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第5話 「白い竜」

 その姿を見た時、心が、体が、震えた。

 ただ美しい。

 『それ』を見た時、頭にはそれしか浮かばなかった。

 時間を忘れ、永遠にその姿をこの目に映し、その美しさに溺れていたい。

 『それ』は、この世界で最も白く、白く、白くひたすらに美しい『白』だった

 


 ――ごみ処理場――

 転生して2週間がたった。

 俺はと言えば腐っていた。順調に腐っていった。

 「このまま毎日ごみを焼いて日銭を稼いで人生を終えるのかな。」

 最初の討伐以降街から出ることもしなくなった俺は毎日宿屋と仕事場の往復を繰り返すだけの日々を送っていた。

 しかし腐っていてもレベルは上がるもので今はレベル3だ。1から2に上がるときはゴブリン分あり早く上がったがごみを焼くだけの仕事では時間がかかる。


 「今日の仕事も終わったな。」

 一人そうごちていると・・・

 「随分騒がしいな、なにかあったのか?」

 ギルド周辺で怒号が飛び交っている。

 「おいっ!とっとと支度しろよ!!」

 「うるせえっ!!畜生、なんでこんな辺境の街に!」

 焦燥感や恐怖などを怒号に変え自らを鼓舞するかのようなそんな声が響いている。

 「なにかあったんですか?」

 近くの冒険者に尋ねると。

 「知らねえのかっ!?ドラゴンだよ!!街の裏の洞窟にドラゴンが出たんだ!!」

 「ドラゴン!?」

 吐き捨てるように答え去っていく冒険者の言葉を反芻し・・・

 ドラゴン?ドラゴンってのはドラゴンだよな。焦りなのか現実離れした状況に頭がついていかないのか思考にならない思考を繰り返していると。

 「おい坊主っ!!悪いことは言わねえ!宿に避難してろ!」

 戦士職だろうか、大きな斧を担いだ大柄な男が声を掛けてきた。

 強面のわりに親切なその男は今の状況を教えてくれた。

 さっきの男が言っていたように街の裏にドラゴンが出現したらしい。クエスト帰りのあるパーティーが発見しギルドに報告し、今は街中の冒険者総出で討伐隊が組まれているらしい。街中の冒険者が集まっているのならいくら駆け出しの街とはいっても50人はくだらないはずだ。にも関わらず街にあふれるこの悲壮感はなんなんだろう・・・?

 「この街の冒険者総出なら50人はいますよね?だったらドラゴンの1体くらいどうってことないんじゃないんですか?」

 ゲームなどでもドラゴンは強敵に設定されているが、いくらなんでも50人がやられることはないだろう。ゲームなんかだと4人で倒してるし・・・

 そんな風にどこか他人事で聞いていると。

 「バカかお前はっ!?」

 今までのどこか穏やかな雰囲気を怒号が切り裂いた。なにが起きたのかわからず情けなくも口をぱくぱくさせていると。

 「ああっ!すまねえ、お前さんはこの間冒険者になったばかりだもんな。」

 すぐに落ち着きを取り戻す男に大人は違うなと場違いなことを考えていると。

 「ドラゴンってのは個体にもよるが強い奴なら1体で小国を壊滅させる・・・!!」

・・・・!?

 「ちょっと待ってください!いくらなんでもっ」

 そんなばかなことがあってたまるか!そんなことをいったらこの世界は魔王ではなくドラゴンが支配しているはずだ。

 「ドラゴンってのは基本的に中立だ。人間や魔王軍の戦いには介入しない。興味もないんだろうな。だからこちらから手を出さない限りは手をだすことはない。魔王軍もドラゴン相手には手を出さないからな。」

 なんでもこの世界のどこかにはドラゴンの国があるらしい。そこは人間も魔王も手が出せないのだそうだ。実力的な話で・・・・

 終わった・・・・

 いやちょっと待て。

 「手を出さなければ手出しされないのなら放っておけばなにもしてこないんじゃないんですか!?」

 そんな俺のすがるような甘い希望は・・・

 「なにがあったのかはわからないが非常に気がたっているらしい。発見した奴らも生きて帰ってきたんだがな、攻撃を受け、命からがら逃げ延びてきたらしい。」

 粉砕された。


 ――ギルド内――

 俺は討伐隊の最後尾にいた。逃げろと言われたが実際逃げるわけにはいかない。

 行くあてもないし。

 だが、なにも死ににいくのではない、50人もの戦力があればいくらドラゴンでも隙が出来るはず。近づくことさえ出来ればこの『黒い炎』で倒せるんじゃないか?

 女神も言っていたがこいつはすべてを焼き尽くす。(触れたものに限る)

 ドラゴンスレイヤーの称号はこの手の中に!!


 ――洞窟前――

 白い景色が広がっていた。呼吸を忘れるほどの美しさ、純白の鱗が全身を覆い、体と同色の巨大な翼を広げ、金色に輝く瞳をこちらに向けている。

 存在の格が違う。ただ存在するだけで芸術品足りえる美しさ。そしてその存在から放たれる圧力、目の 前の存在がなにかをしているわけではない。ただ自分とは格の違う存在への恐怖・・・・いや畏敬とでもいうのだろうか。

 感じるのはただの恐ろしさではない、貴い存在への畏敬。チートなどでは到底埋まることのない『差』がこの竜との間には広がっている。


そして超常の存在との邂逅が始まる・・・・


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