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ポコぽこポン!  作者: いぐあな
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十一月四日之事_____三十四話目

お読みいただきありがとうございます。



昨夜はなずなさんに怒られて散々だったのだが、それでも そのお陰でとりあえずの収拾だけは着いた。

それにしたって荒御霊のなずなさんは怖過ぎたので、今後は出来ればもう少しお手柔らかにお願いしたい。


で、俺はと言えば 出張明けで今日明日と二日ほど休める事に。

早速昨日聞きそびれた事柄について、皆と色々話し合う事にした。


いつのまにか大きめの丸いちゃぶ台が更に大きい新しい角座卓に変わっている。

そこのお誕生席に俺、右手に稚日わかひでその奥にぽこ、左側にすずでその奥が樟葉くずのは

「さて! 稚日わかひ。」

「はい。なんですか?お兄ちゃん。」

えらくご機嫌な稚日わかひさんであるが、やはり悪い事をしたとは微塵も思ってはいない様だ。

「どうぞ、お茶です。」

「あ、ありがとう。」ズズ…

樟葉くずのはさんが淹れてくれるお茶…………はっきり言って不味い。

稚日わかひ、このお茶……。」

「はい。お土産の出雲のお茶ですよ。 美味しいでしょう?」

……美味しい? これが? ズズー ……やっぱ不味い。

まさか、な…………。

稚日わかひ、このお茶飲んでみて?」

「! あ、主人様あるじさま! お茶冷めたでしょ? 新しいのお淹れします!」

樟葉くずのはが出してきた手をはたき落とし 茶を稚日わかひに渡す。

一口飲んだ稚日わかひはそのお茶を 無言ですずの前に…………。

すずもそのお茶を啜る。

「…………………不味い。」

一言呟いて立ち上がると


俺の手元で足掻いていた樟葉くずのはの首根っこを掴んで奥の間に引き摺って行く。

ピシャリと音を立てて閉まった襖の向こうからビシャん!ビシャん!と何かを何かで叩く音が響き、その音に合わせて「ギャン!」「ギャン!」と悲痛な声がこだまする。

更にはその合間を縫って「だって私ら神使とか神とかですよ!」とか「なんで人間風情のお茶汲みをー!」とか 聞こえてくる。

ぽこが「くずちゃんあかんなあ〜。」と独り言を呟くが ホントその通り。

神だろうが神使だろうが所詮居候。

しかも、まだ家主は居候を許可していないのに 家主に嫌がらせとか アホの子である。


しばらくして戻ってきたクズの葉はおでこを真っ赤に腫らして涙目で「すみませんでした。」と詫びた。

こいつの呼び名はクズの葉で良いや。気にくわないならクズで行く。

主人様あるじさまなんか樟のアクセント違いませんか?」と聞いてくるが華麗にスルー。


「で、話を戻すけど稚日わかひ、なんでうちが神社になってんの?」

稚日わかひが淹れ直したお茶を差し出しながら 声高らかに宣言する。

「はい。これでお兄ちゃんとわたくし達の縁はしっかりと結ばれたのです!」

「あのね稚日わかひさん? 俺は神社になった結果を聞きたいのじゃ無くて、神社になった理由が聞きたいのですが?」

テンション高止まりでちょっとおかしい感じのする稚日わかひに改めて聞き直す。

「お兄ちゃん…ひょっとして……怒ってます?」

え!?まさか!…そんな!?みたいな表情で驚く稚日わかひ

俺も喜ぶと思ってたのか?

「黙って突然居なくなるわ、家を勝手に神社にするわ……。ちゃんと説明しなさい!」

「ぅう〜〜〜〜!」

鼻の頭を真っ赤にして 今にも泣き出しそうな稚日わかひ。ぽこが頭を撫でて慰めている。


少し落ち着いたのか稚日わかひは説明を始めた。

「神はちゃんと信仰を集めないと荒御魂と言って心の荒んだ悪い子になってしまうのです。」

稚日わかひが悪い子に…………想像付かんなー。


「で信仰を集めるのに、先ずは定まった神社に神座を置かなければいけないのです。」

なるほど、自由契約状態のままだと拙いのか………それは分かった。

「で、なんで全部俺に内緒なんだ?」

「だって、言ったら反対されますもの。」

ケロっとして言い放つ。

「そんな事…」

「ではお兄ちゃん、妹が神様として救われるには最低限、お兄ちゃんのお家を神社にする必要があって、お家を神社にしたらもれなく妹がお嫁さんになる縁が結ばれてしまう、と提案されても反対しなかったと?」

「およめさんんんーーーーーー!?」

おい! ちょっと待て!

「そうですよ?」

「なんで……。」

「だって、比売神ひめがみいもとして自宅に引き入れ、神座を用意し、膳を同じうし、共に湯殿に入り互いの身体を洗い、臥所も同じ。ここまでして置いて、今更『妻では無い』などとは八百万の神には通用しませんよ?」


……謀られた。


いもうとだからと押し切られた全てが布石だったとは………幼く見えても500歳は伊達じゃ無かった。

「因みに、これらのお膳立ては全てなずな様が仕切って下さいました。」

あの不嫁後家いかずごけなにしてくれとんじゃああ!


『ガタッ!』

ちっ!あの牝狐、また家の中のどっかで様子伺ってるな!


稚日が言う。

「もう大丈夫ですよ? 時間はたっぷりとありますからゆっくりと夫婦めおとの絆を育みましょう。」

これの何処が大丈夫なのか?

「あ、それとすずもぽこも条件はわたくしと同じですのでお覚悟の程、よろしくお願い致しますね。」

「ちちうえ〜。」

「あー、すずちゃんズルいー! ぽこもー!」


お嫁さんごっこが似合いそうな二人にお嫁さんとして抱き付かれるとか………事案発生です。

串カツの事をとやかく言えない身体になってしまいました。


これでタグに異種婚姻譚って入れても問題無いですよね。



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