表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポコぽこポン!  作者: いぐあな
17/45

八月二十三日之事_____十二話目

今日は特売目当てで 近所のスーパーに買い物に来ている。

このスーパーは普段から安いが特売のタイムサービスが輪をかけて安いのだ。


人数制限回避の為も有って ぽことすずが一緒に来ているのだが、店の前で 近所のサービス目当てのおばちゃん連中に捕まって 揉みくちゃになっている。

ここですずに初めて会った時は気がつかなかったが あの時は既に散々モフられた後だったそうだ。

ぽこは色合いが地味な所為で今までスルーされていたが、すずとコンビになったお陰で無事モフられ対象に昇格したっぽい。

「ちちうえ〜。」 「とうちゃ〜ん!。」


どうやらすずは 以前から割りと頻繁に買い物に来ていたらしくこの界隈で人気者だそうだ。

「わたし、前からこの子のファンやねん〜。ホンマ カワイイわあ〜。」

と すずをモッフルしているファンシーな手提げの主婦が教えてくれた。

尻尾有りケモ耳コスで真っ白、と言う属性山盛りな子供巫女が 大きな買い物かご提げて いなり寿司だの お揚げさんだのお萩だの買ってたら構いたくなるわな。

それで ぽこがケモ耳や尻尾出したままでも 殆ど騒ぎにならなかったのか、と納得。

ある意味の上位互換が先に居るんだからそらそうだわな。


無事にモッフルタイムも終わり、買い物カートを押しもって先を行くぽこ達に買うものを指示しつつ店内を回っていると不意に声を掛けられた。


「まぁまぁ、慎太郎さんや〜。ずいぶんご無沙汰してやして〜。」

相変わらずの謎方言の安寿さんが巫女装束で立っていた。 …慎太郎さん?

「あー!おかんや〜!」

すかさずぽこが飛んでいく。すずは丁寧にお辞儀、すずはこの辺しっかりしている。


「福里さんお仕事帰りでs…「嫌やわあ〜、安寿で良いのんえ〜、慎太郎さん。 成さぬ仲の子もある仲やんに〜。」…。」

………これ…なんか色んな意味で非常に拙くないか?


笑顔でこちらの言葉を待ってそうな安寿さん…………ひょっとして何事かの言質取る気マンマン?

「…は、…ハハハ、安寿さん、ご冗談上手いd…「ん〜、遠慮のう呼び捨てになさりんなんし、『あんじゅ〜』いうて〜」…………あ、いえ…。」

こちらの台詞に食い込みながら、間髪入れず しなだれ掛かる安寿さん…冗談にしてもこれは拙い!非常に拙い‼︎

話題を変えて退路を確保せねば!

