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転生大樹の楽園づくり  作者: 笛音狗
大樹の垣根づくり
29/63

27葉 楽園の垣根・上

 いつになく涼しく心地いい。

 ここならいつまででも寝ていられる。

 ここは天国か? 楽園か?


 楽園。

 そうだ楽園だ。

 みんなが無事だとわかってそのまま寝ちゃったんだった。

 今どうなっているだろう。


 誘惑に打ち勝ち目を覚ます俺。

 ってなんじゃこりゃ。一面モヤで何も見えない。


「タイジュちゃん。まだ寝てないとダメ」

「このモヤはユメちゃんのせい? ああ、そうだ。外敵は撃退できたんだよね。みんな平気?」

「みんな大丈夫。むしろタイジュちゃんが一番平気じゃない。まだ寝てて」


 そう言われて少し眠る前のことを思い出す。

 あたふやだけど確かに最後は奇跡がうまく機能せずボロボロだった気がする。

 そうか。大けがをして俺は気絶してたのか。

 植物の体の痛覚が鈍さがうらめしい。

 自分の体調さえ把握できないのだから。

 普通の植物は奇跡の力なしでどうやってこれらの情報を得ているのだろうか。

 とても気になる。


 まあ、ただでさえ無能なのに不調じゃどうしようもないのはその通りだ。

 焦っても仕方ない。ここはユメちゃんに甘えてしまおう。

 よくわからないけど、このモヤ、すごく気持ちいい。


「ふふ。タイジュちゃんが私の中で気持ちよくなってる」


 そのきわどい発言はやめなさい。

 というより私の中?

 このモヤがユメちゃん?


「回復したすべて教えるから、いまはゆっくりおやすみ。ね」


 楽園の状況は気になるけど、無理して頑張る時ではないな。

 夢にまで見た二度寝ができるとプラスに考えていこう。 

 それじゃ、おやすみなさい。


・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


 朝日を久々に意識する。

 枝先まで意識を張って、伸びー。

 うん。すっきり。

 ……えっ、芝生まですっきりとなくなってる。

 楽園が小っちゃくなってる。

 俺の奇跡力もなんかとっても少ないような…?


 愕然とする俺に申し訳なさそうに飛んでくるマヤ。


「タ、タイジュさま、まずは復活おめでとうございます。今の状況を説明するであります」


 気絶してからの説明を受けた俺。

 えっと、つまり俺が癇癪を起したおかげで外敵は無力化できたと。

 言い換えると、俺が癇癪を起したせいで楽園の大半が枯れたと。

 

 説明中、何度も泣き崩れそうになっていたマヤ。

 アメミット戦から続けての実質的な敗北でそうとう落ち込んでいるみたいだ。

 こんな時こそ、俺がしっかりしないと。


 俺が落ち込んでたとき、マヤは何をしてくれたっけ?

 そういえば最初の戦いの後で、マヤは反省と称してわるかったところではなく、よかったところを挙げてくれたよね。

 よし、今回のよかったところを確認しよう。

 楽園生物の被害はなしで、いままで必死に作ってきたため池も守れてさらには完成した……らしい。

 本当に守りたいものはしっかりと守れている。

 逆に失ったものは楽園の面積だけだ。

 これから仲間を増やし、思いを高めれば取り返せるものだ。

 よし。あの時のお返しで今度は俺が慰めよう。


「誰も倒れてないんだね。これもマヤが時間を稼いでくれたおかげだよ。楽園の芝生はまた後からでも増やせるし、守りたいものはしっかりと守れたんだね」

「おっ、タイジュさまは今回はポジティブでありますね。その調子であります。そんなタイジュさまはとっても素敵でありますよ。」


 あれー? マヤさんめっちゃ元気じゃないですかー。

 さっきまで泣きそうでしたよね?

 もしかして、俺のこと試した? 演技?

