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転生大樹の楽園づくり  作者: 笛音狗
大樹の垣根づくり
25/63

23葉 足跡からの防衛戦・上

今回のおはなしはマヤちゃん視点です。

 おはようございます。

 姫浜矢(ひめはまや)であります。

 久しくフルネームで呼ばれてない気がするであります。

 

 今は夜明け前。

 まだタイジュさまもお休みになっています。

 そろそろ頃合いなので、いつもよりちょっぴり早く起きたであります。


 今頃、慣れない夜の勤務を我が眷属のゆーちょ達が頑張っているであります。

 ここは彼女たちの主としてマヤも頑張らねばであります。

 日頃から弓の状態も万全にしてあります。

 アメミット戦ではあまり活躍させてあげられなかったタイジュさまからの贈り物。

 次こそは立派な戦果を挙げて見せるであります。

 

 到着しました。

 ここは昨日魔法の痕跡が発見された箇所から一番近い楽園と砂漠の境界であります。

 境界線を守るようにバンクたちがユメの抜け毛クッションで即席バリケードを作っています。

 バンクはタイジュさまが直々に手懐けただけあり、非常に優秀な動物です。

 ああ、さすが、タイジュ様。

 

 ゆーちょ達で今回の作戦に参加している数は27匹。

 ゆーちょ自体はもっといますが、作戦が長期化したときのことを考えて数は絞っています。

 1ユニット9匹で、最初に羽化した3匹がそれぞれリーダーをしているであります。

 今は大きめなドット柄の(ゆがけ)がキュートなあの子のチームが当番みたいでありますね。

 最近は、よくタイジュさまに抱きついてる姿を目にします。

 

 バリケードの上を緊張感をもって飛ぶ2匹の見張り番ゆーちょ。

 本ユニットで一番若手の子たちでありますね。

 装備は、矢虫と弓虫。

 幼虫たちもみんなコンディションは万全ですね。

 バリケードの影にある筒蛹の抜け殻には矢虫たちがびっしりと控えています。

 弽蝶々は自身の抜け殻を矢筒にする習性があります。

 タイジュさまはこういう運用を嫌いますが、現にこういうことに適した奇跡の力を持ってるわけですから、使わない手はないのであります。 


 リーダーが私の姿を見ると、すぐに飛んできて状況報告をしてくれます。

 弽蝶々は喋れませんが、そこはマヤの眷属。

 マヤは彼女たちの考えが手に取るようにわかるでありますよ。

 尤も、彼女たちのジェスチャーの表現力は高いですから、タイジュさまやユメでもなんとなくわかるとは思いますが。

 ふむふむ。そろそろでありますね。

 リーダー。ユニット員全員に、携帯中の矢虫と弓虫を戦闘態勢に入らせるように伝えてください。

 矢虫は‹硬化の奇跡›、弓虫は‹弾力増強の奇跡›でありますよ。

 うまくできない子には葉をあげて落ち着かせてから、再度奇跡を指示するように。


 さて、いままで外敵の姿は発見できていません。

 しかし、有能なマヤはいままでの魔法の残滓を解析して掴んでる情報があります。

 それは外敵がいつも決まった時間に動き出すということであります。

 ここ百年程のブランクはありますが、これでも千年近く人類と争ってきた身。

 魔法の種類と強度から発動時間を算出するなど朝飯前であります。


 おっと。

 魔法知識に詳しいことはまだ秘匿事項でした。

 タイジュさまに魔法知識を与えるのは時期尚早であります。

 今はまだ奇跡(ちから)を蓄える時期であります。

 それにタイジュさまは()()人間勢力との戦闘を望んでいません。

 本人がやる気ならないと奇跡は真価を発揮しませんからね。

 その件は時間が解決してくれるでしょう。

 とりあえず、今は目の前の戦闘に集中であります。


 外敵が何の魔法を使用しているかはわかりません。

 ただ、自身の能力を向上させたり、性質を変える魔法は必ず息継ぎが発生します。

 おそらくその息継ぎが1日1回この時間なのでしょう。

 さあ、ゆーちょ達、草の根分けてでも探し出してください。


 といっても、弽蝶々たちにとってこれが初陣。

 今回の敵を見つけるには、経験不足でありますね。

 ここはやさしいマヤお姉さんが獲物の見つけ方をレクチャーしましょうか。


 例えば、そこのへこみ。

 風か何かで一見自然に砂が削られたように見えますが、魔力の流れが少々おかしいです。

 こういう場所に矢を射てみると……

 

 サクッ。

 

 ほら、砂ぼこりを巻き上げて敵が動き出しました。

 姿も見えず素早いですが、落ち着いてください。

 足跡と砂ぼこりで動線がわかるであります。

 動線を見て動きを予測し、道を塞ぐようにスパッと撃ってください。

 当てる必要はないでありますよ。

 それはマヤがやりますからね。

 そこのバンクは念のため、ユメちゃんと他ユニットのゆーちょを起こしてきてください。

 念には念を入れるであります。


 弽蝶々たちは丁寧に狙いを定め、矢虫を放ちます。

 パトロール中に行った訓練通りでありますね。素晴らしいです。

 しかし、侵略者はすばしっこいであります。

 足跡と砂ぼこりしか見えませんが、矢虫たちはすべて避けられているようです。

 しかし、避け続けているということは姿は透明でも当たるのでしょう。

 ふむ。動線に違和感がありますね。

 まるで慣性を無視したような動きが混じっています。

 これは非実体型のアンデッドの特徴であります。

 しかし、それなら矢は当たらないはず。 

 それに動きが早すぎる。

 ここ100年で生まれた新種でありますかね?


 装備担当の弓虫がへばってきました。

 ‹弾力増強の奇跡›は地味ですが、一番大変なポジションであります。

 もう少しでゆーちょ達の射撃は打ち止めになり、控えの弓虫との交代のロスタイムが発生してしまいます。

 そろそろ決めなくては。

 非実体型であることも考えて〈不動の奇跡〉を矢に込めるとしましょう。

 タイジュさま、お力をお借りします。

 許可は頂いてませんが、ここは外敵の排除を最優先であります。

 ふーっ、集中。


 シュ。


 よし、きれいに決まったであります。

 魔法が剥がれ、次第に体が見え始めます。

 たまごかスライムか、流線形のボディにヒトの足が生えた生き物がいました。

 膝に矢を受けたらしく横たわったままもがいているであります。

 

 なんなんですかこのふざけた容姿は。

 予想通り、マヤの知らない生き物ですね。

 正体はあとで巻物で調べるとして、さっさと確保しちゃいましょう。

 リーダー、ユニット員に回収させてください。

 

 リーダー? どうしました。

 他ユニットからの連絡ですか?

 少し離れた境界にて同様の足跡と砂ぼこりが複数発生?

 まさかこいつは陽動だったでありますか。

 なんと外敵は群れでした。

 しかも、高度な戦術を組み立てる知能があります。

 これは一杯食わされたであります。


 リーダー、急いでバリケードに連絡。

 クッション内の綿幕楽に〈注目の奇跡〉を使わせなさい。

 外敵は物理干渉が効かない可能性があります。

 攻撃時はブラフでいいから奇跡力を纏わせなさい。

 足止めにはなります。


 ああ。まずい。このままじゃ、まずいであります。

 足止めが効いても有効打を十分に準備できていません。

 予定を変更してこの生き物の解析を行って最善手を考えましょう。

 巻物を持ってきた自分を褒めたいところですが、今はそんな時間さえ惜しい。

 それまでなんとか持ち堪えてほしいであります。


 タイジュさま、ユメちゃん、どうか無事でいてください。


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