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鬼のエンジ  作者: 白紙 真白郎
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王国将軍

グラント=ワインバーグという貴族の男がドラキア王国建国に貢献した者の子孫で王国の現状に強い不安を抱いていることは既に述べた。グラントは長身で細身の男で昔は美男と誰からももてはやされたが年齢が50をこえた現在では疲れや苦悩のせいか生気のない顔つきをしている。目の下は黒っぽくなり、若干頭髪が薄くなっている。性格は臆病で、物事に対しては慎重な男であった。果断ができる男ではなく自然事に対し遅れをとることもしばしばあった。だが彼は自身は臆病であることを知っていた。彼には息子が1人おり名をハーバル=ワインバーグといった。年は35であった。息子はグラントとは何もかもが正反対であった。まず彼の体躯はがっしりとし筋骨隆々であった。顔つきも精強そうで目が大きく鼻筋が通っており顎が太かった。性格は勇猛で激情家であった。怒る時は火山が噴火したかのような苛烈さで怒るが泣くときは誰よりも涙を流し吠えた。グラントは時々この息子を見て「本当に俺の子か」と思うことがあるが若いころのグラントに似ているところがあったので彼の子であろう。ハーバルはドラキア王国の5人の将軍の1人であった。また彼は数々の功を立て最年少で将軍になった。そのため誰しもハーバルを抜群の軍才を持つ男と認め他の将軍たちもそう考えた。





ドラキアの5人の将軍はドラキアの地方の司令官として王国の各地の城に居を構えている。ハーバルも当然将軍の1人として城塞の主として君臨している。ハーバルの担当する地域はジラウ連邦との国境付近であった。このあたりの土地はマーシュというところでかなり冷える土地であった。マーシュには1、2年くらいに一度ジラウ連邦が侵攻してくる。将軍を任命される前のハーバルはここで攻めてきたジラウ軍を散々に叩きのめし追い払ったことがあった。またあるときは小部隊を率い、攻め込んできたジラウ軍を奇襲し壊乱させ指揮官を討ち取ったこともあった。ジラウ軍が攻め込むたびハーバルは並々ならぬ軍功を立て地位は高くなっていった。そしてとうとう将軍になった時には攻め込んできたジラウ軍の将軍を討ち取る大功を立てた。ドラキア王はこの激情家の若き男を大層気に入り、他の将軍以上に褒美を与えるほどであった。ハーバルは戦闘が始まると火を噴くかのような勢いをもって兵を叱咤し前進させ、自らも通常の馬よりも一回りも二回りも大きな軍馬に乗り剣を振るい敵陣に突進し敵将の首を挙げること多々あった。また敵を憎悪すること甚だしく、降伏したジラウ兵を悉く殺した。しかし味方のドラキア兵が死ぬとハーバルは名も知らない兵のため声を上げて泣いた。そのためハーバル配下のドラキア兵たちは彼を鬼神と思いつつも慈悲深き将軍として崇拝したので、配下の兵は皆彼のために死に物狂いで剣を振るい、前進し、敵に向かって吠え、死ぬことを躊躇しなかった。これがハーバル軍団の強味であった。




ところでドラキアには他に4人の将軍がいる。エドワード=アクセル、レオ=イスカルオ、ニッキー=ヒューズ、ジャーメイン=ブライスである。エドワードは初老の男、レオはハーバルより10歳ほど年上の男、ニッキーはレオと同じくらいの年の男、ジャーメインは既に齢80の男であった。皆、年も性格も違うが一応ドラキア王国の実力者であった。エドワードはハーバルやレオのような猛将ではなかったが常に冷静に状況を分析することに長け、兵から信頼された。レオはハーバルに負けないほどの勇猛さでハーバル同様兵から頼りにされた。ニッキーは物静かな男で狡猾でありレオやハーバルは性格上ニッキーを好かなかったが計を用い敵を欺き勝利することができた。ジャーメインは皆から尊敬された男だった。長年戦場に身を置いているため彼の経験値は凄まじく、百戦錬磨の将であるため兵から信頼された。エドワードはダーバルンに最も近い都市マッドネスから少し離れた土地にある要塞を拠点としており、レオとニッキーはアルバイン帝国と王国の国境付近の城塞をそれぞれ拠点とした。ジャーメインは王都に残っているがジャーメインの伝説は国民に知らない者がいないほど人気で彼が王都にいるだけで民衆は「ジャーメイン様がいらっしゃるなら王も王都も安泰だ」と安心した。ジャーメインの戦歴だけがこのような現象をつくりあげているわけではなく彼の温和な性格も要因であった。この百戦錬磨の穏やかな老将は時々街を歩き、民に自身の姿を見せ安心させてまわった。




グラントの話に戻す。ドラキアの行く末が心配で仕方がない彼も息子以外の4人の将軍のことを思い出し自らを安心させようと試みるが結局臆病な彼はダーバルンが恐ろしくなってしまうのであった。ダーバルンとの国境の向こうには骨まで震えさせるほどの悍ましい魔物が住んでおり逆鱗に触れればドラキアなどあっという間に滅ぼされてしまうという妄想が頭を離れなかった。彼は魔物そのものも恐れたが一番恐れたのは王家の血筋が途絶えることであった。彼は頭がおかしくなるのではと思うほど頭脳を稼働したが妙案は思いつかなかった。ダーバルンの魔物が弱弱しいから侵攻してこない、というのであれば構わなかったが人間に興味がないから侵攻しないとなるとわけはちがってくる。それに魔物はダインブルを破滅させる原因をつくっているから弱いわけがなかった。どうしても魔物に勝てる想像というものができないグラントであったがいっそのこと敵にしなければいいのではないかと思うようになっていった。









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