黒髪ロングな女の子が、夕暮れ時のローカル線の中で告白されるだけの話
通学に電車を使うのが夢だった
なんとなくお洒落とかそんな事を中学の時まで思っていたけど、所詮田舎の電車。
お洒落とは程遠く、同じ制服をきた先輩後輩とゆらゆら揺られながら学校へ行く。
恋とか友情の始まりとかあるんじゃないかと思ったけど、いつもスマホを見ているかラノベを読んでいるから始まるはずなんてなかった。
高校に入れば大人に近づけると思っていたけど、むしろ遠ざかった気がして、大人ってなんなのかとテツガク的な事を考えてみる。
「かれし、ほしかったなぁ」
今日は卒業式。
今はその帰り。
三年間ほぼ毎日乗っていた電車とも今日でお別れ。
寂しくような気がして、思ってもない事をぽつりと呟く。
「じゃ、俺と付き合ってくれません?」
いきなり声が聞こえて、めっちゃ驚く。
目の前に誰か立ってる。
卒業式が終わって数時間。
電車には誰も乗っていなかったのに。
「一年の高橋です。図書委員で先輩の事はずっと見てました」
いや、名前言われても分からないよ。
確かに私も図書委員だったけど、誰だあんた。
頭の中がぐるぐるする。
夕焼けで顔がよく見えない。
「…先輩?」
あ、今の言い方覚えがあるぞ。
どこだ、どこで聞いた。結構最近聞いた気がするぞ。
「…その本、前に俺が勧めたやつですよね」
そう、さっきまで後輩のゆっきーからオススメされた流行りのラノベを読んでいた。
「…ゆっきー!?」
「なんですかそのあだ名」
「あ、その、ごめんね? 名前覚えるの苦手で、こっそりあだ名つけてて…」
ゆっきーは、確かに図書委員でよく貸し出し担当として一緒にいた。
私の趣味をなかなかしっかり把握していて、良さそうな作品があると教えてくれる。
当たり率は半分くらいだけど。
「…その、先輩、返事を…」
「まってまってまって、おねがいちょっとまって! い、いつから…?」
いつからいたのか、いつから好きだったのか。
二つの意味で聞いてみる。
「…学校近くの駅でずっと待ってました。先輩の事は図書委員になったあたりから…」
「そ、そっか」
いやいやいや、これ恥ずかしい。
めっちゃ恥ずかしいぞ。周りに本当に誰もいないよね?
「えっと、な、なんで?」
会話が難しすぎる。
ちゃんと伝わっているか?
なんでこんな私を好きになってくれたの?
「きっかけは、電車で本を読んでる先輩が綺麗だったから」
「きれい!?」
「はい。でも、読んでいるのがラノベって分かって、なんかギャップがすごいなぁって」
電車による特殊効果か何かか。
きっとそんなものに違いないのに、綺麗とか。
頭の中のぐるぐるがさらに速度を増した気がする。
「…えっと、そのさ、卒業したから、なかなか会えないよ?」
「はい」
「それに、本ばっかり読んでるし、綺麗じゃないし」
「はい」
「…い、いいの?」
「先輩が、いいです」
なんだこれ、夢か夢でも見ているのか。
てか、あれ、ゆっきーってどんな顔だった。
な、なんとなくしか覚えてないぞ。
いや、顔なんかいいんじゃないか?
これはいいんじゃないか?
「わ、わたしで…」
あかん、めっちゃ声が震える。
ぐるぐるがなんかすごいことになってる
大丈夫?おっぱいもむ?
あ、かお、かおみないと。
「わたしで、よければ!」
「先輩が、いいんです」
そこに、ちゃんと目と鼻と口がある男の子がいて、普通だなぁと思ったけど、なんかかっこよく見えて。
「よろしく、おねがいします!」
「はい、こちらこそ」
最後の最後のだけ、電車でよかったなぁと思えた。
なんか、甘酸っぱい物をと思って勢いに任せて書きました。
読んでいただきありがとうございます




