久しぶり
二週間ぶりの学校。普段は面倒くさいとか行きたくないとか言っていた頃もあったけど、我が家に帰ったかのようで落ち着くことができた。
小十郎「お、久しぶりでござるな蓮斗殿」
安彦「マテリアルに襲われたって聞いたけど大丈夫だった?」
療養中は面会お断りだったため、二人の顔を見たのも二週間ぶりだ。
蓮斗「ああ、運良くかすり傷程度で済んだよ。しかし、困ったもんだよ。事情聴取だけで、学校を二週間も休まされるのはな」
小十郎「まぁ、唯一の目撃者が蓮斗殿でござるし、それくらいは、よくあることでござる。拙者の知り合いも同じ目にあって、1ヶ月間監禁に近い形で事情聴取されたと聞いたでござる」
靖彦「まぁ、怪我なく良かったじゃない」
蓮斗「それもそうだな」
二人が心配してくれる。しかし、事情聴取されたなんてのは真っ赤な嘘だ。
本当は数カ所骨折しており、尚且つ腹部に拳2個ぐらいの穴が空いき、出血が酷かった。
医者も、奇跡としか言いようがないとか言っていた。一体どれだけ酷かったんだろうか。
多分、修正かかるだろうな。
それよりも、今は解決しなければならない問題がある。
先ほどから感じる殺意の視線。振り返るとそこには悪友である服部がいた。
一歩一歩、進むごとに殺意が重くなる。普通は逃げるべきだと思うが、こういう状態の時の服部はゴギブリの如く生命力を発揮して世界の果て……いや、地獄の果てまでついてくる。
あー、思い出すだけでも嫌だ。
療養中は携帯も没収され、担任した時に渡された。家族や友人からは安否確認のメールが沢山とどいてる中……
とある人物からは9999+までメールが来ていた。
殺すや呪ってやるなどをリピートしたメールや、中には音声付きのメールが送られてきて、何かをトンカチで打ちつけているような音と雑音に紛れて虫の鳴き声が聞こえた。
一通りは確認したが、まだ半分も行っていない。メールの確認だけで充電が切れるとかある意味感動だ。
まぁ、内容は全部同じだろうからまとめて消去しておいた。
蓮斗「やぁ、服部君!今日もいい天気だね!?」
服部「………………」
蓮斗「そうだ、元気のない君にはこれをあげよう!」
とある熱血芸能人の真似をしながら、カバンから包み紙を取り出し、その中身を見せた。
蓮斗「どうだ!幻の名作、聖ロレンス魔術女学院!お前の好きな、ロリものだ!」
現存すること自体が貴重な本のため、売ればマニアから数十万円で買い取ってもらうことができる。
そんなものを高校生である蓮斗がどうやって手に入れたかは内緒だ。まぁ、誰だって裏ルート的なものがあるようなものだ。蓮斗にもそういった類のものがある。
ロリコンな服部からすれば、喉から手が出る欲しいはず……
ばさ!ビリビリ!
服部は、本を取り上げたかと思うと、すぐにそれを縦に破いた。
驚きのあまり、声も出なかった。
本を破られた事よりも、服部が破いた事が驚きだった。
ポカーンとしていると服部が口を動かした。
服部「俺はな……もう、二次元よりも素晴らしいものを見つけたんだ」
蓮斗の肩をポンポンと叩きながら、鬱散くさいセリフを吐いた。
服部「今までの俺は、二次元でしかあり得ないかと思った。しかし、俺は遂に運命の出会いというものを知ったんだ!いたんだよ!女神が!現実に!」
こいつ何言ってんだ?とクラスの全員が思っただろう。
しかし、服部を現実世界に引き戻すほどの人物なんていたっけな?俺の記憶だと……
京子「は〜い、皆さん授業始めますよ〜。」
考えていると、担任の京子先生。通称鬼子ちゃんがやってきた。
ああ、相変わらず背が小さいから、教壇からはおでこしか見えてない。
苦労してるなーと思ってると
服部「先生!これをお使い下さい!」
その小さい担任のために、土台をまるで神に捧げるかのような格好をしながら渡している服部がいた。
ていうか、さっきまでここにいたのにいつの間に、しかもどっから持ってきたんだあの土台?
京子「あ、いつもありがとう。ふふ、やっぱり服部君は優しいですね〜」
服部「いえ! これくらい当然です!」
敬礼をしながら、元の席へと戻っていく服部。とあるラノベの主人公にそっくりであった。
なんとなくわかった。服部を現実に戻したのは京子先生に間違えない。多分俺たちよりは年上だろうけど、どう見ても幼女にしかみえない。
ロリコンは治らなかったようだが、現実に戻っただけでもいいほうか。
まぁ、取り敢えず助かったとでもいうべきか。
京子先生まじ感謝!
蓮斗は京子に合掌するのであった。
京子「はーい、では授業を始めます……と言いたいところですがここで転校生を紹介したいと思いまーす!」
転校生という言葉に、教室がざわついた。まぁ、変な時期ではないし、転入する時期にはうってつけだと思うが。
京子「はーい、ではどうぞ!」
京子がそう言うと、「失礼します」という声と同時に二人の人物が教室に入ってきた。
男子たちからは「おお!」という黄色い声が浴びせられた。
お姫様のような不思議なオラーを放つ金髪の女性と、それに寄り添うかのようにそり立つ赤い髪の少女。
蓮斗は驚きのあまり、目を見開いた。
アリスレット「初めまして。イギリスから来ましたアリスレットです」
レベッカ「同じく、従者のレベッカですお見知り置きを」
二週間前に助けた人物がそこにはいた。




