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エリーゼ登場

「おじい様、これは好機なのではないでしょうか」


今まで聞き役に徹していた少女が口を開く。

この静かな場において、高く透き通った少女の声はよく響き、意思の強さをボクに感じさせた。


「この子……失礼しました。サラさんは私たちに敵対はしていません。そしてサラさんは襲撃者たちを追い払うほどの凄腕です。ここは事情を話して護衛依頼を受けていただくのはいかがでしょうか」


むむ、「この子」と言いかけたね? ボクの見た目は君とそう変わらないんじゃないかい?

ちょっとボクの方が……うんちょっとだけ小さくて、胸がすとんとしているけれどそれだけだよね?

とっさに言いつくろった少女の瞳を半眼で睨みつける。

深い青をたたえた少女の眼はボクに見つめられて右に左に揺れる。


「やっぱりかわい……。ではなくて。コホン。どうでしょう。おじい様」


ボクの視線に威圧されたのか、祖父に助けを求める少女。

ボクの怖さが伝わったのだろう。ふふふ。そういう年相応さが見えると可愛らしいよね。


「ううむ……。それが良いかもしれんな……。ゴードンさんよろしいでしょうか」


「俺らは構いませんぜ。嬢ちゃんはちっこいのに十分役に立つしな」


がははと豪快に笑いボクの背中を叩くゴードン。

乱暴だなあもう。


「サラさん、サラさんが宜しければ孫娘の命、タルミアの街まで預かってもらえませんかな。もちろん謝礼は弾みます」


「謝礼!? おじいさん話が早くて助かるね。条件と報酬の話をすぐ詰めよう」


口の端が自然と上に吊り上がっていく。

具体的にはおいしい食べ物とかたくさんのお金とか安心できる住居とかが嬉しいね。

特に住居の手配さえしてくれるならなんだってお手伝いするよ。

タルミアの街までどれくらいかわからないけれど、人間相手ボクならそう困ることもないだろう。



――昼間じゃなければ。


「ボクの方だけど、タルミアの街まで夜の警備なら務められるよ。腕の方はゴードンに聞いてもらえばいい。ちょっと体質的に日の光が目に染みてね。日中は外に出られないんだ……日中役に立たない代わりに、夜番なら明け方まで一人で問題ない。……と言ってもはいそうですかと全部任せてもらうわけにはいかないだろうからそこは君たちに任せるよ。」


「――昼間の襲撃なら俺らでなんとでもなりますぜ。夜の奇襲を嬢ちゃんにある程度任せられるなら体力も回復しやすし、いいんでないしょうか」


ゴードンも助太刀してくれ、ボクの夜間護衛の依頼は存外簡単に決まった。

普通に考えて、こんな怪しい女の子を信じるなんておかしい気がするけれど。さっきの襲撃の対処が聞いたんだろう。

ちなみにボクとおじいさんの間の契約は、依頼を受ける基本報酬としてタルミアまでの食糧の供給。成功報酬――夜間中女の子と積み荷の護衛を完遂すれば銀貨10枚だって。

ちなみにゴードンに教えてもらったんだけど、銅貨1枚が1インで銀貨は1000イン。金貨はその100倍。1枚で10万インの価値があるみたい。普通の宿屋が食事込みで1人1泊50インが相場らしいから銀貨10枚は……ええと……えーと? 200日も食っちゃ寝できる!?。

――とはいえ、宿屋じゃ落ち着かないし、とっととお金貯めて屋敷建てたいからビシバシ働かないといけない。屋敷ってどれくらいのお値段するんだろう? もちろん信頼できる使用人も雇おう。

そして、そこに至るまでの出会い、胸躍る冒険! わくわくが止まらないね。


「よろしく頼みます。サラさん。私はハザック商会のハザックです。普段は王都で商売を行っています」


「私はハザック商会、タルミア支部の頭取エリーゼです。今後とも末長くよろしくお願いいたします」


人の好さそうな穏やかなおじいちゃんの名前はハザック。孫娘のかわいい子がエリーゼだね。


「ボクはサラ。見ての通り小柄だけど、ま、そこらの冒険者には負けない自信はあるよ。魔力の扱いが得意なんだ」


握手を交わし、ボクは夜の見張りに着くため外に出る。

さすがに今日二度目の襲撃はないと思うけれど……契約したしね。


西の山に沈みかかっている月を眺めながら、薪をくべる。

パチパチと木が爆ぜる音と、風で揺れる草の音を聞きながら日が昇るのを待つ。

多少暇だけど、長い人生時間潰しには慣れている。今回は数日の夜を一人過ごすだけだから苦痛も少ないだろう。


ボクはふわあ、とあくびを一つ漏らしながら星の数を数える作業に取り掛かった。


――――


今日はここまでです。

これからのんびり更新していきます。

2週に1度更新できるかどうかだと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

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