表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生大樹の楽園づくり  作者: 笛音狗
大樹の花壇づくり
35/63

30葉 属性と獅子

 マヤからの提案は精霊転生。

 以前に夢婦屯を呼び寄せた奇跡だ。

 前の話し合いでは楽園の面積の都合で先伸ばしにしていたが、今なら幸か不幸か楽園は小さくなっている。確かにその点を考えれば、戦闘要員を呼ぶなら今だろう。だが……


「食糧問題抱えている今に楽園の仲間を増やすの?」

「戦闘要員は肉食性の者を呼べば問題ないでありますよ。今不足しているのは果物や花の蜜であります。食事も垣根で取り放題であります。それに楽園が広がればその分ため池とも近づきますから、ゆーちょ達なら垣根の上を飛んで自力でいけるかもしれません」


 確かに食性が変われば問題ない。

 それにゆーちょたちが自力でため池に行ければ好きな時に食事ができる。

 それは確かに魅力的な提案だ。 


「精霊に強力な肉食獣の体を与えてあげて、垣根の獣たちの数を調整しようってことだね。今は荒れていて侵入禁止にしてるけど、調整次第ではバンク達が霧に入ることも可能になるかもね」

「戦闘要員の精霊でありますね! 今は残っている精霊は2柱で戦闘が得意な者は……あ。あいつを呼ぶことになるのでありますね。そうでありました。あいつを呼ぶことになるのであります……」


 提案時はいきいきと弾むように飛び回りながら話していたマヤだが、だんだんとテンションが下がっていく。徐々に揺れ幅が狭くなっている。


「提案してきた割にはあんまり乗り気じゃないんだね」

「転生候補の精霊がちょっと苦手なタイプでして。でも、楽園のため最適解ですから仲良くするでありますよ。なるべく……できる限り……」

「ホントに大丈夫? すごい顔してるよ。今呼べる精霊は2柱なんだよね? もう一人の方じゃだめなの?」

「精霊には属性があるのであります。属性に近い性質の方がより力を発揮できるのでありますよ」

「へぇ、精霊に属性ね。そういうのちゃんとあるんだ。ちなみにマヤは何属性なの?」

「はい。マヤは射手属性であります」


 はい? 

 聞き間違えかな。射手属性って。それはホントに属性なの?

 もっと炎とか風とかゲームやアニメでよく見るエレメンタルなやつ想像してたけど違うのかな。

 ああ、もしかして武器種とかの縛りかな? 剣とか盾とか。

 ともかく一種類じゃわからないね。


「え、なんか思ってたのと違う。えっと……ユメちゃんは何属性?」

「ユメは羊属性であります」


 羊ッ? 獣とかじゃなくて羊なの?

 羊要素より鳥要素の方が多い気がするのだけど。

 精霊の属性ニッチ過ぎない?


「関連性がわからないんだけど。その属性って何で決まってるの?」

「女神様が決めているでありますよ。世界の時間を司る大切な属性で12柱全員別のものが割り振られてるであります」


 女神様のセンスがよくわからない。

 なぜアーチャーとシープが同列に語られるのか?

 こうなったら12属性全部知りたいな。


「ちなみに今回の召喚候補たちの属性は?」

「獅子と魚であります。獅子は力強く、魚は移動能力に優れます。なので今回の転生は獅子の方を推薦するであります。不服ではありますが」


 射手、羊、獅子、魚……全部で12……時間を司る……

 あーやっとわかった。あれか。

 むん。すっきり。


「12星座か」

「急にどうしたのでありますか?」

「何でもないよ、こっちの話。そういえば思い出したんだけど、精霊の性格は肉体に引っ張られるんだよね? 獅子が苦手ってことだけど、こっちで体は決めるのだからどうとでもなるんじゃないの?」

「できるものとできないものがあるのですよ。ベースの性格は魂に由来しますから制御できません。体に由来する嗜好なんかは好き勝手にいじれますが」

「好き勝手にいじった結果、樹木に発情する変態羊頭(へんたいようとう)白鳥姉(はくちょうねえ)さんが生まれたわけね」

「あれはタイジュさまの睡眠や寝具への熱い想いを反映した結果でありますよ? ただ、肉体に引っ張られる部分ももちろんあります。今回は戦闘用に強い肉体を与えるため、当然性格も荒っぽくなるはずであります」