 なんとなく引っかかる態度だ。

 

 ふと、思った。

 聞き流しそうになったけどさっきの説明のとき、『否定』の原理とか知ってたし、マヤは魔法の知識がずいぶんとありそうだった。

 マヤはなぜ俺に魔法の知識を与えないんだろう。

 そういえば、魔法の滅亡が使命のはずなのに俺は魔法のことをほとんど何も知らない。

 そういえば、魔法の話題になるといつの間にか話がすり替わっていた気がする。

 奇跡の発現のときでも互いの認識をかなり意識するマヤが攻略対象の知識を持っていないわけがないよな。


 確認したいけど、直球で質問して答えが返ってくる気がしない。

 それより、確認しなきゃいけないことがたくさんだ。

 このことは時間があるときまた考えよう。


 「マヤ、みんなを集めて。戦後処理は終わってるみたいだけど、俺が現状を全然把握できてない。全員で情報共有しよう」

 

 解決の種の儀式以来、全員が俺の前に集まった。

 最近のことのはずなのに楽園の状況が一変しているためか、昔のことのように思える。


 まずは変化その1。

 ため池の完成をはじめとした地形の変化。

 楽園大幅に縮小し、現在は2つに分かれている。

 俺のまわりとため池だ。楽園縮小のために飛び地になってしまった。

 ため池にはすでに7割程水が張っているそうだ。

 みんなの生活用水としての活用が既に始まっている。

 

 変化その2。

 生活用水の確保。

 いままでほとんどの楽園生物が水分補給を俺のきのみに頼っていたが、直接水を飲めるようになった。

 水には効能があり、治癒効果、奇跡力増幅効果があるらしい。

 さらには、この水は奇跡の力に影響されやすいとも言っていた。

 これ、もはやただの水じゃないね?

 聖水とか言ってもいいレベルだよね。

 この水のおかげで新たな能力に目覚めた楽園生物もいるらしい。

 課題もあるものの、既に十分に有効活用されている。


 変化その3。

 サザナミチガヤの誕生。

 といってもメジェド襲撃前にすでに生えてたけどね。

 穂のほとんどはため池の水のために絞られている。

 絞り残りはゆーちょ達の食事に当てられていたみたいだ。

 ただし、穂の成分のほとんどは水。糖はごく少量だ。

 ゆーちょ達の食糧問題は解決には遠い。

 しかし、一歩前進には違いない。

 あっという間に繁殖するため、現状で数に困っているという問題は起こっていない。

 どうでもいいけど、この(ちがや)という植物。

 いままでススキだと勘違いしてました。


 変化その4。

 楽園のみんなの力の増減。

 まず、俺は大幅に奇跡力を落とした。

 ただし、今までの奇跡が使えなくなったわけじゃない。

 例外は<解決の種>。あれは当分使えないだろう。

 つまり、スタミナ切れが早くなっただけだね。

 致命的な弱体化とまではいかないだろう。

 なので、急いで奇跡力を取り戻そうとは思ってない。

 楽園の防衛能力に合わせてゆっくり伸ばしていきたい。


 一方、ユメちゃんはため池の水を操作できるようなりパワーアップ。

 バンク達を観測者にして‹能力付与のきのみ›を使い、自分の思い描く能力を獲得したみたいだ。

 襲撃前につくっていたきのみが活用されてなによりだ。

 というか、布団を自称するのに水を操るってどうなの? しけない?


「水を操れるから湿気の排除もできる。お日様の都合に関係なくふわふわもしっとりも再現可能」


 ユメちゃんからのご回答。

 これがプロの布団魂ということなのだろうか。

 水はけのために水を操作するという発想は素晴らしい。俺には無理だ。

 それにため池の回復の水を纏えたからこそ、モヤで俺を包むこともできた。

 俺を覆える程なのだから、モヤというよりもはや霧か雲の類なのだろう。

 ……これ、外敵対策にできるのでは?

 楽園の周りをこの霧で覆ってしまえば外敵も侵入しにくくなるんじゃない?


「可能だけど維持が大変。これから広がることを考えるとずっとは無理」

 

 いい考えだと思ったんだけど……なにか霧を維持しやすくする方法ってない?


「ため池を増やすとか、水源をもっと増やさないとダメ。」


 むう。すぐにはできそうにないね。

 だいたい情報共有は終わったかな。

 おや、マヤがなにかあるようだ。

 


「タイジュさま、すぐに解決したい問題があるであります」


 なんだろう? 心当たりがない。


「捕縛しているメジェドの処遇であります」


次回、2章ラスト。予定してたお盆より1週間も早く終わってしまった。

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