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鬼のエンジ  作者: 白紙 真白郎
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王都と会議

ダーバルンの王都はダスビルという。人口はおよそ40万。とても賑やかな都市で魔物たちがいたるところで様々な商いをし生計を立てている。あるものは武器屋を、あるものは酒屋を、あるものは飲食店を営んでいる。ダーバルンの王はこの王都にある宮殿で暮らし王政を行っている。エンジは王の直参なので宮殿近くの屋敷に寝泊まりをすることになっている。


この日、エンジは宮殿において国内外の危険に対処すべく王と直参のみで会議をする予定であった。商いをする魔物の威勢のいい掛け声が通りに満ちており、いつも通りのにぎやかな王都であったがエンジは歩いて宮殿に向かう間、周りの様子とは対照的に晴れない気持ちでいた。


彼は歩きながらその他の直参や地方の魔物の諸侯について考えていた。ここでいう王の直参は近衛兵という王に自動的に与えられる兵ではなく王個人の子飼いの者たちであった。直参は全部で88の魔物で、いずれもダーバルンでは類まれなる実力者である。巷では「サキュラ88将」と呼ばれている。サキュラとはこの国の王である。


サキュラの種族は鬼であり、彼自身もそこらの魔物では歯が立たないほどの豪傑だったが現在は高齢のため王の任期を終えたら隠居する腹である。


ちなみにダーバルンの王は500年に一度選びなおされる。国内の様々な種族の長が闘技場にて決闘を行い勝ち抜いた者が王となる。また種族の長も多くの族では戦いによって決める。なので「この国の王になる魔物はこの国で一番強い」ということになる。単純な選び方ではあるが魔物たちの多くは力ある者を望むため弱き者が王となることを良しとしないのだ。


また王を補佐する大臣たちはその他の種族の長が務めることとなっている。王や種族の長となれば何不自由ない生活が約束されている。欲しい衣服、食べ物、屋敷、馬車、剣・・・なんでも手に入れることができる。だからといって弱き者は貧乏というわけではなく種族の長は同族の者を隅々まで気にかけなければならないという掟があるので中流の生活を維持することは可能である。


いつの間にかエンジは宮殿に到着していたことに気づく。中に入り大広間を通り静かな石造りの廊下を歩いて会議室へと向かう。宮殿なので外のように喚き散らす輩もおらず、しんとした空気のため重い気分のまま会議室まで歩く。しばらく歩くと会議室が見え、扉の前には近衛兵が2人立っている。近衛兵の種族はオーガであり、その背丈はエンジが見上げるほど高く黄金に輝くプレートアーマーを身に着けている。きっと人間が見たら腰を抜かすだろうとエンジが考えているとそのうちの1人がエンジに声をかけた。エンジはそれに手を振りながら応える。


「エンジ様。お待ちしておりました」


「ご苦労・・・皆そろっているか?」


「はい。王もその他の方もすべて」


近衛兵が扉を開けエンジは入室する。真っ先にエンジに声をかけてきたのは王のサキュラであった。サキュラは陽気で人懐っこく誰にでも声をかけ皆に気を配る親分気質の王であった。勝手に街に出て買い物をしようとしたり空き地で遊ぶ子供に混じったこともあり近衛兵や使用人たちも「あの王様は気軽にあちらこちらに歩き回るから困る」と話しているのをエンジは聞いたことがあるが、そんなところをエンジは気に入っていた。


「お待たせ致しました。我が王よ」


と・・・深々とエンジは頭を下げる。するとエンジ以外の87将の1人がエンジに向かって声をかけた。


「随分遅くにやってくるのですね。貴方は。直参としての自覚がないのではありませんか?」


このエンジに声をかけた男はアーニマスといい種族は悪魔である。腕っぷしというよりは智謀を用いることを得意としている。人を騙し楽しむ悪魔らしい側面が飛びぬけているのでサキュラに重宝されている。


普段であれば好戦的な鬼のエンジはアーニマスに対し「うるせえ!」や「この頭でっかちが!」とか罵るところなのだがエンジが口を開く前に会話に割って入った人物がいた。


「やめろ。王の御前である・・・喧嘩は・・・外でやれ」


彼はヘイザムといい。種族はバードマンで人間のような身体に鷹の頭が付き背中に鷹の羽が生えている。余談だが蛇の頭を持つ蛇人や犬の頭を持つ犬人、猫の頭を持つ猫人、バードマンは体は人間のようなものなので衣服や鎧を身に着けている。決して全裸で出歩いているわけではない。彼の名誉のためここに記しておく。以上余談。


ヘイザムが仲裁し会議を始めようと事を運ぼうとしたのにも関わらず空気を台無しにした人物がいた。


「いいぞ!もっとやれ!」


王のサキュラであった。彼はどこか空気が読めないところがあった。またそれもエンジのお気に入りポイントなのだが。


「いいえ。よくありません王よ」


ここでまた紹介する人物が増える。エルフのジルである。エルフといっても彼女は悪魔とエルフのハーフであり、エルフであった彼女の母親は物好きであったのか理由は定かではないがダーバルンに移り住んで悪魔と結婚し彼女を生んだ。彼女ははっきりと意見を言うタイプで王のサキュラにも遠慮せず具申するほどで88将のなかでも恐れられる人物の1人である。ジルは続けて述べる。


「王よ。今日こうして集まったのは国内外の危険分子への具体的な対処の検討などを決定するため・・・日が暮れてしまいます」


「うぐ・・・悪かった・・・悪かった・・・ジル。では会議を始めよう!」


ジルに叱られたことがショックだったのか一瞬呆然とした様子が見えたが2秒後には気持ちを切り替えているサキュラの立ち直りの早さをエンジは気に入っていた。



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