やせがまん
十二月に入って、朝晩はめっきり冷えこむようになった。
今朝、ついにコタツを出す。
かたやノラだが……。
一日の大半、玄関先の陽だまりの中で丸くなっていた。外に出かけるのは、ナワバリの見まわりのときだけのようである。
その夜。
ノラに問うてみた。
「オマエ、夜中は寒いだろう?」
「ちょっとな」
「じゃあ、夜は上がって温もらないか。今朝、コタツを出したんだ」
「ワシにコタツは似合わん」
「なら、タオルをやろうか?」
「タオル?」
「そうだ。寝るとき、くるまると暖かいぞ」
「いや、いらん」
「なんでだ?」
「ワシは、そこらのヤツらとはちがうんだ。根性があるんだよ」
「そうか、根性がな」
「だから、そんなもんはいらん」
ノラは首を強く振った。
翌日、初雪が舞った。
――ノラのヤツ、ほんとは寒いんだろうな。
気をきかして、使い古しのバスタオルを玄関先に置いてやることにした。
「今夜は冷えるぞ。意地を張ってないで、それにくるまって寝るといい」
再度、バスタオルをすすめてみた。
「いらんと言っただろ」
ノラがフンと横を向く。
「じゃあ、その気になったら使うがいい」
「いらんといったらいらんのだ。メシが食えるだけでいい」
ノラはそう言い残し、雪が舞う中をさっそうと出ていった。
その姿は野性的だった。
意地を張っているだけではなさそうだ。野良猫らしく生きようとしているのだろう。
翌日の朝。
バスタオルから飛び出すノラを見た。
――どういうこと? アイツ、あんなにイヤがっていたのに……。
そう思って見ていると……。
ノラは肩をいからせて道路に歩き出た。
――うん?
向こうから猫がやってくる。畑の草取りをしているときに見た、あの赤い首輪をした白猫だ。
ノラは白猫にすり寄っていった。
「よう!」
「寒いわね」
白猫があいさつを返す。
互いの口ぶりからして、二人の仲はまんざらでもなさそうだ。
「なんの、これしきの寒さ」
ノラは胸を張った。
――かっこつけやがって!
ノラは白猫の気を引きたかったのだ。強く見せようと見栄を張っていたのある。
だが、ここまでがんばるとは……涙ぐましい努力ではないか。
――うまくいくといいな。
ノラのことを応援したくなった。




