1葉 永い眠り
小説初投稿です。よろしくお願いします。
鏡大樹は電気を消した部屋の中、ベッドに転がっていた。
日課となっているwebサイト巡回を済ませた大樹は、寝返りを打って手持無沙汰にスマホを弄る。
机のノートパソコンの上には、コピペだらけなレポートのレジュメが置いてある。その隣に1口しか飲んでない500mlペットボトル。きゅうり味のジンジャーエール。それらをカーテンの閉まってない窓から差し込むコンビニの明かりが控えめに照らしていた。
「ついに明日は研究室選びか。とりあえず、あいつと同じ所にしとくか」
正直どうでもいい、というような調子で大樹はぼやく。そして、ハッとする。
「そう言えば、まだあの漫画読んでなかった。先輩が勧めてきたやつ」
指が高速で動き、漫画アプリを起動させる。
now loadingの文字を連打する。
画面が明るくなると同時にスワイプし、ふと止まる。
「まぁ、明日でいいか。もう寝よ。ふぁーー」
欠伸の後、大樹は目を瞑る。その寝顔は、明日も変わらぬ日常が訪れることを信じて疑わない、根拠のない自信に満ちあふれている……
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むーん、すっかり夜が明けちゃったけど、まだ目を開けたくない。なにせ今日は木曜日。つまり午後の講義までたっぷりと眠れるのだ!カーテンを閉め忘れたのは痛手だが、朝日を浴びながらの二度寝もまた乙なものだ。
突如、瞼の裏の黒背景に緑色がじわりと広がる。下側からに滲み出てあっという間に3分の1を覆う。振り過ぎの油性マーカーみたいだ。さらに今度は上側が段々と青く染まる。今、目の前には上から青、黒、緑の三層の景色が広がっている。
なんじゃこりゃ。
ホントはヤだけど緊急事態。起きるか。……ってあれま、体が動かない。
寝起きの伸びは朝いちばんの楽しみなのに。
なぜだか腰が上がらない。
さらには両手も動かせない。
何なら瞼も閉じたまま。
これは絶対なにかがやばい。危険がピンチ?
うおーーー動けーーー。俺の腰、俺の腕、足、首……
うん。数分頑張ったけど、無理。
でも感覚を巡らせたことで、わかったことがいくつかある。
1つ、俺は立っている。いや、ひざまで埋められてる。やわらかでひんやりとした感覚がある。おばあちゃんちの田んぼに入った時に似てる。
2つ、俺は外にいる。しかも全裸で外にいる。そよ風が体を撫で朝日を強く感じる。そう、衣服がなくなっているからだ。
よし。現状でわかる情報は出揃った。いままでの情報から現状を推測してみよう。仮説はこうだ。俺、鏡大樹は、どこかの田んぼに運ばれて、全裸で案山子にされている。
んなわけあるかい。
でも、長時間になると命の危険もあるんじゃないか。
頭を抱える俺。いや、両手は動かんけども。
そんな時、そいつは躍り出た。
斜めに伸びる楕円のように激しく動く。
下の方だとかなり見にくい。
どうやら下の色と一緒?
じーっと、観察してみる。
ぴたりと止まったそいつは紅白の球体。
はつらつとした声が響き渡る。
「タイジュさま、お目覚めでありますかっ。」