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鬼のエンジ  作者: 白紙 真白郎
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蹂躙

驕りのあるフイナたちがダーバルンに挑んだ。フイナたちはここまで様々な国々を特別苦戦することなく、支配下においてきたのだから驕りがでてくるというものが人情であろう。それにダーバルンという魔物の国はかなり小さい。フイナたちの支配領域の穀物の生産高を比べてもダーバルンのそれは10分の1にも満たないだろう。ダーバルン周辺の土地は特別肥えているわけではないのでおそらくダーバルン国内の生産高もたかが知れている。だがそれでもこれまで手を出さなかったのはダーバルンの内側がどうなっているのか全くわからなかったからだ。どのような魔物が住むのか、言葉は通じるのか、何をたべるのか、気性は荒いのか、全く情報がないので不気味でしかなかった。ただフイナたちにもわかることはダーバルンの魔物たちが国外に対し一切の興味を持たないことである。戦争に明け暮れるフイナたちの支配領域はどこも新しい支配者の到来で不安が渦巻いており、統治ができているとは言えなかった。それに被支配者たちはフイナたちにより奴隷同然の扱いを受け恨みもあった。ダーバルンが人間の土地を欲しがるのであれば、この動乱を逃さず切り取るべきであったがそれを行う様子はない。




フイナたちにしてみればダーバルンの土地が肥沃ではないので未知数の敵にあえて挑む必要はなかったのだが、ダーバルン周辺の国に住む人間たちはダーバルンの魔物たちに怯える様子を見せているし、人心を掴むにはうってつけの相手だとフイナたちは判断した。フイナたちは遥か東方からやってきたのでかつて、このあたりに存在した古代国家が魔物に散々に敗れ、没落していった伝承を知らなかった。また魔物はフイナたちの草原にも時折出現したが、どれも小物で、取るに足らない雑魚ばかりであったのでダーバルンの魔物も似たようなものだろうと考え侮った。




これまで不敗であったフイナたちは支配した土地から兵を駆り出した。その軍勢は30万を超える。そのうち東方の草原からやってきたフイナたちはたったの1万である。フイナはほかにもいるが戦闘地域が多いのでそちらに割いている。フイナの軍勢はダーバルンとの国境付近に軍陣を構えた。フイナたちを察知したダーバルンもまた軍勢を繰り出した。その数は8000である。軍を率いたのは現在ダーバルン王のサキュラである。このときは王ではなく王の臣下であった。この8000の軍勢にはサキュラの子飼いの魔物が幾人かいる。悪魔のアーニマス、バードマンのヘイザム、エルフのジル、ラミアのスタンツ、鬼のエンジがいた。8000の軍勢の内訳は以下の通りである。バードマン800、オーガ500、トロール500、エルフ300、コボルト300、リザードマン300、ミノタウロス100、ゴーレム200、オーク1000、悪魔50、スケルトン3950である。バードマンたち800は2つにわけられる。500が空高くから弓や魔法で攻撃する。300は敵陣の偵察と敵の補給を絶つことが任務だった。オーガ、トロール、ミノタウロスは攻撃力が凄まじく、敵を恐怖させることこの上ないので先陣へ、ゴーレム、エルフ、コボルト、オークは先陣の背後で弓矢と投石を行う。悪魔50は伝令。リザードマンはサキュラの元におり、スケルトンは側面から迫り、敵の脇腹を脅かす役目を与えられた。サキュラの子飼いたちはエンジを除きサキュラの護衛をしている。エンジは無理を言って先陣に混じっている。




余談だがスケルトンたちには自我がなく、命令を受けなければ何もできないモンスターである。彼らスケルトンは人間の国では廃れた墳墓から自然発生するが、魔物の国ダーバルンでは召喚により使役する。サキュラは召喚の魔法を使うことができないのでスケルトンたちを生み出すことができない。今回のスケルトンたちはノーライフキングのフィアニクスにより派遣された。



「ワシの骨どもも昂っておる。存分に使ってくれい」



とフィアニクスは言っていたがスケルトンに自我はないので昂るということはない。ただ命令すればそれっぽく行動はしてくれる。



さて、ダーバルンの軍勢は籠城をする気などさらさらないようで、フイナの軍勢に向き合ったのでフイナたちは驚いた。



「見たこともないような異形たちだが、どうやら考え方も異なるようだ」



と思わざるを得ない。ところでフイナたちはダーバルンの軍勢を観察すればするほど恐怖を覚え始めた。前線に立つオーガやトロール、ミノタウロスの如何にも精強そうな見た目にひるまざるをえない。彼らそのものも恐ろしくあるが彼らの持つ武器もまた背筋が凍るものである。人の背丈ほどある大剣、斧、こん棒を構えている。恐れおののくフイナの兵は逃げようとするものもいたが、その都度指揮官のフイナたちは斬って捨てた。しかしフイナたち自身も正直なところ怖いのである。



「なんなんだ・・・あいつらは・・・」



「こんなバケモノがいるなんて・・・」



「祖霊よ・・・お守りください」



草原を出て以来、これっぽっちも感じなかった生命の危機をフイナは感じていた。目の前にいるまだ弓矢を交えてもいない相手に恐怖し、戦場にやってきた自らの運の悪さを嘆いた。



太陽の陽が最も高くなるころダーバルンの軍勢は進軍した。前線のオーガ、トロール、ミノタウロスを合わせた600がフイナの軍勢に突進してくる。まだ始まってもいない戦闘にフイナの軍勢は士気が下がり、すでに敗戦の雰囲気がただよっているが指揮官たちフイナは己と兵を鼓舞する。



「生きて帰りたいものは剣をとれ!」



その叫びに目が覚めたフイナの軍勢はは向かってくるオーガ、トロールよりも若干足が速いミノタウロスたちに対し槍衾をつくり迎え撃つ。両者の距離が凄まじい早さで縮まっていく。最前線のフイナ兵の顔は真っ青で泣きそうな顔である。その男だけではなく、その両隣もさらにその隣も同様であった。



そうしてミノタウロスたちがフイナの槍衾に突っ込んだが、フイナの槍はミノタウロスの肉体傷1つつけることなく爪楊枝が折れるかの如く折れた。突進を全身に受けたフイナ兵たちは地面に倒れるころにはすでに息はない。ミノタウロスはそのまま手にある巨大な斧で次々と薪を割るかのように人間を縦に、横に真っ二つにしていく。ミノタウロスに若干遅れてやってきたオーガ、トロールたちも大剣や棍棒でフイナの軍勢を磨り潰していく。蹂躙は始まったばかりである。


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