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魔法陣

皆さまお久しぶりです。半年以上ぶりの投稿となりますが皆さまご機嫌いかがでしょうか。

諸事情により海外に行っていまして投稿が疎かになってしまっていました。

続けないつもりはなかったのですが期間があいてしまったため、すでにチェックしてくださる方も離れてしまったかと思います。恐縮なのですが、沢山の方に読んでもらいたいという気持ちもあり、これから投稿を再開させていただくなかで、新しく別アカウントでの投稿のし直しも考慮しております。

まだチェックして下さる人がいる場合、その方々を裏切る形となってしまうので様子見をしながらこれからも活動していきたいと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。

 オルルは闘気の修練により大きな成長を遂げたが、それは魔力も同じことだった。闘気の鍛錬の間にも休まず魔力を増やすため新しい魔法を使い着実にその総量を増やしていった。特に歩けるようになってからというもの、隙を見つけては書斎に忍び込み本を読むということを繰り返していたので、それからは著しく成長速度が加速していった。

 新しく覚えた魔法は、初めて忍び込んだときに覚えたものとその後に覚えたものの二通りある。しかし、厳選しただけあって、お気に入りや有用なものは前者の魔法の方が多い。

 魔法の鍛錬のためにここ数年で使っていた魔法は五つあるのだが、主に使っていたのは闇魔法の「陽炎」だった。この魔法を多用していた理由は、魔力消費量が多いという理由の他に、オルルがこの魔法の将来性を見出したからだった。

 

この魔法の大まかな特徴は、発動後に自分の等身大の「影」を出し、任意に動かすことが出来るのだ。「陽炎」によって作り出される影は通常のものと違い立体的で、人の形をしている。ただ使うだけなら暗闇の中で使うことでやっと、人が歩いているように見せかけたりできる程度の効力しかないのだが、オルルは魔力を多分に込めるなどの工夫を重ねれば、実体を持たせることが出来るのではないかと考えたのだ。実体を持たせることが出来ればこの魔法の汎用性は一気に高まる。例えば、冒険者になれば人や魔物との戦闘は不可欠だろう。そうなった時に「陽炎」に実体を持たせられていたのなら、援護はできないまでも、敵の油断を誘うことができる。なので、オルルは影に実態を持たせるため、魔法の練習に努めるのだった。

 

 いざ「陽炎」を習得し使ってみると、現実はそう甘くないことを思い知らされた。オルルは予定通り魔力を多く含め魔法を使ってみるなど試したのだが、触れることが出来ないどころか、一向に変化すら起こらなかった。

 何が今までの魔法と違うのだと考察してみるが違いを見つけることができない。行き詰まり、変化が現れないながらも実験と訓練を繰り返していると、オルルはふと、魔法の発動条件について振り返ってみることにした。魔法を発現させるにあたって必要な条件は、魔力と詠唱、想像力の三つだ。しかし、振り返ってみると発動条件がやや容易すぎる。オルルが魔法を知った当初は疑問にも思わなかったが、この三つの要素だけが発動条件だとすると、あまりにもあやふやな気がしてならなかった。当の本人は詠唱を無視しているのにも関わらず。想像した現象を詠唱することによって確立し、魔力を用いて顕現させている。この世界での魔法の魔法書にはそう記されていたが、それが正しければ想像力次第では自由にオリジナルの魔法を考えることが出来るはず。ましてや、魔力の使い方などを工夫しているオルルが魔法のアレンジすらできないのは奇妙だと考えた。

 しかし、考え直してみるとオルルがしていたのは意識的な魔法の再構成ではなく、既存の条件と異なる条件による魔法の発動と変化を偶発的に起こしていただけなのだ。つまり、オルルは自身の意思で魔法をアレンジ、または創造しようとしたことはなく、発動条件を変えたことにより魔法が勝手に変化したのだ。オルルは考察の後、練習方法を変えて実践に移る。自分が思い描く「陽炎」の用途を想像し集中していく。だがこれもまた失敗。

 

 当時はオルルも流石にこれだけで失敗を繰り返すとは思ってはいなかった為、自分の魔法の才能を疑うほどに落ち込んでいた。気分転換にウィリアムの書斎の本を読み、手がかりを探すことにした。

 産まれてから数年が経ち、移動と発声ができるようになってからというもの、ウィリアムに途切れ途切れの言葉で頼み込み書斎に入り込んでいた。両親(特にウィリアム)は親馬鹿丸出しで喜んでいたが、二人の会話を聞いているとやはり不思議な子だとは思っているらしい。年相応の上手く話せない子供の演技などがギリギリのところで二人を誤魔化しているのだろう。

