入学式!
小学生の頃に体育館でよく遊んではいたのを覚えている。全てはここから始まり、ここで終わるのだ。
最新式ドーム型体育館には、初々しく顔を赤らめ、期待と緊張でガチガチの新入生約100人ほどが着席しそれぞれの席へと座る。
今まさに、ジェネレーション・センター学園高等部の入学式が行われていた。
服部「みろよ、あれが今年の特務科の生徒だ。中々の美形揃いだな。」
壇上で理事長らしき人物が祝辞を述べているのにもかかわらず、服部は女の子に夢中だ。
蓮斗「………まぁ、確かにそうだな。」
この入学式で新入生はベルリンの壁を思わせる赤い絨毯を歩き別れていく。
特務科は左へ。整備科は右へ。仲が悪いわけではないが東西冷戦のようだ。
隣を歩いているのは厳しい訓練と筆記試験を勝ち抜いたエリートだ。隣を歩くのが申し訳ない気がする。
それでいても整備科もかなり人気で競争率はいつも高い。
蓮斗は元々頭がそれなりに良かったため、中間あたりで合格できた。服部はというと持ち前のどエロ根性でギリギリ合格した。
先生なクラスメイトもたいそうびっくりしていた。両親に限っては大泣きしながら、「今日は、宴会じゃ!!」とか騒いでいた。
服部「ああ、もし俺にジェネレーションを解放することができたら、今頃は酒池肉林のハーレムだな。純粋な乙女たちの中に狼が1匹。想像するだけでも……にひひ」
こいつの考えている事は単純でわかりやすい。というか、その不気味な笑い声をもう少し抑え欲しい。前の男子生徒が寒気を感じたのかブルブル震えてるぞ。
服部の話を聞いて思い出したことがあった。
蓮斗「そういえば、そろそろ第4世代型のジェネレーションがテスト段階に突入なんて、ニュースが流れてたな。」
服部「知ってるよ。世界初の男性専用のジェネレーションのことだろ?」
これまで、女性しか発動し起動するしかできなかったジェネレーションがついに男性が発動できるまでに至ったのだ。起動するにはまだ調整が必要なんだとか。
服部「でもよ、それじゃ俺の目標のハーレムが砕けちまうじゃないか」
それが、現実になったら恐らく多くの男性が我先に名乗りあげるだろう。
蓮斗「専門家の予想だと、実用化にはまだ5年はかかるみたいだな。その頃は俺たちもとっくに就職してるだろうよ。」
服部「ちぇ、やっぱり無理なのか。」
蓮斗「そんなにハーレムが欲しければ丁度いい職業があるぞ?保育士なんてどうだ。給料は安いがお前の大好きな幼女がたくさんいるじゃないか。」
それを言った途端、それだ!!と言わんばかりの表情で手を強く握りしめ悔しそうなそぶりをしていた。
服部「その手があったか!お前は頭がいいな!よし、俺は今から保育士の資格を目指すぜ!」
まぁ、この学園では様々な資格が取れるから問題はないか。しかし、給料がいいジェネレーション整備士を捨ててまで他の職業に就く事はまず考えて去る事はない。
蓮斗「運が良ければ、専属の整備士になれるかもしれないぞ。ここの卒業生の殆どは誰かの専属整備士になる。」
給料も安定しているし、中には結婚した人までいる。相棒ではなく人生のパートナーになるのだ。運が良ければだが。
理事長「それでは新入生代表挨拶。特務科、鬼頭凛音さん!」
2人ともくだらない雑談をしていたせいで理事長が何を話していたかは聞いていなかったが、次の言葉を聞いて、話をやめて静かになった。
その人物が壇上に上がると会場の空気が一気に静かになり生徒全員の視線がその生徒へと向かれた。
服部「鬼頭凛音……生きる伝説だ。」
蓮斗「わずか12歳で、ジェネレーションを解放し、グラウンドフォースに入隊。戦う姿から、漆黒の舞姫と二つ名がついている」
グラウンドフォースは異次元からやってきた怪物マテリアルと戦う軍事組織だ。そこに所属するのがジェネレーションを駆使して戦う戦士達のことをストレンジャーと呼ぶ。
蓮斗「凄いな。そんでもって何でここに来たんだろうか」
服部「天才の考えている事はよくわからないぜ。俺なら面倒くさいからいかないけどな。それで、どんどん活躍して女の子にモテモテになってやるのに」
理由は定かではないが、色々な噂が立っている。
しかし、それを思わせないかのように堂々とステージに上がる。
すらりと引き締まった体は誰もが憧れることだろう。神秘を思わせる黒い髪を頭の後ろでひとつにまとめ、凛とした表情をたまっている。
黒く輝く瞳からは殺気に近い威圧を放ち、独特の存在感を全身から放出している。
そんな女性がくまさんパンツを履いていようとは誰もが思わないだろう。知っているのはこの2人だけだ。
彼女にちょっかいをかけようものなら即座に抹殺されそうだ。同性出会っても近寄りがたいだろう。
妙な空気が漂う中、鬼頭凛音は理事長へ敬礼をささげ、深呼吸をした。
「マテリアル達は勝手にないくらい、力をつけ確実にこの人間社会を破壊するだろう。だが、私は諦めない。何故なら、我々にはジェネレーションがある。私はこのジェネレーション・センターにてさらなる実力をつけることをここに誓う! 新入生代表、特務科一年、鬼頭凛音」
爆弾発言ともいうべきだろう。あたりは一瞬で静かになった。教師達もどう反応していいか迷っていた。
しかし、思い出したかのように多少戸惑い気味ではあったが拍手がなる。
鬼頭凛音は何もなかったかのように一礼し、壇上から降り、席に戻った。
服部「おっかね〜。あまり関わりたくないな」
特務科の生徒たちの中でさえ、異彩な存在感を放つ彼女はまさに恐怖の対象出会った。それを覚えたかのように服部が話しかけてきた。
周りからも次々と彼女を噂する声が聞こえてきた。
生徒A「練習中に相手を半殺しにしたそうだ」
生徒B「言いよってきた大物政治家や資産家の息子を次々に車椅子送りにしたんだとか」
生徒C「山でくまに出会った時、目があった瞬間熊が死んだらしい」
にわかにも信じがたい噂ばかりだ。