誕生日プレゼント
コスモスの花がちらほら咲き始めていた。
菊もつぼみをつけている。
咲いたら、一番に祖母に見せてあげようと思う。
コンビニのバイトは、左腕の治療もあって事故の翌日に辞めさせてもらった。
怪我の方だが……。
自転車に乗ってもたいした痛みはなく、工務店に勤め始めるまでには包帯がとれそうである。
この日の午後。
病院帰りに商店街へ立ち寄って、サオリさんの誕生日プレゼントを買った貴金属店で、つぶれたケースを新しいものに交換してもらった。それからホームセンターまで足を伸ばし、ダイコンとほうれん草と葉レタスの種を買った。
一週間、時間が十分にある。
畑を全面的に耕して、そこに冬野菜と春野菜を植えようと考えたのだ。
ノラが玄関先で出迎えてくれた。
「おい、メシをくれ」
「もう、そんな時間か?」
スマホを見るに五時前で、夕メシにはまだずいぶん時間がある。
「早くないか?」
「腹が減ってるんだ。オヤツがなかなか獲れなくなったんでな」
「オヤツって、トカゲのことか?」
「トカゲもだが、ネズミにカニ、それとモグラにカエルとかな」
「オマエ、そんなもの食ってたのか?」
「どいつもうまいぞ。アンタも食うなら獲ってきてやるけど、なにがいい?」
「どれもいらん、遠慮する」
丁重にお断りをした。
ノラはやはり野良猫なのだ。ネコマンマを食う一方で、野生の本能はいまだにしっかり持っている。
夕暮れどき。
勤め帰りのサオリさんを畑に誘って、花を咲かせ始めたコスモスを見せる。
「咲いたんですね」
サオリさんはそっと手を伸ばし、コスモスの花のひとつに指先を触れた。
黄昏のなか。
その姿がまぶしいほどに浮き上がる。
――きれいだな。
サオリさんの横顔を見て思う。
「これ、遅くなりましたが、ボクからの誕生日プレゼントです」
ここぞとばかりに、ポケットに忍ばせていたネックレスの包みをさし出した。
「ほんとは誕生日に渡すはずだったんですが、事故で転んだときつぶれちゃって」
「開けてもいいかしら?」
「もちろんです」
サオリさんが包みを開いて、ケースの中から星の飾りがついたネックレスを取り出す。
「わあ、すてき! ありがとうございます」
「気に入ってもらえてよかったです」
「それで、腕の怪我はどうです?」
「このとおり、ずいぶん良くなりました」
左腕をグルグルとまわしてみせ、傷の回復が順調なことを教えた。
このあと。
サオリさんが神妙な顔で言う。
「実は、赤ちゃんができたみたいで……」
「えっ?」
一瞬、頭の中が真っ白になり、オレは次の言葉が出てこなかった。




