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鬼のエンジ  作者: 白紙 真白郎
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決闘

闘技場の控室に案内されたセリムは兵士に装備を渡された。「それを装備して戦え」ということであった。ミスリル製のプレートアーマーと兜にタワーシールド、ロングソードを装備したセリムの姿に見張りの兵士たちも惚れ惚れするような勇ましさがあった。罪人となった今でもセリムを知る兵士たちの心には彼の勇気と力量が刷り込まれていた。全ての武具が魔法の力を宿しており、それは通常のものよりもダメージを軽減したり、魔法のダメージを軽減したり、威力を高めることができた。セリムのロングソードは雷の力を宿しており、剣を鞘から抜くと雷光が剣の周囲を走る。余談だが魔法の力を宿した武具を持つことができる者はドラキアにもジラウにもアルバインにもほとんどいない。手にすることができる者はよほどの富を持つ武器コレクターや高名な騎士、そして魔物と戦わされる剣闘士だけである。




何故、剣闘士にそのような有利な武具を持たせるかと問われれば理由は簡単であった。あっさりと魔物に殺されては民衆の熱気は冷めてしまうからだ。誰しもが人間が魔物と戦えば人間は殺されると予想し、確信している。そこであえて人間側を強化することにより「勝てるはずのない魔物」に勝てる可能性が少しでもあるよう錯覚させ、更なる観客の興奮と熱狂を誘うことが狙いである。また帝国の闘技場ではこれまで何度か人間対魔物の見世物があったが勝った者はいなかった。




定刻になりセリムはオーガと戦うべく歩み始めた。そしてスタジアムに出た時、大空が初めに目に入り、次に多くの観客が目に入った。多くいる観客は皆が皆セリムに罵声を浴びせた。「卑怯者」とか「俺たちを騙しやがって」とか「死ね」とかそんな言葉ばかりであったがセリムは絶望していなかった。




セリムは信じれば道が開けると思うような楽天家な一面があった。今回も最も獰猛な目無しのオーガに対し勝機があると考え、罪人の身分から脱却することを望んでいた。述べることを忘れていたが、闘技場の剣闘士は功績を残すと莫大な賞金と過去の罪を不問にしてもらえるという制度があった。対魔物であれば1度の勝利で自由と富が約束された。セリムは富に目を奪われるような愚かな男ではなかったが自由は望んでいた。自由になったらもう一度自らの部下と共に兄に仕える機会を願おうと考えていた。それほど幼少の教育が根を張っている。しかし必ず帰参を許されると思うセリムは配下がほとんど殺されていることを知らない。




戦いの時がきた。獰猛な獣や魔物は剣闘士の住む地下よりもずっと深い階層に閉じ込められており、剣闘士と戦わせる時は人力のエレベーターで檻ごと釣り上げ、スタジアムに現れる。大変重量のある目無しのオーガを釣り上げるため兵士20人が人の手には余るほど太い縄を引っ張った。ちなみにこの作業、時に死人が出る。運が悪く檻から手を伸ばした魔物に捕まれ殺されてしまうのである。




檻ごとスタジアムに姿を現した目無しのオーガは腹を空かしていた。そのためただでさえ獰猛なこのオーガは観衆の骨にまで響くような唸り声を上げた。この異形のモンスターを見てもセリムは驚かない。むしろ普段見る機会の少ないオーガを見て「オーガとはこういうものだったのか」と関心している。




スタジアムに降ろされた檻の鍵を開けるという命がけの作業は罪人が行うことになっている。鍵開け役の罪人は中年の痩せた男であった。長い地下の生活のせいか心身に支障をきたしており集中力をかいていた。男は兵士に渡された鍵を持ち檻に向かった。檻の中には唸るオーガがおり、恐怖で失禁しそうであったが何とかオーガの体臭と恐怖を乗り越え鍵を開けた。鍵を開けることばかりに気をとられ逃げるのが一瞬遅れた。オーガの知能は人と変わらない。鍵が開いた瞬間すぐ走り出せば間に合ってであろうが集中力をかいた中年の男は出てきたオーガに捕まった。どうやらセリムより先に死ぬのはこの男のようで、腹を空かせたオーガは両手で男の胴体を半分に引きちぎり足から食べた。頭から食べないのは脳みそが美味しいことをオーガは知っており、また人間は半分になってもすぐには死なず悲鳴をあげて自らを楽しませることを知っていたからだった。




さて空腹が少しおさまったオーガはセリムの存在を認める。セリムも剣と盾も構える。じりじりと目無しのオーガはセリムに接近する。目がないオーガだが嗅覚が発達しているためセリムの居場所を特定することができる。少しずつオーガとセリムの距離は縮まっていく。セリムは恐怖に飲まれるような様子は見せずタワーシールドを握り直す。そして両者の距離がもうすぐそこというまでになったとき目無しのオーガは突進した。オーガの突進を盾で受け流すのは不可能であり、それをやろうとすれば手首がどうなるかわからない。セリムはヒラリと突進を躱し、魔法の力が宿った雷のロングソードをオーガの腰に突き立てる。すると目無しのオーガは苦しむように叫び怒りを露わにする。




緊迫した戦いが始まり観衆のボルテージがあがる。「そこだ!」とか「いいぞ!」といった叫びが飛び交う。怒るオーガの攻撃はどれも大振りになり聡いセリムは落ち着き、慎重に躱し、反撃を加える。オーガが攻撃しセリムが躱しカウンターを行うという流れを20ほど繰り返した。オーガの足腰はすでに血まみれであるが動きは鈍らずセリムに殺気を放っている。一方でセリムはここまでの自らの攻撃がオーガに対し効果が薄いことを感じ、致命的な一撃を加えなければならないと考えていた。





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