わからない
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「……ここはどこだ?」
気がつくと蓮斗は奇妙な場所に居た。
まるで闇に覆われたかのような世界には太陽どころか光さえも感じられない。
自分ひとり、ここに閉じ込められたかのようだ。
記憶通りなら、マテリアルを倒したと同時に視線が横になって気を失ったこと。
傷だらけであった体はすっかり元通りになっていた。
??「やぁ、初めまして……じゃないよね?」
突如として、蓮斗の後ろの方から女性らしき声が聞こえた。
振り返るとそこには、黒いゴスロリ衣装を着た美少女が立っていた。
腰まで伸びた赤い髪はまるで灼熱の炎を思わせるかのように美しく神秘的であった。
その瞳からは、全てを見尽くされているかのような感じが伝わってくる。
しかし、それと同時に悲しいようにも見えた。
蓮斗「お前は誰だ?」
??「ーーーっ!? やっぱ覚えてないんだね……」
覚えてない。
その言葉から俺の彼女は何処かであったことがあるのだろうか。しかし、いくら思い出そうとしても思い出せない。
実を言うと、蓮斗は12歳の時にトラックに轢かれ、頭を強く打ち、瀕死の状態になったのだ。
目覚めた時は、医師は「奇跡だ……」とつぶやいていた。特に、天荒姉さんは優しく抱いたまま、ものすごく泣いていた。
それからというもの状態も良くなり、記憶喪失にならなかったために、2ヶ月ほどで退院できた。
彼女とは初対面のはずなのに、何故だか懐かしいと感じる。
蓮斗「う、うぐあぁぁぁ!」
突然、頭に激痛が襲った。あまりの痛さに立っていられず、そのまま倒れてしまった。
彼女の事を思い出そうとすると、何故か頭に激痛が走る。
??「汝に安らぎを……」
彼女が呪文のような言葉を発し、手を蓮斗の頭に向けると、緑色の不思議なオーラが発生し、優しく包み込んだ。その光はとても暖かく、不思議な感覚だった。
オーラが消える頃には激痛も嘘のようになくなり、立つことができた。
蓮斗「すまない、思い出そうとしたんだが……」
??「別にいいよ。それより、君はなんでここにいると思う?」
何故、ここにいる?と言われても、ここがどこだか見当がつかない。
蓮斗「わからない。ここがどこなか。なんで、いるのかもな」
??「ジェネレーション」
彼女のから出た言葉は蓮斗の表情を一瞬にして変えさせた。
ジェネレーション。普通なら女性にしか起動することができない超次元武装。理由は未だに解明されてない。
しかし、蓮斗は男でありながらジェネレーションを起動させたのだ。
??「君は男で唯一、ジェネレーションを起動する事ができる。違うかい?」
蓮斗「………」
一体、彼女はどこまで知っているのだろうか。下手な返事は出来ない。
あの時は、大怪我を負っていつ死んでもおかしくなかった。
ただ、誰も救えない自分が惨めで悔しくて力を求めたら謎の声が聞こえたのだ。
その結果、蓮斗はジェネレーションを起動し、マテリアルを撃退したのだ。
??「君はその力をどうするんだい?」
少し棘のある言い方だった。
蓮斗自身、この力が何なのかはわからない。
……ただ、わかることは、ものすごく強力であり、自身をも滅ぼしかねない事だ。
??「事実、君は一歩ずつ進化している。ほら、これを持ってみてよ」
彼女は銀色のボールのような物を蓮斗めがけて投げてきた。
それを見事にキャッチし、確認してみた。
見た目はただのボール。重さは少し重めのバスケットボールといったところだろう。
??「それを地面に落としてみて」
言われた通り、ボールを地面に落とす。普通なら、ポーンとバウンドするはずだが……
ドガ!
バウンドするどころか、大きな音をたて、地面にえぐり込んだ。
驚きのあまり、声が出なかった。
??「それは、100パーセント鉛でできてるんだよ。重さは……300キロってところかな」
蓮斗「300キロって……」
全国の男性が両手で持てる重さの平均が大体70キロだ。その5倍の重さを蓮斗は片手で軽々と持ち上げていた。
よく見れば、両腕がかなり太くなっていた。
??「さて、そこでこんな質問!」
彼女の提案にこいつ何言ってんだ?と思った。人が真剣に悩んでいたのに、クイズ番組みたいに話しを進めやがって。
??「君はその力を使ってどうしたい?」
笑顔だった目が一瞬にして、殺気に近い威圧を放ち、鳥肌がたった。
返答を誤れば殺される。
簡単なようで、実はとても難しい。
将来は何になりたい?はと聞かれて、幼い頃は無知な為、宇宙飛行士やケーキ屋さんなど簡単に言えた。しかし、成長するにつれ、現実をしり、自分がどうしたらいいのか路頭に迷ってしまう。
どこに進学するの?よく、担任の先生に聞かれてどういったらいいのか迷ったものだ。正直に言えば、「やめたほうがいい。公務員なんてどうだ?」と安定を求める方向へと誘う。
大体は自分に嘘をついてしまうのだ。
蓮斗「……わからない」
??「わからない?」
蓮斗「自分がどうしたらいいのかわからないんだ……」
悩んだ挙句に出た答えがわからないだ。情けないものだ。もし、ここに服部がいたとしたら「モテモテのハールムを作る!」とか言っていたかもしれない。
馬鹿らしいとは思うが、それでも答えだ。俺は答えるどころか、逃げたようなものだ。
きっと彼女にも呆れられたはず……
??「ふふ、面白いね。わからないか。ふふ……」
それどころか口を押さえて笑っていた。正直、傷つくんだが。
??「まぁ、今の君にはベリーグッドな答えかもしれないね」
蓮斗「そ、そうか?」
??「君らしいというか、なんというか。やっぱ君は面白いよ」
どうやら蓮斗はとても気に入られたようだ。
??「そんな君に、僕からプレゼントだよ。」
彼女は蓮斗に近づいて……
??「ふふ、またね〜」
蓮斗のほっぺたにキスをしたのだ。
未だにほっぺたが暖かい。
蓮斗「なんだ?」
ポケットが光っており、取り出すと赤い宝石をつけたペンダントが出ててきた。光は一層輝きを放ち、暗い世界を一瞬にしてこの世から消し去った……
お久しぶりです!