サオリさんの誕生日
今朝は早くに起きて、一週間ぶりに畑のようすを見に行った。
トマトはすっかり終わり、枝や幹の半分ほどが枯れていた。ピーマンはまだ花を咲かせており、これからもしばらく実がつきそうである。
ノラがナワバリの見まわりから帰ってきた。
「今日は帰りが遅くなるんで、晩メシはキャットフードを置いておくからな」
夜はサオリさんとデートで、商店街で一緒に食事をすることを話す。
「よかったな、デートする女ができて。アンタも、やっとモテない男じゃなくなったな」
ノラがへらず口をたたく。
朝メシと晩メシのキャットフードを準備してやってから、自転車でバイトに向かった。
コンビニのバイトもあと三日だ。
店長には九月に入ってすぐ、今週いっぱいで辞めることを伝えてあった。
そして……。
今日はサオリさんの誕生日である。
先日、サオリさん宅でいろんな話をしたとき、サオリさんの誕生日を知ったのだが、オレより一歳年下であった。
誕生日プレゼントはポケットにある。
倉庫の修理代の余り、あのときの八万円が浮いていたので、前もってネックレスを買っておいたのだ。
バイトが終わって、待ち合わせの商店街に向かう途中のことだった。
――あっ!
そう思ったときは、体が宙に飛んで道路に打ちつけられていた。
目の前に倒れた自転車がある。
オレは自転車ごと転んでしまったらしい。
すぐに起き上がろうとしたが左腕が痛くて、その場でうずくまるのがやっとだった。頭をかばって左腕から落ちたようだ。
だれかが叫んでかけ寄ってきた。
このあと。
パトカーと救急車がやって来た。
警察の人から、交差点を左折しようとしたバイクと接触したのだと聞かされた。
サオリさんには、とりあえず事故のことをメールで送っておく。
最寄りの病院に運びこまれた。
診察の結果、左腕はすり傷だけで、骨には異常がないことを説明された。
とりあえず一安心である。
だが……。
ポケットのプレゼントがぺちゃんこにつぶれ、包装紙は破れるわ、リボンはとれるわで、さんざんなことになっていた。
サオリさんが待合室で待ってくれていた。
「大丈夫ですか?」
オレの元へかけ寄ってくる。
「はい、運が良かったみたいで。それより誕生日、だいなしにしてしまって」
「そんなこといいんです。わたし、サトウさんの顔を見るまで心配で……」
サオリさんが涙ぐむ。
この夜。
ノラに左腕の包帯を見せ、事故に遭って病院に運ばれたことを話した。ついでに自慢したくて、サオリさんに泣かれたことも聞かせてやった。
「アンタも色男になったな」
ノラがニヤリとする。




