表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/48

花粉症

 ノラがしきりにクシャミをする。

 目も赤くなっていて、まちがいなく花粉症の症状である。

「オマエ、やっぱり花粉症だな」

「モテる男はつらいな」

 ノラがへらず口をたたく。

 オレは一度だけのクシャミだった。

 あれから一度も出ていない。


 ミケがやってきた。

「これ、サオリさんがノラさんにって」

 ノラに紙袋を差し出す。

「なんだ、これ?」

 袋の中のものを取り出してから、ノラがオレの顔を見上げる。

「花粉症の薬みたいだな」

「うまいのか?」

「ああ、食うか?」

「食う、食う」

「じゃあ、ちょっと待ってろ」

 薬を受け取り家にもどると、ネコマンマをこしらえて、その中に薬をまぜた。

 薬は猫用のものである。

 ペットショップにあるものをくれたのだろう。

――ノラのこと、ミケから聞いたんだな。

 サオリさんの優しさがうかがえた。


「おっ! またメシが食えるのか」

 ノラが目を輝かせる。

「さっきの薬をまぜてある。食うと、クシャミがとまるぞ」

「モテなくなるのはつらいが」

 そう言いながらも、ノラはしっかりネコマンマを食ってしまった。

 ミケに問うてみた。

「ミケは神社の近くにいるそうだな?」

「はい」

「神社に行くことがあるのか?」

「サオリさんが散歩するときに、アタシもついていきます。それに、アタシが生まれたところだから」

「それで、サオリさんに拾われたんだな」

「そうなんです」

「サオリさん、優しい人なんだな」

「とっても」

 サオリさんのことをもっと聞きたかったが、やめておいた。知ったところでどうなるものでもない。

 サオリさんには恋人がいるのだ。


 その日の夕方。

 玄関先で仕事帰りのサオリさんを待った。ノラの薬のお礼をするためである。

 しかし仕事が休みなのか、この日はサオリさんに会えずじまいだった。

 そしてノラだが……。

 いつかしらクシャミがとまっていた。どうやら花粉症の薬が効いたようだ。


 翌日のこと。

 オレにクシャミが出始める。

「よかったじゃないか、アンタも女にモテるぞ」

 ノラがオレを見てニヤリとする。

「いや、ただの花粉症だ」

 どうやらオレも、ノラにつき合って花粉症になってしまったようだ。


 その夜。

 窓をたたく風の音がする。

 時節からして、おそらく春一番であろう。

 風の音を聞きながら悩む。

――どうしようか?

 バレンタインのお返しのことで、眠るまでずっと迷いまくっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