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異世界“日本”へ  作者: 恵夢マチカネ


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12/13

エピローグ ライバル

エリカと逢花の戦いは決着後……。


 今日の授業は、どれもこれも(まもる)の頭の中に入ってこなかった。

 命を賭け、今、エリカと逢花(おうか)が戦っている、これが頭の中で一杯。

 教師を含め、護のことを気にするものはいなかったと言うより、目立たなかった。奇妙で不気味な事件の直後、授業に身が入らないのは護1人だけではなく、未だ学校に出て来れない生徒もいるぐらい。

 幼馴染の聖子(せいこ)だけは護の様子を気に留め、休み時間に屋上に呼び出す。

 問い詰められ洗いざらい話した、嘘が吐けないのが護。


「えっ! エリカと逢花がタイマン中で、エリカが勝っても私たちの記憶が書き変えられてしまうだって」

「うん」

 護は頷く。

 どうして話さなかったと言いかけて止めた。こんな話、おいそれと人に話せるような内容ではない、仮に聖子が知っていたとしても、多分、誰にも話せなかっただろう。

 思い起こしてみれば朝、エリカは家にいなかった。もっとも寝坊して遅刻しそうだった聖子には、気にする余裕は無かったのだが。

「水臭いじゃないか、何も言わずに出て行ってしまうなんて」

 手紙を受け取ってから二日間、エリカは何の素振りも見せず、今朝も黙ってて出て行ってしまった。

 町案内もした買い物した一緒に生活したり、戦ったりもしたのに。

「エリカさんも、言いづらかったんだと思う」

 戦いに明け暮れていたエリカには、日本に来てから過ごした数日間は、大きくて貴重な経験。それを共に過ごした人たちに、自分が死ぬか、その思い出が消えて無くなるなんて、どう伝えればいいというのか。

