プロローグ 「同じ歩幅」
この光景を守りたいと思った。
始めは元の世界に帰るためだった。
いつからだろう、傷つく理由が自分だけではなくなったのは・・・
「サトルー」「サトル」「サトル!」「サトル!!」「サトルっ!!」
幼い声で名前を呼ばれる。声の方を振り向けば数人の子ども達が、お手製のサッカーボールを抱えてこちらに駆けてくる。
「毎日、毎日、精が出るのう。とてもサト坊の真似はできんの。」
赤い少女が気だるげに零し。
「サト兄自体が子供だからね、遊んであげてるんじゃなくて、一緒になって遊んでるんだよ。」
緑の幼さの残る少女が微笑み。
「そんなこと言って、サト兄が子供たちにとられたーっ!!って言って、しばらくサトルの傍を離れなかったのは誰かしら?」
白い少女が悪戯っぽく笑う。
「さてと、今日はここまでな!気を付けて帰れよ!!」
黒い少年が終焉を叫んだ。
近くで自分と子供たちの様子を見ているであろう少女たちに終了の報告をしようとして一言。
「なんで、喧嘩してるの?」
先ほど、少年の勇姿を見ていた少女たちは喧嘩というには些か可愛らしい、じゃれあいをしながら少年を迎えた。
話をまとめると、白い少女が、緑の少女をからかい、緑の少女から、飛び火した赤い美女が白い少女に詰め寄り収集がつかなくなったそうだ。
つまり、あれだな。
「お前ら全員バカってことだな。」
黒い少年を交え、ラウンド2のゴングの火蓋が切って落とされた。
「あーもう、くだらないことに体力と時間を取られたっ!!」
「サトルが悪いんでしょ!」
「そーだよ、サト兄!」
「そうじゃぞ、サト坊!」
「わかったよ、わかりました。俺が悪かったです。」
知らぬ間に3対1に状況が変化し、勝ち目の無くなった勝負を切り捨て。
「今日はどんなクエストを受けるの?」
一番付き合いの長い少女の質問に。
「俺が活躍できるクエスト・・・」
難しい注文で切り返した。
「気づくと治癒魔法のお世話になってるもんね!」
その原因を作る少女が元気よく、悪意のないナイフを投げつける。
「儂は寝てても良いかの?」
放っておくとニート化する少女がその実力をいかんなく発揮し。
「お前らが俺の言うことを素直に聞いてくれれば俺はきちんと活躍できるし、治癒魔法の世話になることもねえんだよっ!!」
日々の苦労を口にするも、3人とも笑ってごまかすばかりで返事をしない。
「とにかく行くぞ。」
こいつらと、騒がしい日々を送るのも悪くないと毒されてきている頭を切り替えギルドへ向かう。
言い争いながらも4人は同じ歩幅で歩いていた――