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鬼のエンジ  作者: 白紙 真白郎
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人間の国

エンジが担当する人間の国はドラキア王国という魔物の国ダーバルンの北東に位置する巨大な国である。またダーバルンから見て北西に位置する人間の国はアルバイン帝国といい、その2つの巨大な国より北には更に広大な大地を持つジラウ連邦がある。ジラウ連邦は広大な大地を保有するがその大地は99%が雪に覆われた極寒の土地であり連邦市民は年中分厚いコートを着て暮らしている。寒い大地だけの国のため過去に何度もドラキアやアルバインに攻め込んで土地を切り取ろうとしているが失敗に終わっている。


またドラキアとアルバインもたびたび両国の国境について互いの主張が食い違い争っているのでダーバルンから北の3つの国はそれぞれが険悪な仲である。一方でダーバルンから見て南に位置するアラカン共和国はダーバルン以外の国とは接しておらず周りにダーバルンには住まない魔物や亜人の集落と上手くやっているためどの勢力とも対立はしていない。それどころか極めて良好な関係を築いており1年に何度か魔物や亜人の集落の代表者と国家元首が食事を楽しんだり文化交流を積極的に行っている。


しかしこの4つの人間の国は元々1つであった。遡れば1つになる前に実力者が軍団を率い隣の国に攻め入るという群雄割拠の時代もあったがともかくこれらの国が1つであった時期が過去に存在した。その国こそかつてダーバルンに戦いを挑み一方的な虐殺を受けたダインブルという国であった。当時のダインブル国王は天界に住む超越者たちにダーバルンの魔物たちの怒りを抑え和解をすることを頼み、ダーバルンとダインブル間の不戦の契約を交わし戦争を終結させたが混乱と荒廃に満ちたダインブルという国の寿命はとっくに尽きていた。地方領主たちが武装蜂起し土地を切り取る群雄割拠の時代に逆戻りしたわけである。

その群雄たちもさすがにダーバルンには手を出さなかったが、代わりに同じ国の人間たちが互いに殺し合う時代になった。争いを好まない地方領主たちはダーバルンの南の土地へ移住しアラカンを建国した。徹底的な武力行使で対抗者を次々と滅ぼした地方領主の一族はダーバルンの北西にアルバインを建国した。そしてダインブル王家に初めは味方したもののやがてダインブル一族を裏切り国を簒奪した地方領主はドラキアを興した。武力行使も王国の味方もしない足場のきまらない浮遊した地方領主たちは次々とアルバインとドラキアに土地を奪われ北方の氷の大地へとおいやられ、やがてジラウ連邦を作り上げた。


ここまでがエンジの知っているダーバルン国外の情報である。国交はなくとも外からの来訪者がもたらす情報によりある程度は把握していた。


エンジの目的はすでに述べたように人間たちの実力の査定と危険人物の排除であるが正直なところエンジは人間の国については全くわからなかった。そのためまずは人間に化け人間に混じって生活し人間に溶け込み地理、文化、慣習などを知らねばならなかった。下手に目立つことを避けなくては諜報活動に支障が出ることがわかりきっているからである。


ところでエンジの見た目が魔物の中でも異形であることはすでに触れたが当然このままの姿でドラキアに向かえば入国する前に番兵に発見されるオチである。見た目を人間らしくするという問題はエンジだけではなく他の国に潜入する88将についても難解な問題であった。ヘイザムがアルバインに行きたがったが翼が人間用の服に収まらない上に服を突き破ってしまったのでハーフエルフのジルに「お前はダメだ。そもそも顔がダメだ」と言われているのをエンジは見た。ちなみにエンジはぐにゃりと曲がった角を折れとジルに言われ渋々切り落とした。初めは「帽子で隠す」と言い張ったエンジであったがそもそも人間用の帽子を被ると角で帽子の形が歪んだためジルの言うことを聞かざるを得なかった。ちなみにエンジの着ている人間用の服はヘイザムが翼で突き破り背中に穴が2つ空いたものをジルが縫い直したものである。


「だから『ヘイザムお前は着るな!』と言ったんだ・・・」


また肌の色については人間の肌色に近い染料を塗ることで誤魔化すことにした。しかし目についてはどうにもならず「目をつぶって行動しろ」とジルに無理難題を言われたが生まれつきということにした。


「安心しろ!人間は数が多いから眼球が黒いやつの1人や2人いるだろう!たぶん!」


と王のサキュラは言ったのでエンジはそれもそうだと思いダーバルンを発ったのだ。ちなみに現在人間の国ドラキア王国にエンジは向かっているが到着してすぐ人間に眼球が黒い者はいないという現実を知ることになる。


「眼球が黒い人間がいるといいな・・・」


とエンジは呟いて歩いているとドラキア王国の一部である城塞都市が見えてきた。

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