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転生大樹の楽園づくり  作者: 笛音狗
大樹の垣根づくり
23/63

21葉 異世界動物観察記003~メジェド~

 ここはパラダイス大陸、黒の大地のドゥアト砂漠。

 大陸最大の砂漠であり、凶暴な動物たちが住む魔境でもある。本日はこの砂漠にすむアンデッドの中でも特に変わった性質を持つメジェドを紹介してみよう。


 メジェドの前にそもそもアンデッドとは何かについて解説したい。

 アンデッドとは命がなく魂だけの存在である。魔法によって偽りの命を得て、他の動物たちのようにこの世界に暮らしている。

 

 発生には黒の魔素(マナ)が深くかかわっているため、黒の大地にとても多い。

 隣接する赤の大地と青の孤島にも少ないながら発生し、隣接しない白と緑の大地には存在しない。


 アンデットには2種類のものが存在する、実体型と非実体型だ。


 実体型は肉体をもっているアンデッドだ。

 例として死体に偽りの命が宿り動き出すゾンビや、生けるものの命を奪い、その肉体と魂を使って自己の複製をするグールなどが存在する。

 実体型のアンデッドの特徴としては普通に食事をすることだ。

 長い間使うことで肉体は朽ち、偽りの命があっても動けなくなる。そこで魔法により新陳代謝を模倣する。無理やり生き物の消化と吸収、肉体の作り替えを行うのだ。ただし、常にこれらを行っている普通の生き物とは違い、生けるものを襲い、獲物が手に入ったときや大けがをして動けなくなった時のみこれらを行うので、その肉体は基本的に死肉になっている事が多い。

 

 一方で非実体型は肉体を持たない。

 魔法による偽りの命と魂のみで存在している。例として生き物の魔素(マナ)を吸い上げるガストなどが存在する。

 基本的に半透明で目視できる。しかし、これは魔力によって空気中の塵や水蒸気が集められて魂の形を形成しているだけであり、半透明な肉体を持つわけではない。よって物理的な干渉は受けない。 

 空気中の魔素(マナ)を吸うものは浮遊霊、生き物の魔素(マナ)を吸うものを悪霊と区別される。

 よく専門家の間では草食動物と肉食動物に例えられる。


 世の中には必ず例外がいるものだ。

 実体型と非実体型、どちらにも当てはまらないアンデッドがいる。

 前置きが長くなったがそれがメジェドだ。幻のアンデッドと言われている。

 黒の大地にヒトがいた頃の文献によると不可視の看視者、冥府の守護者、歩く砂クラゲなどの表現が見受けられる。当時でも非常に謎の多いアンデッドだったようで資料が少ない。


 今回、観察ではなく紹介しようと表現した理由は自然環境下でメジェドを観察するのは不可能に近いからである。だが、安心してほしい。苦心の末、今回私はメジェドの捕獲に成功した。じっくりと調べてみるとしよう。


 まず容姿だがシーツを被った子供のようなだ。

 真っ白な布を頭巾の様に被り、膝下だけ出している。頭と思われるところに無気力に虚空を見つめる目が2つ並んでいる。冗談のような見た目だが、これが正真正銘メジェドの姿だ。


 体に触ると触った部分が砂になって消えて、すぐに再生した。

 これは非実体型アンデッドのように砂漠の砂を魔力で集めているのだろう。しかし、密度が全く違う。非実体型のアンデッドは形が浮かび上がる程度の塵しか纏っていないが、メジェドは魂の形に合わせて隙間なく砂が敷き詰めてある。半実体型とでも分類すればよいだろうか。今は砂だが、もし海にメジェドがいれば体は海水で作るはずだ。

 色は黒魔法【ハーフェイク】で変化させているらしい。

 なので、目は模様でしかないのだが、強い魔力を感じる。きっと魔法の発動器官となっているのだろう。

 文献によると目からレーザーを撃ったという記述がある。


 メジェドの最大の特徴として不可視になることだ。

 このことがメジェドが幻のアンデッドと言われる所以だ。しかし、調査するうちにこの能力は不可視化というには生易しいほど強力な力だと分かった。メジェドは見えなくなるだけではない。本当に消えることができるのだ。

 例えば、非実体型アンデッド・ガストを捕獲しようと瓶に詰めたとする。しかし、普通の瓶では肉体を持たないガストはすり抜けてしまう。今度は瓶に魔法耐性のあるものを使ってみる。すると、ガストは瓶に詰められる。これはアンデッドの偽りの命が魔法によって維持されているからだ。

 今回、この方法でメジェドの捕獲に臨んだが失敗した。

 問題なく瓶に詰まる。監視している間は確実に瓶の中にいる。しかし、少し目を離すと瓶にはメジェドがまとっていた砂しか残っていない。魔力感知の青魔法【マジックセンサー】で確認すると魔力をまるで感じない。死んでしまったかと思ったが、少し離れたところで【マジックセンサー】に反応が現れる。

 メジェドは何らかの手段で魔力を完全に断ち、瓶をすり抜けて逃げたのだ。この世で魔法で干渉できない物質は発見されていない。つまり、物理も魔法も受け付けない状態になれるメジェドはこの世から完全に消えることができると言えるのだ。どのような魔法を使っているかはまだわかっていない。これから研究する必要がある。


 メジェドは幻のアンデッドだ。

 今はまだこの程度しか解明できていないが今回捕獲に成功したことでその研究も大きく進むだろう。メジェドの性質が分かれば、まだ誰も完成させていない完全に消える魔法の発明の大きなヒントにもなるはずだ。今回の紹介はここまでにしよう。

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