恋のゆくえ
朝一番。
「ミケんとこに行く日は、まだ決まらんのか?」
ノラが気になるふうにたずねてくる。
「ああ、まだだ」
サオリさん宅訪問の件は、いまだに宙ぶらりんの状況が続いていた。
この日の夕方。
バイトから帰ると、倉庫の屋根がすっかり元どおりになっていた。昼間のうちに、工務店の者が修理に来てくれたのだ。
サオリさんにお礼のメールを送った。
だが、喜んでばかりはいられない。
修理にはかなりの費用がかかり、コツコツと貯めてきた持ち金が一気に吹き飛んでしまう。へたをすれば足りないかもしれないのだ。
「メシをくれ」
ノラが声をかけてくる。
「オマエ、これからしばらくメシ抜きだ」
「いきなりどういうことだ?」
「倉庫の修理代に金がいるんだ。そしたら、オマエの食い物が買えなくなるんでな」
「そいつはこまる。アンタ、どうにかしろ」
「どうにもならん」
がまんするんだな、と意地悪を言いつつも、いつものようにネコマンマをこしらえてやった。
勤め帰りのサオリさんが立ち寄る。
倉庫のことについて、おじさんからさっそく連絡があったという。
「修理代のこと、話していませんでしたか?」
「いえ、そこまでは」
「お金、用意しないといけないんで」
「じゃあ、わたしからおじさんに連絡するよう伝えておきます。ついでに、うんと安くするようにも」
「助かります。なにしろ、ボクはこのとおりの貧乏人なもので」
サオリさんはクスッと笑ってから、商店街である夏祭りのことを口にした。
「一緒に行けるの、とても楽しみにしています」
「あっ、はい。ボ、ボクもです」
「無理にお誘いしたんじゃないですか?」
「とんでもありません」
顔の前で手を振ってみせる。
サオリさんの話によると……。
夏祭りは商店街を中心にして行われる。アーケードの天井は色とりどりの電飾で飾られ、通りには露店などが数多く並ぶ。
商店街が特別きれいになる夜、サオリさんは特設のお化け屋敷に必ず入っているという。
「いつも弟と行ってたんです。でも、今年は弟がどうしても行けそうになくて」
とっても怖いんです、一人じゃ入れなくてと、サオリさんは屈託のない声で笑った。
――てっ、ことは?
オレは弟の代役、そして単なるサオリさんのボディガードなのか?
サオリさんが帰ったあと。
「アンタ、あいかわらず情けねえな。はっきり好きだって言わんからだ」
ノラに説教されてしまった。
「わかってるんだがな」
わかってはいる。
でも、どうしても、好きだという言葉が出てこないのである。




