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新年の運勢

 大晦日の夜。

 いつもはこの時間、寝ているはずのノラが玄関の戸をたたく。

「どうした?」

「アンタ、今晩はどこにも行かないのか?」

「ああ、明日は朝からバイトがあるんでな。テレビを見て寝るだけだ」

 コンビニは年中無休。実家には、バイトが休めないので帰らないと伝えてあった。

「わびしいな」

「しょうがない。明日は正月だし、どうだ、家に上がらないか? ごちそうを作ってやるぞ」

 ノラを誘ったのは、少しは賑やかになるのではないか、そう思ったからだ。

「ちょっと……」

 返事は歯切れの悪いものだった。

「遠慮せんでもいいんだぞ」

「それがちょっとな」

「なんかあるのか?」

「じつはミケと……」

「ミケ?」

「アイツだ」

「あの白猫か?」

「ああ」

 ノラは、なんとも照れくさそうな顔をした。

――いつのまに?

 ちょくちょく会っていたようだが、ついにノラのがんばりが実ったらしい。

「ミケと初詣に行くんで」

「うらやましいもんだ、正月からデートとはな」

「すまん、そういうことなんで」

 ノラは申し分けなさそうに、それでもうれしそうな顔で出かけていった。

――ノラのヤツめ!

 オレに自慢したかったのだ。

 カノジョができたことをわざわざ報告して……。


 元日の昼過ぎ。

 玄関の戸をたたく音がした。

 出てみるとノラが立っていて、うしろに毛並みのいい白猫がいた。

「アンタの分だ」

 ノラがオミクジをよこし、カノジョと神社に初詣に行った帰りだと言う。

「オマエ、これをよく買えたな」

「アタシの主人が連れていってくれて、アタシたちにも買ってくれたんです」

 ミケがノラにかわって言う。

「で、オレの分もか」

「アンタが初詣に行けんことを話したら、渡してくれって、ついでに買ってくれたんだ」

 ひとりぼっちのオレのことを、ノラなりに気づかってくれたのだろう。

 オミクジを開くと末吉だった。

――当たってるんだろうな。

 そう思う。

「なあ、上がっていかないか?」

「いや……」

 ノラがミケの顔を見やる。

「そうか」

「じゃあ、また来るんで」

 二匹は仲良く連れ添い行ってしまった。


 あらためてオミクジを見返すに、恋愛運は『かならず恋叶う』とあった。

――もしかして?

 おもわずニンマリしてしまう。

 ガールフレンドもなく、カノジョができるあてすらないのに……。


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