「今日はぽこちゃん連れて帰りますか?」


「とうちゃ〜ん! ぽこって言え〜‼︎ 」

この最悪のタイミングで父ちゃんとか言うなー‼︎


「ぽこ〜、父ちゃんと一緒に帰ろうか?」「うん!」

安寿さんがぽこに乗っかりやがった…。大ピンチ‼︎


「ちちうえ〜。」

安寿さんが腕を絡めようとする、その僅かな隙間に 見事な体捌きで身体を差し込み俺に抱きつく すず。

実にさりげなく足を使って安寿さんの手を払って遠ざける所を見ると狙ってやったのがよく分かる。

グッジョブ!すず‼︎

ここはすずの頑張りに乗って場を中和するっ‼︎

「はははは〜ウチで預かってる すずしろちゃんの冗談の影響で 最近二人して父親呼びでしてねー、未婚なのに困りますよーあはははは〜。」

これで どうだ‼︎

「……………………ちちうえ…すずって呼んで。」

うん。この場では言わないけどすずの父親でも無いな。

「おや? この童子(わらし)……摂社のなずなはん処の…………。へぇ〜?どういうことやろ〜……?」

何時もの笑顔と違う…氷の微笑みとでも表現すべき笑顔ですずを見つめる安寿さん。


「どうという事も無いわえ。わらわがダーリンに頼み込んで養育して貰うて居るだけの事じゃ。」

声の方を見るとすずの髪色と同じく真っ白な御髪(おぐし)の巫女さんがこれまた凍てつく笑顔で立っていた。

すずはその女性に向かいお辞儀をしている。

「………お社様。」

どうやら彼女が先日電話で話したなずなさんらしい。そう言われれば この声と言い種には覚えがある。

「すずしろ、今日のわらわはそなたの母じゃ、遠慮は要らぬ。ささ、来やれ。」

そう言った途端すずお得意のタックルが飛び出す。

「ははうえ〜。」

結構な威力のあるすずのタックルを事も無げに受け止め抱擁する姿はとても絵になっている……。


いや でもね、いい話の展開っぽくも見えるけど これって普段の親子のスキンシップとか あんまり無かった臭いよね。

公私の区別も大事かもだけどさ、情操の育ちが悪いとか明らかにこれが原因だと思うんだけど⁉︎


それはともかく 初対面、挨拶は大事だ。

「初めm…「ダーリン、早速の逢瀬じゃ、親子水入らずで夕餉にて一献傾けようぞ。さすれば夫婦(めおと)、親子の繋がりも一層深まろうと言うものじゃ。 それ、すずしろも。」

「…ちちうえ、好き。」

挨拶しようとしたら冒頭から言葉の力でねじ伏せられた感じになった。


そんななずなさんに安寿さんが一刺し入れたのを なずなさんがやり返す形で嫌味の応酬が始まった。

「ちょいとなずなはん、あんさん あてぇと慎太郎はんのあいだに 後から割り込んで嫁気取りとは…ちぃとお行儀悪うおへんかえ?」

「ふん! わらわと同じ時間(とき)を生きて尚 神使の身が分を弁えず対等の口利きとは 恐れ入る。お主の言う行儀とやらも底が知れるのう。」


間に獲物を挟んだ捕食者同士の牽制、って感じがして とてもおっかない。

………止めなきゃいかんのだろうが… 正直言ってあんま手出ししたく無い。

だって……手を出したらその手を食い千切られそう。


「子を孕み、産み育てるいう自然の摂理反故にして少ぅしばかり神坐に納まるのが早かったから言うて偉そうに。おのこ(男子)にがっつき過ぎやろ、これやから行かず後家は何とならんのや。」

「ふん! あっちでもこっちでも種を貰うて孕まねば収まらぬとは獣の性とは(まこと)不便なモノよな。心底同情するぞ。……百姓は増えすぎた害獣駆除が難儀じゃろうからなあ!」


こんな感じの 鋭い言葉での 刺しつ刺されつ が止まらない。

…………………………女って怖い。


どうにか出来ないか、と 縋る気持ちでぽこを見ると普段の母親とのギャップに驚いてか固まって居る。前に『おかん、怒ると怖いねん』とか言ってたが 多分怖さの種類が違うんだろう。

すずはと言えば、こちらは慣れているのかこっちを見て「…………むり。」とかぶりを振る。


諦めた俺は二人が嫌味の応酬に夢中になっている間に ぽこを抱え上げ すずにそっとカートを押してもらい素早く買い物を終わらせ、そのまま大急ぎで帰宅した。



「という訳でさ、ホント怖かったわー。 二人とも今晩うちに来るのかなー。いや、来るのは良いけど あんなのはやめて欲しいなー。」

余りに怖かったので、帰って早速わかひに愚痴る。

「あのお二人は昔からそんな感じですからねー。」


「それでも、まあ 今晩はもう来ないと思いますから安心してお休み下さいませ、お兄ちゃん。」

「わかひ、何かしたの?」



「はい。夫婦(めおと)(えにし)を 御二方と手の届く範囲の雄の狐狸全てとの間に 結んでおきました。」

「えっ⁉︎」

「相手をしようと 逃げようと、……少なくとも三日三晩くらいはどうにもならぬでしょう。」うふふ


ごめん、お兄ちゃんはあの二人よりわかひさんのその氷点下の笑顔の方が怖いです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