストーン、と名前に付く通り、身体は石の鱗のようなものが張り付き。

 さながらトカゲのような印象もあるのだ。


「距離よし。射角よし」


 浜之助は受付台を支えにしながら、ストーンドックを狙う。


 ストーンドックはまだこちらに気付いておらず、今が先制攻撃のチャンスだ。


「――恨むなよ」


 浜之助は人間に似た形の生き物にためらいを感じつつも、アサルトレールガンの引き金を引き絞った。

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