 話しても悲しませるか苦しませるだけ、だからこそ、何も告げずに出て行った。

 そして、今、この時、護にも言えないことがあった。

 今も護と聖子の記憶に中に、エリカのこと、共に過ごした日のことが明確に残っている。エリカが勝てば記憶が書き換わってしまうというのに。

 ということは、まだ決着が着いていないのか、それとも……。

 不安が護の心の中でとぐろを巻く。


 知ってしまったからには聖子も、授業には身が入らなってしまった。と言っても、平時でも真面目に授業を聞いている方ではないけれど。



 放課後になっても、エリカの記憶は残っていた。

 帰り道、護と聖子は無口。聖子も記憶の残っている意味を理解。

 浮かんでくるのは、悪い予感ばかり。

 何かがあれば、聖子は命がけで護を守る覚悟は出来ている。こんな事なら、エリカの血を貰って魔人戦士になっておけば良かったとさえ思う。

 立ち止まる護、ここから帰り道が別れる。だけど、今は1人になりない気分。

「家に来る?」

「うん」

 今日も日が落ちるまで、聖子の家にいることにした。

 その道すがら、

「今、帰りか、護、聖子」

 壁に凭れかかったエリカがそこにいた。

「エリカさん」

「エリカ」

 護と聖子は駆け寄った。

「エリカさん、大丈夫」

 着ている服はボロボロ、顔色は良くない、どっからどう見ても状態はヘロヘロ。

「大丈夫さ、護。ただちょっと力を使い過ぎただけだ」

 その場に座り込む。この様子、ただちょっとだけではない、それでも笑って見せた。

「まずは休みましょう、エリカ」

 聖子はエリカに肩を貸す。

「ありがとう、聖子。正直、ここに帰ってくるのもしんどかった」

 聖子の気遣いがありがたい。



 エリカを居間のソファーで休ませる。

 門下生御用達の高カロリーの飲むゼリーを聖子は持ってきた。まずは食べて体力回復。

 高カロリーの飲むゼリーをたっぷり平らげるエリカ、体形のことなど、なんにも考えていない暴食、ダイエットの天敵行為でも、今のエリカなら平気のへっちゃら。

「ありがとう、やっと人心地着いた」

 さっきより、大分顔色が良くなっていた。

 なんとエリカは孤島から、あの場所まで飛んで来たのだ。

 ボートを動かしていた江本(えもと)が自殺、エリカにはボートの動かし方が解らず、それで無理を承知で飛ぶ。

 あの場所で待っていれば護か聖子に会えると思い待っていた。以前、学校に結界が張られた際、通ったことがあったので。

 かなり無理をしたため、あの場所に辿り着くと同時に体力の限界が来た。

 早いうちに、護と聖子に会えたのは幸運。

 ある程度元気を取り戻したエリカは、孤島での決闘の話をする。ただ江本が自殺した件は伏せておいた、この件は護と聖子には知らない方がいい。

 江本の主に対する思いには敬意を賞し、瞼を閉じておいた。



「そう逢花さんは……」

 命を賭けた決闘の末、勝利したのはエリカ。

 エリカが勝ったことは嬉しいが、逢花が死んだことは悲しい。

 嬉しさと悲しさがごちゃ混ぜ。

「逢花と言うか女神皇帝が倒されたのに、私たちの記憶がそのままなのは何故?」

 素朴な聖子の疑問。何故“タイムパラドックス”が起らなかったのか?

「それなんだ、私も魔人戦士のままだ」

 エリカも同じ疑問を持っていた。何もかも覚悟を決めて戦いに赴いたのに、記憶が消えていないのは嬉しいことは嬉しいのだが、疑問を残していると、どうもすっきりしない。

 エリカも聖子も、大きな不安を抱えていた分、解消されたらされたで気になる。

「……ループしたんじゃないかな」

 ボソッと言葉が漏れ出し、エリカと聖子が護を見る、この状況の回答を出してくれる期待大。

 期待のこもった視線を受けた護は丁重に語り出す。

「エリカさんが日本に来たことで新しい時間軸が出来たんだと思う。そうだね、元々エリカさんの居た時間軸をAとするなら、エリカさんが日本に来た時点で、新しい時間軸Bが出来た。つまり女神皇帝が倒された時に歴史が変わったのではなく、エリカさんが日本に来た時、新しい歴史が始まったんだ」

 逢花と言わず、敢えて女神皇帝と言った。

 要するに歴史が改竄され、記憶が書き換わらなかったのは、女神皇帝と戦う前に新しい歴史が出来たから。

「ちょっと、待って」

 ここで聖子に新しい疑問が生まれる。

「エリカが来たことで時間軸Bが誕生したなら、元々いた時間軸Aはどうなる?」

 時間軸Bで転移前の女神皇帝を倒したことで、この時間軸の異世界は救われたとしても、元居た時間軸Aはどうなるというのだろう。

「それはパラレルワールド、別々の世界になる」

 ここまで黙って護の話を聞いていたエリカ。

「で、結局、オレの世界は救われたことになるのか、救われなかったのか」

 それが一番大事、生まれ育った世界を救うことを目的に、エリカは世界と世界を渡り日本に来たのだ。

 その目的は達成できたのか、それとも出来なかったのか?

「う~ん、時間軸Aは何にも変わらないけど、時間軸Bは救われたことになる、ややこしいけど」

 何とか説明をしてみた。

 う~んとエリカも考える。で、辿り着いた結論は、

「まっ、女神皇帝を倒せて、記憶も無くならなかったんだ。良かったじゃないか」

 だった。

 楽天的なエリカを見て、クスっと聖子は笑う。

 喜んでいるエリカと聖子を見ているうち、悲しさはあっても護は、つい笑顔になった。

 可愛い護の笑顔を見たエリカの心がドキドキしてくる。こんな気持ち、日本に来るまで護に会うまで味わったことの無かったもの。

 エリカの桜色に染まった顔を見た聖子は、コイツはやっぱりライバルだと、改めて確信した。




 一旦、このような形で収まりました。

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