新しい友達。
「おいおい。あんた、友達なんだろ?」
知らない人の声。
「とぉっ。」
声の主は青い髪のショートカットの女の子。持っていた竹刀を、目にもとまらないような速さでゾンビに振り下ろす。
びゅんという音と共にゾンビは光になって消える。
「え?」
「ちょっと待ってな。お前ら全員天国連れてってやるからっ。」
まわりにいたゾンビ達までどんどん倒していく。すごい。 けど、夕は死んだ。この目の前にいる少女が。今、私の目の前で。
人がどんどん死んでいく。怖い怖い怖い怖い。みんなさっきまで一緒の教室で一緒の授業受けてた仲間なのに。
「なんで? なんで殺したの? 大切な友達だったのに! ねぇ、何でなの!?」
恐怖が怒りに変わってくる。
「そうでもしないと、あんたが感染しちゃうからね。あんた、この状況まだ分かってなさそうだったし。この校舎にいる人間は大体感染して…。」
「私は夕と一緒に死ねるならそれで良かったのに! やだ…。やだよ。こんなの。」
少女は私の手を握る。冷たい。
「あたしだって怖いよ。日本中、いや、世界中がこんな事になってるかもしれない。でも今はあたしの言う通りにして。ほかにも未感染者がいるかもしれないし。」
少女は私の手をギュッと掴み走り出す。
「そうだ。自己紹介がまだだったね。あたしは1-Aの一ノ瀬咲綾。あんたは?」
咲綾はすごいスピードで走ったまま尋ねてくる。
「私は2-Bの時雨葵。葵でいいよ。」
「えっ!?先輩?タメ口だったわー。」
咲綾は「誰かいるー?」と言いながら、教室の中を確認していく。中にはゾンビが沢山いる教室もあって足がすくみそうになる。でも咲綾がいるから何とか走れる。
私はよく小学生に間違われる。まぁ身長やら胸やら色々小さい所があるから。ってやかましいわ!
「ううん。いいよ。タメ口のほうがいいし。っていうか足速いって。」
「もうちょい頑張れ~。1階にはいなかったから、2階探すよ!階段あるから気を付けてー。」
と、テンポよく階段を駆け下りる。何故彼女はこんな状況なのにこんな明るくいられるのだろうか。
「誰かー。いるなら返事してくれー。」
「誰かいるの!? 助けて! いや…ダメ! やめて! 嫌!」
「奈桜!? 血が!」
葵は、叫び声が聞こえた途端に、声が聞こえた教室に飛び込む。
「やめろ! 近づくな! 早く逃げろ!」
「わかった。小夜も早く。」
「でも…。奈桜さんが。」
「お前ら早くしないと感染するぞ!噛まれた奴はもう駄目だ!」
「痛い…。助けて。ヴ、ヴァ」
「早く行け!」
「小夜。行きましょう。」
「は、はい。」
背が高い黒髪ロングの少女と背が低い白髪の少女が走って出てくる。
「あなた、生きてるの!? 生存者が二人もいるなんて。」
黒髪の子が話しかけてくる。
「うん。よかった。」
本当に良かった。少し希望が見えたかもしれない。
「大丈夫か?葵。」
葵が教室から出てきて言う。
「うん。」
「友達、助けられなかった。ごめん。」
「ええ。助けてくれてありがとう。 これ、どうなってるのかしらね。」
「分かんねぇ。でも、絶対許せないよな。こんな沢山の人が死んでいくなんて。あいつら何も悪くないのに。」
「とりあえず、今日は帰ったほうがいいんじゃないかしら。あいつらはそんな攻撃力をもってるわけでもないみたいだし。家にいた方が安全よ。」
「で、でも、怖いです。」
白髪の小さい子が言う。
「そうね。誰か一緒に帰ってもらったら? どの方面なの?」
「だっ、駄菓子屋のほうです。」
「あたし、公園の方だわ。」
「私も公園の方ね。」
白髪の女の子はふるふる震えてもう泣きそうになっている。
「わ、私、駄菓子屋の方だけど。」
「ほっ、本当ですか?」
うぅ。面倒くさい事になってしまった。でも、この子が死んじゃうのも嫌だし。
「うん。一緒に帰ろうか。」
という事で、なんかこの小っちゃい子と一緒に帰ることになってしまいました。