いざ、帰宅!
「はぁ、はぁっ。はぁ。死ぬぅ。」
「先輩、大丈夫ですか?」
ようやく着いたのは彼女の家。走っている時に、小夜ちゃんが案内してくれた。
「お茶でも飲みますか? 今日も親帰って来ないですけど、私でもお茶くらいは入れられますよ。」
「え!? おうちの人、帰って来ないの?」
「はい。まあ、いつもの事ですけどね。」
小夜ちゃんは少し寂しそうに言う。聞いちゃいけなかったっぽい。やっぱり、親が毎日いないって結構寂しいよね。私だったら怖くて寝れなそう。
「そうだ! うちに泊まりなよ。ご飯もごちそうするから。」
「え。いいんですか?」
「うん! もちろん!」
「では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
女の子1人は危険だし。まぁ私が怖いってのもあるけど。疲れたし、うちまでは歩いて行こうかな。ゾンビ達もいなそうだし。そんな遠い訳じゃないし。
「よーし。じゃ、ついてきて。」
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「お母さん。ただいまー。」
また鍵開いてる。一応、住んでる町で大変なことが起こってるんだから鍵くらいすればいいのに。
「ほら、入って入って。」
「は、はい。」
ま、いっか。友達が泊まるくらい許してくれるよね。そういえばこの辺はゾンビがいないけど、やっぱり学校のまわりだけだったのかな。
とりあえず、許可を得なきゃいけないから、台所にいこうかな。
「お母さーん。今日家に友達泊めてもいいー?」
「お邪魔しまーす。」
玄関に靴をほっぽって家に入る。
「う゛う゛う゛う゛」
聞き覚えのある声。
「うわっ。なにこの臭い。」
「せ、先輩!」
「う゛う゛う゛う゛う゛」
強烈な臭い。思い出したくない。
「先輩! 危ないです!」
台所のほうから5体くらいのゾンビの群れが襲ってくる。私は小夜ちゃんの手を掴み、ゾンビが来ていない方の道を通って階段に向かい階段を駆け上がる。
「先輩! この家にいたら危ないです!」
「いいから黙って付いてきて!」
「っ! …はい。」
小夜ちゃんごめんなさい。でも今はこれしかできないから。
部屋に駆け込み、段ボールに入れてある電動ガンを取り出す。私が愛用しているかなり威力のあるやつでアサルトなんとかってやつ。マガジンにローダーで弾を流し込む。時間が無い。あいつらもゆっくり歩いてるけど、もうそろそろ階段を上ってきてもおかしくはない。
「行ってくる。」
「先輩! 駄目です!」
小夜ちゃんが止める。でも、行かなきゃ。
私は部屋を飛び出し、階段に向かう。ゆっくりと階段を上ってくるゾンビ達に銃口を向け、一発撃ちこむ。ゾンビは、唸り声をあげ後ろに吹き飛ぶ。後ろの奴らもドミノ倒しになって倒れていく。
おかしい。咲綾みたいに消えない。
「嘘。やだ。」
どうしてだろう。やっぱりエアガンじゃ駄目なんだろうか。そんなはず…ない。思い出せ思い出せ思い出せ。咲綾はあの時、どうしてた?
「…光。」
そうだ光だ。光に向かって撃てばいいってことだよね。動いているものを狙うのは的を使って練習してるからきっと大丈夫。レーザーサイトの光をつけて一番前にいる奴の光っている肩を狙う。
「う゛う゛ぁ」
唸り声を上げながらゾンビが光となって散っていく。息を止めて他の3体も倒して行く。残り1体。
「え?」
お母さん。
どうしよう。やっぱり私には…殺せない。どうしたら…。
「はぁっ。はぁ、はぁっはぁ、はぁっ。無理…。出来ない…。」
「でも…ごめんなさい。」
今、母を殺した。
でもたった5発で5体も倒せた。今までは家でしか練習してなくて、サバゲーは親が許可してくれなかったから動物に向かって撃つのは初めてだった。それにしては結構な好成績なんじゃないかな。
人を殺すってかなりショックを受けるものだと思ってたけど…思ってるより落ち着いてる自分が怖い。
「先輩! よかった。大丈夫でしたか?」
「うん。大丈夫。」
「…。」
「あのね。お母さん、殺しちゃったんだ。」
「…はい。」
「ごめん。こんなこと言っても仕方ないよね。」
「…。」
「夕ご飯、食べよっか。」
「はい。」
確か倉庫に缶詰があったような気がする。うちには災害とかが起こった時用に缶詰とか、非常食とかが結構ある。今日はそれでいいかな。いや、でもまだ明るいし買いに行ったほうが…。でもなんかこの西谷淵町以外のところは大丈夫な気がする。女の勘ってやつかな?
やっぱり小夜ちゃん元気ないな。先輩なんだからしっかりしなくちゃ。
「よーし! 小夜ちゃん。ショッピングに行こっか。」
「外に出るんですか!?」
「うん! 大丈夫大丈夫! 心配しないでよ! 多分ゾンビ達いないから!」
「…はい。わかりました。暗くならないうちに行きましょう。」
小夜ちゃんはにこっと笑う。やっぱり小夜ちゃんは笑顔が似合うなぁ。