「今回はあんなことにならないように俺もちゃんと考えるから。獅子、つまり百獣の王の精霊にはどんな体が相応しいかをね」


・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


 よし。完璧だ。

 マヤとの打ち合わせは終わった。

 これで強力な獅子が仲間に加わるはずだ。

 マヤと話し合ったことは以下の通りだ。


 容姿について。

 強靭な肉体。これは欠かせない。

 どんな外敵にも打ち勝てる戦闘能力。これが今回の目的だから当たり前だけど、油断しない。基本的ゆえにしっかり打ち合せした。

 鋭い爪と牙。

 生態系の頂点に君臨する者の最強の剣。

 雄々しい(たてがみ)

 すべてを魅了する美しい装飾であり弱点を隠す最強の盾。

 この2つが揃ってこその獅子、百獣の王ライオンだ。

 姫浜矢も巻物を確認しながら頷いていたし大丈夫だろう。

 ……そういえば、この2つ、アメミットも持っていたような。

 いや、流石にライオンとアメミットをマヤが間違えるわけないよね?


 食性について。

 ライオンは肉食だが、今回の召喚では雑食になってもらうことにした。垣根の生態系もいつまであるかなんてわからない。

 トラブルに備えて俺から生み出せるきのみが食べられた方がいいだろう。

 楽園の外のお肉でとれなくなり綿幕楽を差し出すようなことはあってはならない。楽園生物たちはみんな仲間なのだ。

 あと、完全に肉食より雑食の方が性格が温厚にあるのではないかという思惑もある。

 マヤはなんだか苦手そうだけど、願わくは仲良くしてほしいものだ。

 

 能力について。

 戦闘力に加えて作戦指揮能力も与えることにした。

 楽園はどんどん大きくなる。確実に一人じゃ手が回らない。それに楽園生物は集団戦が得意な子たちが多い。自身の強さ以外にも仲間の強さも引き出してもらいたいものだ。呼び出してくれるであろう眷属の戦闘力にも期待したい。


取り決めについてはこんなもので、打ち合わせの残り時間は獅子の精霊の性格についてあれこれ聞いた。


 マヤ曰く、頭は悪くないくせに粗暴で自分勝手な精霊一の問題児。

 プライドが高く認めた相手しか相手にせず、弱者に厳しい。

 さらに実利がないとそんな認めた相手の言うことも聞かないらしい。

 逆にちゃんと報酬を提示して協力を仰げば、その分はしっかりと働いてくれる律儀な面もあるとのことだ。

 なかなかに偏屈で思い込みの激しい精霊らしく、マヤは根性が腐っているでありますよーなどと喚いている。

 

 俺の中の獅子の精霊のイメージはベテランの傭兵で固まった。

 いや、そんなの物語の世界でしか知らんけど、多分こんな感じだろう。

 確かに世話焼きで働き者なマヤとは真逆。気が合わないだろうな。


「呼ぶのはホントに獅子で大丈夫なんだね?」

「さっきから言ってる通り、これが楽園にとってベストな選択でありますよ」

 

 性格に難ありなら魚の精霊に今からでも変えようかと提案しようとも思った。

 でもマヤは苦手で問題児であっても、こちらの転生を薦めてきた。

 そこには彼女なりの決意や思惑があるはずだ。

 提案したころで受け流されるのが目に見えるな。ここは言わぬが花だ。


 既に魔方陣の準備を終えたマヤが俺に問いかける。


「伝え忘れていましたが、女神さまの世界に必ず1柱は精霊が残ってなくてはなりません。なので、精霊転生はこれで最後になり、獅子を呼び出せば魚を呼ぶことは出来なくなるであります。よろしいですか?」

「マヤが大丈夫なら大丈夫。じゃあ、早速呼び出しますか」


 精霊はこれが最後となるのか。

 世界の4分の1の精霊がここに集まると考えると、現状でもかなり贅沢な感じするよね。

 なのでぜんぜん問題ないだろう。

 俺は新たな仲間への期待に胸を踊らせながら魔方陣に奇跡の力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