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夢はでっかく白いお家でゆうゆうと

「ああ、そこに落とし穴があるから踏まないでえええええ!!」


「え? あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁ」


せりあがる地面――ボクが穴に落ちている—―と風を感じながら適材適所の偉大さを知るのだった。


「痛い……」


痛みよりも急に地面が消失する浮遊感に驚いた。


「……どうするよこいつ。街まで来るのかな」


「祈りましょう。変なことはしないって」


穴から這い出すと、彼らは青い顔をしてボクを見ていた。

会って間もないのにそれほど心配してもらえるなんてボクは嬉しくて、つい涙腺が緩みそうになる。


どうやら彼らは良い人らしい。街まで素敵な旅路になりそうだ。



そして、洞窟の中を長く歩き続けて――


「青い空! 白い雲! カビっぽくない新鮮な空気。外は良いね!」


そして燦々と暖かな光を注ぐ太陽!


「ミノタウロスに追いかけられたときは死を覚悟したんだがなあ……。三人で帰ってこれて本当に良かった……」


「ああ、嬢ちゃんも話してみると悪いやつじゃなさそうだしな。そうだよな!?」


失礼なことを言う。ボクは最初から君らに好意的じゃないか。


「嬢ちゃんじゃない。気軽にサラちゃんと呼んでくれと言ったじゃないかタロス君。君たちはタルミアの街を拠点にしてるんだったね。そのうち寄らせてもらうよ。それじゃあ気を付けて帰るんだよ」


「え゛。ついて、こないの?」


「一緒に行きたいのはやまやまなんだけどねミーナ君。いやー、迷宮の中に忘れ物をしちゃってさ。大事な物だから取りに戻ろうと思うんだ。はは、……ははは。……太陽の存在を忘れているとかボクは馬鹿か……」


長い引きこもり生活で忘れていたけど、世界には昼と夜があるんだった。

ボクら一族は夜の加護がある代わりに日の光に触れると著しく体調が悪くなってしまう。

それで死んだりはしないけれど……とても彼らと共に街まではいけない。



「それじゃ、気を付けて」


力なく手を振り、彼らにバイバイする。

悲しいけれど、笑顔でさよならだ。

彼らもボクとの出会いを祝してそれはそれは爽やかな笑顔で手を振り別れた。


夜になったら迷宮を出よう。


「ぐすん……」


それまでちょっとだけ奥で二度寝を楽しむことにする。

そういえば牛頭の血液、冷たくなって絶対おいしくないけど薬だと思って飲もうかな。


きゅるるるる。


さっきまで我慢していたお腹が、急に空腹を訴えてくる。

栄養が欲しいと泣いている。


「ふんふんふーん」


ボクは再び迷宮の奥を目指して歩き出した。



―――――


夜だ。

誰も文句をつけようのない夜が来た!


さあ行こう。迷宮を出よう。

湿っぽい世界にさよならだ。


彼らはタルミアの街に行くと言っていたね。

タルミア……ボクが眠ってから何年経ったかわからないけれど、聞いたことのない街の名前だ。

ボクは賑やかなのが好きだから、そこそこ発展しているといいんだけどどうでしょう。



月明かりを道しるべに、彼らが歩いて行った道を――だいたいで――駆けていく。

風切り音を聞き、獣道を抜け街道を走る。

タルミアに続く道かはわからないけど、街道を走っていればそのうち人の住む場所には着くだろう。

冷たい夜風を全身に感じながらとにかく走る。夜の時間は短いんだ。止まってなんていられない。


「街に着いたらまずは靴だね」


独り言を言いながら枯れ枝を踏み砕いていく。


分かれ道もなんのその。自分の勘で右へと曲がる。

すると、街道の横で野営をしている隊商に出くわした。

車が計三台も停めてあってなかなか豪勢に思える。


木に馬を繋いで休ませていることから、移動方法はボクの知っている頃から変わらず馬のようだ。

起きている護衛は一人。火に薪をくべながらあくびをしている若い男。

竜かリザードマンの鱗を付けたプレートメイルを付けただけの軽装だ。

武装は盾とナイフ。あと腰に道具袋を吊るしている。

彼はパーティーを組んだら斥候役だろう。


積み荷は何だろうか、ここからじゃわからない。

しかし三台も馬車を留めてあるのに起きている護衛が一人とは不用心だね。

せめて前後ろに一人ずつ、合わせて二人は配置すべきじゃないかい。


ほら、ボクの鼻は誤魔化せない。

美味そうな餌に連れられた人間の香りが一、三、七人。うわ……二十人以上だわ。

――多くないか?


襲撃者は月の作り出す陰に紛れて、馬車を包囲しようとしている。


さてさてどうしましょうか。

知らぬふりして先を急ぐのもいいし、野盗の騒ぎに便乗して夜食としゃれこんでもいい。

隊商に味方して恩を売り、街での縁を結んでもいいかもしれない。

うん、そうしよう

一時の快楽より、白く広いお家で平和に楽しく暮らしたい。


ボクは隊商を助けることに決めた。

わざわざ大きく足音を立てて、寝ぼけている護衛に近づいていく。


「やあこんばんは。過ごしやすい気温で眠くなっちゃうよね」


声をかけられた護衛はハッと顔を上げると、己の職務を思い出し剣を抜く。


今日はこれだけです。

明日もまた同じぐらい投稿しようと考えています。

更新頻度はあまり高くないと思います。

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