祖母の一周忌
今日は祖母の一周忌。
両親がやってきて、近くのお寺で法事をすませたあと、三人で祖母の墓参りをした。
お墓は桜の木が立ち並ぶ墓苑にあり、桜の枝先には春を知らせるようにつぼみがふくらんでいた。
両親が祖母の家をあとにする。
帰りぎわ。
「草取り、ちゃんとやってくれてるんだ」
畑を見て、母はとても喜んでくれた。そして、せっかくだから野菜を植えてみてはと言う。
仕事のことは父も母も口に出さなかった。たとえバイトであっても、親に頼っていないだけいいと思っているのだろう。
しかし……。
この先もずっと、コンビニでバイトを続けるというわけにはいかない。
――この町で就職できたらな。
この町にはノラがいる。
そして、サオリさんがいるのだ。
――そうだ!
ノラを連れて花見に行こうと思った。
「おばあちゃんのお墓参りに行ってきたんだが、そこに桜の木がいっぱいあってな。花が咲いたら花見に行かないか?」
ノラを誘ってみる。
「近いのか?」
「いや、ずいぶん遠い。まちがいなくオマエのナワバリの外だ」
「なら行かん」
「ごちそうが食えるんだぞ」
「行かんといったら、行かん。ワシは、ほかのヤツのナワバリは荒さん」
ノラが首を強く振る。
「でもな、そこには家なんか一軒もないんで、オマエの仲間はいないと思うけどな」
「そうなのか」
「ああ、山にある墓苑なんで、人もめったに寄りつかん場所だ。それに自転車で行くんで、ほかのヤツと顔を合わせることもないぞ」
「じゃあ、考えておく」
「ところで、今日はいいもんがあるんだ」
「なんだ?」
「魚の缶詰だ。食わせてやるから待ってろ」
さっそく家に入ると、母が持ってきてくれたサンマの缶詰を持ってもどった。
「今日、オフクロが持って来てくれた」
缶詰を開けてノラの前に置く。
「これ、うまいな」
うまいうまいと何度も口に出しながら、ノラがサンマをほおばって食べる。
「こんなんがいっぱいあるんで、花見に持っていこうと思ってるんだが」
「じゃあ、ワシも行くかな」
ノラがニヤリと笑う。
その夜。
「やっぱり、ワシは行かんことにした」
ノラは花見を断ってきた。
「そんなにナワバリを出るのがイヤなのか?」
「ああ、アンタには悪いがな」
ノラが神妙に頭を下げる。
――なんともきびしいもんだな。
ノラに同情する。
野良猫の世界は、自分がいる場所よりずっときびしいものなのだろう。




