新しい命
ここ三日間。
畑の作業に集中していた。夏草を抜き取り、畑の隅々まで耕して、冬野菜の種をまく場所を作った。
今日は、大根、ほうれん草、葉レタスの種をまいてから仕上げに水やりをした。
昼前。
サオリさんからメールが届く。
『赤ちゃん、まちがいありませんでした』
サオリさんは自転車でミケを連れ、少し離れた動物病院に行っていたのだ。
おめでたは来月早々だという。
ということは、十月はじめには赤ちゃんの誕生である。
さっそくノラに伝えた。
「赤ちゃん、まちがいないってよ」
「そうか!」
「やったじゃないか」
「ああ……」
ノラは感慨深そうである。
サオリさんは動物病院からの帰り、今後のことを相談にと我が家に立ち寄った。
自転車を玄関先に止めてから、荷台の段ボール箱からミケを抱いて出す。
「ノラさん、赤ちゃんができてるって」
ミケがノラのもとに走り寄る。
「やったな」
「ノラさん、おめでとう」
サオリさんも祝福する。
「へへへ……」
ノラはなんともうれしそうだ。
「でも、ボスがいるので……」
ミケが浮かない顔をする。
心配するのも無理はない。
サオリさん宅には大の猫嫌いがいるのだ。
オレも心配である。
「お父さんの方は大丈夫ですか?」
「ミケ、追い出されるかも」
「それじゃあ」
「ですから出産のときは、ミケは動物病院にあずけようかと」
「それで、生まれたらどうするんです? 子猫を飼うなんて許してくれないでしょう」
「そうなんですが」
今はとりあえずそうするしかありませんと、こまっているようすである。
「よければボクがあずかりますけど」
「でも、ご迷惑じゃ?」
「迷惑だなんて。ミケの子は、ノラの子でもありますので」
子猫の父親はノラである。ということは半分、主人のオレにも責任があるということなのだ。
相談の結果。
お産が近づいたら、我が家でミケをあずかることになった。
ノラにネコマンマをこしらえてやる。
「ノラ、家族が増えるな。そしたら、オレもオマエも大変になるぞ」
「迷惑をかけるな」
ノラはめずらしく低姿勢である。
「それでも、めでたいことだからな」
新しい命が芽吹いている。
しかし……。
猫は多産である。たぶん五匹とか六匹とか生まれるのだろうが、みんな飼えそうもない。
――どうしたもんかな?
新たな悩みがまたひとつ発生した。




