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転生大樹の楽園づくり  作者: 笛音狗
大樹の垣根づくり
19/63

17葉 異世界動物観察記002~カーバンクル~

 ここはパラダイス大陸、黒の大地のドゥアト砂漠。

 さらに中央にある深淵の地を南東に抜けた先。最近、ここの環境に変化があったようだ。本日はここで動物観察をしてみよう。

 

 以前よりここには巨大な樹が1本ぽつんと不自然に生えていた。

現在、その樹は常識外の大きさに育ち、その周囲には芝生が広がり独自の生態系が広がっているみたいだ。羊頭のアヒルやヒトの手足の生えた蝶など、見慣れない奇妙な姿の動物たちが生息している。おや、それらに紛れて見慣れた種を見つけた。カーバンクルだ。しかも、すごい数だ。数々の新種にも心惹かれるが、今回は比較対象がはっきりしているカーバンクルに焦点を絞って観察してみよう。


 まず、一般的なカーバンクルの話をしよう。

 カーバンクルは3つ目で小柄の魔法生物の総称であり厳密には種族名ではない。現在確認されているカーバンクルは緑の大地のリス型、ネコ型。赤の大地のネズミ型。白の大地のウサギ型。そして黒の大地のキツネ型の5種類だ。

 体長は最小でネズミ型で約7cm、最大でネコ型で約50cm。共通の特徴として額にある第三の目だ。魔法を使用する際、この3つ目の瞳が赤く輝き、まるで宝石のようにみえる。宝石のような瞳と希少性が相まって、ヒト社会では幸運の象徴として扱われている。

 

 次に今目の前にいるカーバンクルの話だ。

 まず姿だが、黒の大地のキツネ型に近い体形をしているが細部が異なる。耳がウサギのように長く、耳の中ほどで折れ曲がっている。角の様に前に突き出し、地面や前方のものを触れているので、虫の触覚みたいだ。黒の大地のものに比べ、体は小さく、しっぽが大きい。特にしっぽが異様に膨らんでいる。さらに1対の細いしっぽが分かれてある。シルエットだけ見るとアリを連想させる。

 さらに単独、もしくは少数の群れでいるいままでのカーバンクルに対し、本物のアリのように大群が列をなしている。いままでの常識から大きく外れる性質と言えるだろう。


さて、カーバンクルの行動に注目してみよう。

 カーバンクルたちは巨大な穴を掘っている。事前に印された円の内側のみを掘っていることから高度な社会性がもっていることがわかる。どこかに指揮官がいるのだろうか。カーバンクルの作業を巨大な生き物が監視している。

 この生き物が大量のカーバンクルを使役しているのだろうか。体高だけで7~8m、体長は15m程。この地の新たな主に違いない。獣の頭を持つ首の長い鳥。四天の竜には及ばないだろうが、これほどの巨体はなかなかお目にかかれない。この巨大鳥に見守られながら、穴掘りから土の掻き出し、運搬まで隊列を作りながら行っているカーバンクルはさながら兵士のようだ。


 カーバンクルが巨大鳥に咥えられて、羽に擦り付けられている。

 なにをされているのだろうか。餌ではなさそうだ。擦り付けられたカーバンクルたちはその獣の毛の生えた羽の中に潜っていく。まさか羽を掃除しているのか。一部の鳥には蟻浴(ぎよく)というアリを使って体についた汚れや寄生虫などを落とす習性がある。この行為はその行動に非常に近い。さながら、この巨大鳥はシャワーを浴びているというところだろうか。


 巨大鳥から出てきたカーバンクルたちは毛玉や汚れをどこかへ運んでいく。

 ついて行ってみよう。1列になって進んでいくカーバンクルたちはより大きな列に合流した。

 この列は双方に行き来がある。

 一方は穴掘りの作業場へ、黙々と進んでいく。作業の交代要員だろうか。

 もう一方は大樹の方向へ、黙々と進んでいく。きっと巣があるのだろう。

 合流したカーバンクルたちは大樹の方向へ進む隊列に加わる。彼らと同じように様々なものを運んでいるカーバンクルたちもいる。運んでいるものの中には巨大鳥の雛を思わせる生き物の姿もあった。息はない。共生関係ではなかったのだろうか。観察記録には事実のみを書くべきで、憶測は書くべきでないとわかっている。しかし、それでもいろいろと考察してしまうのは学者の性というやつだ。


 カーバンクルの列を辿っていくと大樹の根元まで来た。

 根と根の間にカーバンクルたちが吸い込まれていく。どうやらここが彼らの巣のようだ。まだ日中であるにも関わらず大樹によってできた大きな影のおかげで薄暗い。はじめてこの大樹をまじかで見たがここまで高いものだとは思わなかった。この樹の前だと先ほどの巨大鳥も小さく見える。ヒトの巨大建造物でもここまで大きいものはなかったと思う。ユートピアにある国魔連の議事堂も高さでは負けているだろう。


 果たして大樹はこの砂漠に囲まれた地でどうしてここまで成長できたのだろうか。

 また推論で申し訳ないが、この鍵はカーバンクルが握っていると考える。カーバンクルたちは今も次から次へと巣穴に食べ物を運んでいる。もちろん、ほとんどはカーバンクル自身が食べるためだろう。そしてそれを食べ終えた後に、食べ残しや糞が発生する。これが肥料となって大樹を成長を支えているのではないだろうか。つまり、ここでもカーバンクルは共生関係を結んでいるということだ。まさか、この砂漠の真ん中で巨大樹が育った背景にはこのようなことがあったとは。まさに大自然の奇跡といったところか。時間さえあればもっと調査できるのだが、ないものはしょうがない。


 日は暮れてきたがカーバンクルたちの列は途切れることはない。夜もこのまま働き続けるのだろうか。

 本日の観察はここまでにしよう。


 

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