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ポコぽこポン!  作者: いぐあな
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七月十七日之事_____四話目



「福里さーん、こんにちは~。回覧板でーす。」



引き戸を開けてぽこちゃんが顔をだした。

「あ、おっちゃん こんにちは~。」

「福里さーん、こんにちは~。回覧板でーす。」



引き戸を開けてぽこちゃんが顔をだした。

「あ、おっちゃん こんにちは~。」


「こんにちは ぽこちゃん。回覧板持ってきたんやけど、お母ちゃんおる? 」


「んーん。 今日は お仕事ー。」

あの母親は働いているのか…彼女一人でお留守番のようだ。


たぬきだろうが部屋が借りれるんなら人としての住民票を取れる戸籍もあるんだろう。

庭木にカブトムシが鈴なりになるような田舎だが、腐っても政令指定都市だ。

役所に相談すれば片田舎の母娘の慎ましやかな生活くらい助けてくれそうなのに律儀にも働くとは…。


だが真に問題にすべきはそこじゃ無い。


あの妙な訛りの喋りで 完璧に人に化けてるとはいえ たぬきだ。

まともに働けているのか、激しく疑問だ。

しかし、他人様の家庭の内情に聞き耳立てるのも無粋というモノだろう。 ましてや聞いたところで嘴を挟む訳にもいかない。


それ以上に今せねばならない事がある。

「あとな、忘れんうちに言うとくで、俺 お兄ちゃん な。そこ 大事や。」


「また言うてるー。あんなー おかんが言うてたで。しつこいおとこはきらわれるーて。」

お互いに譲れない一線があるのかも知れないが 俺としては【お兄ちゃん】と言う 絶対防衛線は死んでも護らねばならない。


戦線の守護者の仕事を終えたからには安心してぽこちゃんとコミュニケーションを繰り広げるとしようか。

「お昼は食べたんか?」

「うん! おかんがお稲荷さん作ってくれてん。美味しかったぁ~。あとおやつプリンやってん。」


「実はおいなりさん食べて直ぐにプリン食べたやろ?」

「えっ? えっ?…。」

途端にぽこちゃんの目が泳ぐ。

「そ、そんな事ないよ、3時に食べたもん。」

嘘だな。子供の忍耐力で3時まで持つ訳がないのだ。


グギュルルル~! 良いタイミングに大音響で腹の虫の演奏会だ。

「まあ、いいけど。…お母ちゃん帰って来るまでお腹持つか?」

「んー…。」

子供でもちょっと恥ずかしかったのか俯き加減で大人しくなってしまった。


まあ、しょっ中ご馳走になってるからな。こう言う時くらいお世話せねばバチが当たる。

「うち来て蕎麦でも食べるか? 特別にお揚げさんたっぷり乗せや。」

「え?良いのん?」

実に良い笑顔だ。子供はこうでなくちゃ。


そんなこんなでぽこちゃんと連れだって帰宅。

俺は台所へ、

その前にぽこちゃんは応接間のテレビで子供向けアニメの鑑賞でもして待っててもらおうかと テレビつけたらちょうど盛り上がってたところらしくヒロインらしき美少女がファンシーなヌイグルミキャラを滅多斬りにして『マジ狩るよ‼︎』とか叫んでた。

最近の子供向け番組ってなんだか怖い。


とりあえず、たぬき蕎麦。

なんでも東京だとハイカラ蕎麦の事をたぬきと言うらしい。そういえばカップの蕎麦も天ぷらでたぬきだった気がする。 しかし、立ち食いの食券が【天ぷらうどん/そば】【きつね/たぬき】天かすは自由にどうぞ、の文化で育った身としては やはり揚げの入った蕎麦をたぬきと呼びたい。


「お待たせ~。 たぬき蕎麦出来たで~。」

途端にぽこちゃんの表情が強張る。



「ぽこちゃん、どうしたん?」

「た、たぬき入っとんか? 次はぽこの番か?」

涙目でプルプル震えている。


「違う、違う。たぬきが大好きな蕎麦やがな。ぽこちゃんお揚げさん好きやろ。お揚げさんの蕎麦も美味しいで。きっと好きになる。 で、たぬき蕎麦や。」

ぽこちゃんは涙目のままでホッとした表情をしている。 なにこれ可愛い。


ハフハフ言いながら頑張って蕎麦を食べる姿見てたら不思議な何かが目覚めてしまいそうだよ。


多分目覚めたらアカンやつ。

愛でるだけでお触り禁止!みたいなアイキャッチの表紙の綺麗なアレだ。

昔、本屋できれいな表紙に釣られた子供がおじいちゃんにねだってた姿を見て、声を掛けてあげるべきか悩んだ覚えがある。

でもこんな事で声かけたら俺が事案発生源になる気がして尻込みしてしまった…。

店員も普通に売ってたし中身を確認しないまま帰ってしまった仲良さげな祖父と孫娘…。

あの二人の関係は守られたんじゃろか…。



二人でたぬき蕎麦を食べた後はアニメ鑑賞を続けていたが、ぽこちゃんが目をシパシパし出したので送り届け布団を敷いてやってお開き。



良かった、俺の中の新世界の何かはまた眠りに着いた様だよ。

もう会うこともないだろうお祖父さんと孫娘さん、そしてぽこちゃん の未来に祝福を…。



書き直していると 自身の力量不足をとても感じます。

なるべく沢山の方々に読んでいただける様これからも頑張ります。

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