 オルルは本を読み漁っていると気になる内容があった。その内容とは、魔法陣の初歩的な説明とその用途についてだった。魔法陣についてはオルルも前世でオカルトとして知っていたが、この世界には実在していたのだ。読み進めてみるとどうやら魔法陣というものは魔法の発動時に想像の補助をする役割があるらしい。詠唱と同じ役割が被っているが陣内に魔語(まご)と呼ばれる文字を書き記し、魔法という現象をより明確なものとして想像し、発現させることが出来るのだ。この時、オルルは気づいていないのだが、詠唱にも魔語は使われている。オルルはなぜだかこの世界の文字が読めるため、自分が自然に読めてしまっていたが故に、それが魔語だとは気づくことがなかった。

 詠唱のみだと数分かかるような魔法でも魔法陣を用いることで数秒で発動できるようになる。しかし、魔法陣を書くには専用のペンとインク、魔語に込める魔力が必要になり、さらには魔法陣を書く時間もかかるので最終的には詠唱による魔法の方が速くなってしまうのだ。なので、この世界では余程大規模な魔法でない限り詠唱することが主なのである。オルルは魔法陣を早く書けるようになればいいのではと考えたが、魔法陣を書くには魔法の発動と同等かそれ以上に集中力が必要となり戦闘などには到底使えないらしい。それでも、オルルは魔法陣には他にも有用な使用方法があるのではないかという気がしてならなかったが、目先の目標の手掛かりを見つけたので一度見送ることにした。

 そう、その手掛かりこそが魔法陣である。オルルは想像力と集中力を鍛え、無詠唱で魔法を使ってきたが、「陽炎」のアレンジには四苦八苦していた。そこで、魔法陣を使うことにより、オルルが加えたい要素を魔語というより詳細な形でとりいれることで完成させることが出来るのでは、と考えたのだ。

 そうと決まれば話は早い。オルルの父親であるウィリアムは書斎を見る限り、十中八九魔法使いだ。オルルは書斎に専用のペンとインクの一つや二つくらいあるだろうと推測し、玩具を欲しがる子供の振りをしつつ、そのペンとインクを強奪することを決意した。

 

 開けっ放しのドアから書斎を覗くとそこには書類とにらめっこをしているウィリアムの姿がある。多忙な時期は過ぎたのだが、時々ウィリアムはこうして書斎にて書類の整理を行っていることがある。

 オルルはウィリアムに近づいて行き、先ほど読んでいた本の魔法陣を見せる。

 

 「お、おとうさん!これらに?」


 上手に話せない子供の振りをするのはオルルにとっても恥ずかしいのか頬を赤らめながらウィリアムに尋ねる。余談ではあるが、オルルは普通の子供がどのくらいではっきりと喋れるのかを知らないため、どのタイミングで普通に話し始めるか決めかねていた。寧ろ、両親は言葉を覚えるのは早かった割に呂律が安定しないのを不安に思っているとも知らずに 

 

 「やあ、オルル。どれどれ… …ああこれは魔法陣だよ。魔法を使うときに描く絵のようなものなんだ。」

 「そうなの?お、おとうさんも描けるの?」

 

 オルルは専用のペンとインクを手に入れるため、ウィリアムに魔法陣を書かせるように誘導する。


 「ああ、お父さんも書けるよ。こう見えて僕は魔法使いなんだぞー!」 

 「みせてみせて!」

 「少し待っててね。確かこの辺に…」


 ウィリアムはそう言うと書斎の机からペンとインクを取り出す。取り出した道具をオルルに見せると再び優しくオルルに説明し始める。


 「この黒いペンと赤いインクを使って魔法陣を書くと魔法を使えるんだ。」


 そう説明するとウィリアムは魔法陣を書き始めるが、その筆先の動きは遅い。やはり、魔法陣を書くには集中力と時間を要するのだろう。

 円の中に三角形を書いただけの簡易的な魔法陣を書き終えるとウィリアムはその上に手をかざした。おそらくその手には魔力が込められていることは魔法の修行をしてきたオルルにもわかった。


 「灯れ。」


 次の瞬間、魔法陣の中空に火の塊が顕現した。炎が揺らめき暗い部屋を明るく照らしている。

 

 「す、すごーい!!」

 「魔法陣なんて久しぶりに書いたから不安だったけど、ちゃんと発動したね。」


 オルルの興味津々といった様子に自慢げにウィリアムがそういう。だが、オルルが興味を持ったのは魔法自体はなくウィリアムが魔法の発動の際に放った魔語(まご)だった。魔法陣は想像の補助をするとは知っていたがウィリアムが発したのはたったの一言。

 さらに、魔法陣内に書かれている魔語もそう長くない。一文だけである。

 魔法陣の有用性を確認したオルルは魔法陣の習得を目指すのだった。

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