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ポコぽこポン!  作者: いぐあな
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九月十四日之事_____十ハ話目

「…………ん、……?」


湯あたりした翌朝、まだ寝ぼけ加減の頭で身体が妙に重たい事に気がついた。

どうにか目を開けたがまだ薄暗い。

照明を点すのに身体を起こそうとしたのだが両腕が痺れて言う事を聞いてくれない。

「ん〜……なんや〜?」

動かない左右の腕を見ると、右に黒、左には白い頭が有る。


「!」

一瞬で覚醒する。

よく確認するとそれぞれが腕にしっかり絡み付いているではないか!

ぶら下がっているのはすずと稚日わかひで間違いない。


すずはまだ良い。

買ってやったぽことおそろのパジャマ姿である。

問題は稚日わかひの方。

稚日わかひは和装 即ち浴衣姿…前も裾も思い切り肌蹴(はだけ)て帯のみで止まっている状態。

そのまま手足で右腕を抱き込む様にして寝ているのだ!


おまえはだっこちゃんか!?


「おい!起きろ!稚日わかひ!」

「………ん〜、……ひへへ〜おにいちゃ〜ん。」


「おにいちゃ〜ん やあるかあ!起きろー!」

「ん〜? ………………。ん?………!」

ようやく起きたらしい稚日わかひはスッと立ち上がると こちらに背を向け一旦帯を解き 何事も無かったかの様にピシッと身なりを整えて そのまま無言で台所に消えてしまった。


「……ちちうえ〜。」

尻尾と耳をぴこぴこさせるすずの寝言を聞きながら 呆然とするしかなかった。


ーーーそんな出来事の後の朝餉の卓。


稚日わかひは目を合わせてくれないし 話しかけても なんだかちぐはぐな反応するし 中々に気まずい。

朝も通力で着替えずに一々寝間着を整えたのも随分動揺して居たからなんだろう。

それをまだ引きずってる…と。


「お お兄ちゃん、お弁当です…。お仕事頑張って下さいね。」

玄関でも目を合わさないまま弁当を渡され 稚日わかひはそのまま台所へ…。

「ちちうえ 行ってらっしゃい。」

相変わらず綺麗なお辞儀のすずに見送られた。



昼休み、現場の駐車場の作業車内で弁当箱を広げる。


「あれ? 先輩、今日はハートマークが無いっすねー。妹ちゃんにフられました?」

いつもはゆかりふりかけで薄っすらハートを描いてるのに今日は無い。やっぱ 気にしてるんだろうか。


「違うわい。ってカツも弁当か?珍しいな。」

後輩の串カツこと櫛名田(くしなだ)克也…いつもはパンを買って来てるのに今日は何故か弁当を持っている。

「いやー、現場の入り口に弁当売りに来てるって聞いてたんでこっちにしたんすよー。」

「へえ、パン屋の売り子ちゃんはどうしたよ?」


「なんか 中学受験の勉強が大変で 家の手伝い辞めたそうで…あと一年以上も有るのにー。 俺 ハートブレイクっすよー。だから妹ちゃんに会いたい、お兄さんよろしくっす。」

「諦めれ。他にも良い子居るだろ。まりりんちゃんとかマモリーヌちゃんとか。弁当の売り子の人妻とか。」

「あー、あの売り子さん美人っすよねー。あの人の幼女時代想像したら(たぎ)るわー!」


あの売り子さん、どう見ても四十代半ば以下には見えないんだが…。

「おまえ…時々スゲエよな。ま、良いけど うちには近づくなよ。」




「あ、すまんが帰りに ちょっとだけ買い物するから ニャオンモールに寄ってくれ。」

「良いっすよー。」



「ただいま〜。」


「あー、とーちゃんおかえり〜!」

「ちちうえ おかえりなさい。」

ちょうど庭先でまりりんゴッコをしていた二人と会う。

マモリーヌの面を被ったぽこの挨拶を皮切りに まりりん役のすずと10体ほどのヌイグルミが次々とお辞儀をする。


以前、納戸から発掘したヌイグルミが 何故か付喪神化したらしく、最近 二人と共にまりりんゴッコをする様になったのだ。


まだ二人は遊ぶ様なのでそのままに 自宅に入る。

「ただいまー。」

「お兄ちゃんおかえりなさい…。」


朝以上に声に元気が無い。

稚日わかひは随分と落ち込んでいる様子だ。 あれからまた何か有ったのか?

ともかく話しを聞いて慰めねば。


「あのな、今朝の事なんだけど…。」

「すみません…随分とはしたない真似を…………………。」

やはりまだ気にしてるのか謝る声も小さい。


「あ、いや、稚日わかひも もう気にしなくて良いからな。俺はもう全然 気にしてないからー。」

「え?……………あの……気になりませんでしたか?」

稚日わかひが一層落ち込んだ様に見える。 なんか言葉のチョイス間違えたか?

よく分からんが取り敢えず話を最後までしよう。


「いや、一緒に寝るのは構わんよ。でも、俺も男やから間違えて何かの弾みで 色々致してしまうかも知れんからな。その、今後は……………。」

「!………あの! それって、お兄ちゃんがわたくしに…その……男性として……絵草紙みたいに…あっ!…で、にゃっ!…って言う事ですか!?」

いきなり大きい声で何言い出すんですか!この娘は!


「あ?ああ、そのーそういう間違い事が無いとは言い切れないからな。それで…。」

「良かったーーー! 昨夜湯あたりしたお兄ちゃんに『付き添って寝る』とすずが言い出したのです。ですがわたくし一人では寝るのが怖くて………で、わたくしもお兄ちゃんと一緒に寝たのですが、寝ぼけたとは言え あのようなはしたない事を………。でも、お兄ちゃんの反応が余りにあっさりで、はしたなくて恥ずかしい 以上に胸も女陰(ほと)も 擦り付けるまでしても 猶 食指も動かぬほど わたくしには色艶(いろつや)が無いのかと。なんと申しましょうや、もう女としての尊厳の様なものが ガラガラ崩れ去るかの様で………。」

そう言って涙目になる稚日わかひ


なんか落ち込んでる方向が思ったのと違ったー! 何これー!


「いや、今朝は起きた時から腕の付け根から痺れ切ってて、腕が何かに触ってるのも全く分からなかったんだよ。」

「お兄ちゃん、もうそんな事はどうでも良いのです! これからは遠慮なく間違って下さって結構ですよ。」

稚日わかひさん暴走して とんでも無い事言い出したー!

どうにか話を元に戻さねば……………………。


稚日わかひ、これ。」

稚日わかひに紙袋を差し出す。中にはパジャマとショーツとスポーツブラ。

店員さんにもスゴい目で二度見されたりして、これ買ってくるのマジで超はずかしかったんだからー!

「何です?これ。」


「現代の女性の身につける肌着、と寝間着です。一緒に寝るならこれ着なさい。」

「え?……………でもー、これだとかなり間違え難いですよ?」

だーかーらー、間違えちゃいかんだろ!

「でないと一緒には寝ません。」


「じゃあこれ着ますからこれからは毎日一緒に寝ましょう!良いんですよね!お兄ちゃん!」



なんか凄く 対応間違えた気がする。

「布団は別だからな…。」


いつの間にかぽことすずも戻って来てた。

「ぽこもとうちゃんと一緒に寝たいなー。」

「……………………すずも。」




まあ、みんな一緒なら変な間違い無くていいか…。


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