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1.小説=情報配置と読み取りのゲーム

 とある理由で小説めいたものを本当に久しぶりに書いているのですが、改めてフィクションを書いていて気づいたことがあります。


 それは、小説本文と、そこに詰め込まれた情報の読み取りについてです。


 例えば文章の書き方のノウハウ本であれば、目次をたどって目的の章にいきなり飛び、情報が適切に入手できる仕組みになっています。

 一方小説は、頭から順に終わりまで本文を読んで情報を取得するのが本則であり、途中の章からいきなり読み始めても、物語はよくわかりません。なので、読者に対して読んでもらう本文の順序をきちんと考えないと、適切に情報を与えられないことになります。


 小説をお書きの皆さんには自明の理でしょう。


 小説はこの情報のあつかいが少々複雑になっていると思います。

 より正確に言うなら、与える情報の質に差があり、提示するタイミングが変わるといいましょうか。

 マニュアルはどの操作方法も明快になっていて、「これをするには」「これをします」となっていますから、ボタンの配置や機能、操作の順序などをかんがみて、近しいものの順番に並べていけばよく、またそれぞれの情報は独立していますので、どこをとっても均質です。

 が、小説はそうはいきません。

 むしろ明快に知らせてしまうと全く面白くなくなってしまう情報があるからです。


 推理小説でたとえると、小説において提示される情報は

  ・犯人

  ・動機

  ・トリック

  ・証拠

  ・登場人物たち

  ・現時点の場の状況(情景、場所、天候、時間などなど)

 などあると思います。


 これらの情報は作品の中で基本的にはすべて提示しなければなりませんが、それを読者に伝えるタイミングはマニュアル本と違ってさまざま用意していいものです。


 犯人、動機、トリック、証拠はだんだんとわかるように情報を小分けにして配置したり、明確にせず論理的に導かれるよう叙述を工夫しなくては推理になりません。

 倒叙ものの場合でも、犯人は最初に提示されますが、トリックや証拠、動機などはだんだんと提示するべきで、最初に全部わかっていたら推理小説になりません。


 容疑者たる登場人物の容姿や性格、言動、アリバイもしかりで、あとのほうでいきなり紹介されても、読者にはさっぱりです。少なくとも登場したときに、一目見た感じの描写は必要でしょう。そこから感じる印象を読者ににおわせられれば、それほど文字を費やさなくてもいろいろと情報が与えられるはずです。

 どんな情報を見せるか、どのくらいの情報量に抑えるかはしっかり吟味しつつ本文に埋め込むと、読者の頭の中の理解がすんなりいくと思いますし、うまく謎をみせて物語に引き込めます。


 するとやはり、情報の提示というのは、

  ・与える情報は何か

  ・与える順序はどうか

  ・一度にどのくらい与えるか

  ・与えなくても読み取れるか

  ・与えなくても予想がつくか

  ・与えられた情報で誤解させられるか

 といったことを考慮し、情報の相互関係を考えながら文章中にちりばめると、読者の頭に自然と光景が浮かぶのではないか、と思います。場合によっては誤解させてもいいところが非常に特殊だと思います。

 つまるところ、小説は、情報の配置とそれを読み取るゲームのようなものかもわかりません。


 こうして考えると登場人物の描写は苦労します。人間の描写はいろいろありすぎますから。

 服装、性格、しぐさ、セリフ、気持ち、立場、体勢などなど多岐にわたっています。


 とくに台詞は一つもゆるがせにできません。人のしゃべることは本音と建前がありますし、話し方や態度から性格がにじみ出たりします。本当の目的をひた隠しにして当たり障りないことを饒舌に語るかもしれません。

 与える情報、与えない情報、読むと何となく予想がつく情報など、情報の質と量が本当にいろいろあるので、語る台詞を慎重に与えないとだらだらするだけになってしまいます。


 してみると、自分が書いている情報について、どんな質が、どんな量あるのか、レーダーチャートのようなものが作れるかもしれませんね。

 それによって、足りない情報が何なのかとか、削って読者に読み取ってもらう情報がみえるとかできるかもしれません。

 公開できるかわかりませんが、そんなことを考えながら本文を書き進めています。

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