ゴールデンウィーク
ゴールデンウィークが始まる。
だが、オレには関係ない。コンビニは年中無休、特別なことがない限り休みは取れない。
この日。
バイトの帰りに、食料の買い足しにと商店街に自転車を走らせる。
夕方のアーケードの通り。
そこは買い物客であいかわらずの賑わいだった。
通りの入り口で自転車を止め置き、目的のスーパーに向かって歩き進む。
「サトウさーん」
聞き覚えのある声がして、前方からサオリさんが小走りでやってきた。
「お買い物ですか?」
サオリさんが目の前に立つ。
――きれいだな。
あらためてきれいな人だと思った。
「バイト帰りに、ちょっと食料品を買いに。サオリさんも仕事の帰りですか?」
「はい。帰りはここを通るものですから」
そう、サオリさんはこの先にあるペットショップに勤めているのだ。
商店街からの帰り。
サオリさんはいつものようにバスに乗らず、オレは自転車を押して、二人はバス通りを歩いた。気がついたら、別れることなく歩いていたのである。
これまでは、そばにいつもノラとミケがいた。
それが今、こうして二人きりである。
サオリさんは、クッキーを焼くのが趣味だという。
オレには、これといってなにもない。
それで。
この町に来た訳や、住んでいるのは亡き祖母の家だということを教えた。そして今は、しがないバイトの身であることも話す。
「ペットショップって、ゴールデンウィークもやってるんですね」
「たくさんの生き物がいるから、いつも世話をしなくてはならないんです。夜も交替で」
「大変ですね」
「ええ、それでボーイフレンドもできなくて」
サオリさんがいきなり爆弾発言をする。
――これって、もしかして?
恋人募集ってことなのか。
心が躍りまくる。
その夜。
今日のことをノラに話した。
「あの子猫、元気にやってるみたいだぞ。いい人にもらわれてよかったって、サオリさんが」
「そいつはなによりだ」
「それにサオリさん、仕事が忙しくてボーイフレンドもできないそうだ。オレ、急に恋人募集みたいなことを言われて、ほんとびっくりしてな」
「その恋人が、アンタだって言ったのか?」
「いや、そこまでは」
「じゃあ、喜ぶのは早いというもんだ。アンタ、女にモテねえから」
ノラが憎まれ口をたたく。
「いらん世話だ」
「そんなことより、猫缶がまだあっただろ。あれを食わせろ」
「ダメだ、あれはサオリさんに返すんでな」
オレは憎まれ口のお仕返しをしてやった。




