7 異世界の挑戦
ヤシロと安全な場所に避難させて俺はシンのいる町に戻る。
盗賊団の壊滅は報告しないとシンと決めていた。
(下手に目立つと余計な敵を作る。今は力は蓄えるべきだ!)
しかし、この力は、あの影の少女から貰った力は凄まじいの一言だった。
(これから、案外楽に進めるかもしれないな!しかし、アレを信用するのも危険か!)
そんな考えをしていると、
町の様子がおかしい?
明らかに慌ただしい様子の町に警戒する。
近くの住民に話を聞くと、第1王子が来訪してきたらしい、
(となる、シンは?あの一番デカい中央の建物か?)
魔法により、シンがいると思われる建物に侵入、
偽眼はすでに効果切れなので、足で探すしかなかった。
立派な建物なかは宮殿ような作りで、贅の限りを尽くしている。
スラム街はもちろん町の中すら、ここまで立派なものはない。
思った以上に格差は酷いのかも、
そしていると一際警備の厳重な部屋があり、
そこから怒鳴り声が聞こえた。
「何故ですか、兄上!私はただ!!」
「何度も言わせるな、お前に才能はない!!」
「!!」
「奴隷のことなど知らんし、これからも制度を変えるつもりもない!!」
「しかし……」
「何もできないなら黙っていろ!俺は王になるため力を集める!!」
「そのために戦争をしてもですか?」
戦争?どうやらまた厄介ごとか!
何とか『偽眼』を部屋に忍び込ませた。
シンと護衛に守られた大男、全体的に黒い鎧のようなもので武装している。装飾品も見事なものでいくらするのか想像もできない。
「アレス兄上どうかお考え直し下さい」
「くどい!!もうお前に話すことはない!!これ以上、王族の恥をさらす前に学園に戻れ!!!いいな」
部屋から退出するとき男が一瞬こちらを見た気がした。
『偽態』で姿を隠した『偽眼』を見つけられるわけないが、この視線はこちらに向けられた気がした。
ーーゾクッ!!!!!!!ーー
(なん!?この威圧はヤバイ!?)
幸いそのまますぐに部屋から出て行き。こちらを気にする素振りは見せなかった。
(あれは、気付いていた?なのに無視したのか?)
獅子を前にしたような錯覚を起こすほど、圧倒的な存在だった。
(油断してた!あれが相手ならこちらも全力を尽くしかない!)
それから、1時間ほどしてシンの部屋に侵入して、
シンはベッドに腰掛け、頭を上げようともしない、
「おい、甘ちゃん王子!現実の荒波に飲まれた感想はどうだ?」
「最悪の気分さ……大切を失い、子供たちは守れず、兄上には罵倒される。……こんなことを望んだつもりじゃなかったのに……」
「ヤシロを助けるときに聞いたがあのガキどもはどうするのかって!その選択がこの結末だ!!受け入れろ!」
きついことを言うがこれくらいで落ち込んでいたら王にはなれない。
あの兄が相手ではなおさらだ。
たがらこそ俺はコイツを甘やかさない。
「で、どうする?さっそく諦めるのか?」
「いやだ!私はもう誰も守れないなんていやなんだ!!」
「安心したぜ!!あの獅子みたいな兄に心折られたこと思った!!」
「兄上は『黒獅龍≪こくしりゅう≫』と呼ばれるほどの豪傑だからな……」
恐ろしい呼び名だな!おい!
まあ、迫力満点ではあったな、
(それでもあの影の少女ほどではない!やってやるさ!!)
「これからどうなる?」
「私は国家運営の魔法学校で軟禁状態になるな……」
「魔法も使えないのに?」
「見せしめかな?魔力はあるが魔法も使えない王子として周りからいい嘲笑になるから……」
「なるほど、恥さらしといいながら、晒し者にして権力争いから落とす気か?でも、お前にそこまでの価値あるのか?元から王位争いは絶望的なんだろ?」
「私個人としてはな……しかし、父上が…前国王は何故か私を押していたらしく、何人かの重鎮は私が王になるように手回しをしている。
それも傀儡政治が目的だろうがな……」
「だから、魔法は使えなくても、他の王子、王女からは警戒されてると?」
「そうだ、魔法学園には多くの貴族も集まるからそこで失態を晒せば私の王位は遠退くだろう」
こんな甘ちゃん王子になんで釘をさすのかと思えば、そんな理由か!
だか、好都合だ。これはアレが使える。
「貴族とやらは、そんなに王になる儀式に関係あるのか?」
「直接にはない、儀式は一人で望むのが決まりだ!
しかし、その儀式には多くの貴族の賛同がいる。
王子なら普通は参加を許されるが魔法も使えない私はその限りではないだろう」
なるほど、儀式そのものに参加できないのか!
「なら、必要な時に俺と変われ!」
「えっ!!」
「忘れたか?俺たちは体を入れ替えることができる!それも俺はお前の体でも魔法が使える!!」
「あっ!!」
どうやら、分かったらしい!
「俺がお前の影武者として学園で結果を残す!!だからお前は一人で多くの味方を作れ!!」
「だかいいのか?君にかなりの迷惑をかけてしまうぞ!見返りも保障できない!」
「今さらかよ!!まあ、俺も学園で元の世界に帰る方法を探すから、それでいい!!」
お前は何も気にせず王を目指せ、
俺が裏から全てを操り、全てを騙してやる!!
そうだ、『親父』よ『理香』もいつの間にかいなくなった。
もう嫌なんだ。『親父』のことが嘘にされるのも、『理香』付き合ってたの嘘だと言われるのも!
誰かに置いていかれるのは、
嫌なんだ正直に生きて、周りから騙されるのは、
だから俺は全てを騙してでも思い通りにしてみせる!!!
「それで、いつ出発するんだ?」
「明日の早朝に王家専属の馬車が迎えにくる!」
「なら、うまく忍び込むさ!もしくはお前の荷物に紛れるか?」 「おいおい!簡単言わないでくれ……フッフッファアハハッ-!!」
「どうした?急に笑って?」
「いや!すまない、ヤシロが死に、みんなが死んで、失意のどん底にいるはずなのに、一人ではないとこうも気が楽になるのかと思ってな!」
「それは……気のせいだ」
「かもしれない、それでも君がいてくれるから、私は一人ではない、これからもよろしく!セイ!」
「あ…ああ!よろしく!シン!」
ぎこちない笑顔を浮かべながら握手をする俺はどんな気持ちだったのか、自分でも分からない。
中学時代に、
(セイ!大丈夫かい?)
(うるせーソラ、テメェに俺の何が分かる!?)
彼女が失踪して、『親父』のことも思い出して、両親は逮捕されて、とにかく不安定で自暴自棄な俺に付き合い続けたバカがいたな。
(で、暴れるだけ暴れて満足かい?
3年最強のエンさんに喧嘩売るなんて無謀だよ♪
そんなボロボロになって!)
(う、うる、せー、俺は、絶対に、認めねーーー!!!)
(なら、世界と向き合いなよ!そして今度は大事なものを守るためその力を得ればいい!)
(どんすれば、いい?)
(君はどうな力が欲しいの?)
(どんな真実も嘘にしてしまいた!
あんな屑両親が俺の親なのも、
『親父』が急に消えるのも、
彼女が失踪したのも、
全部嘘にしたい!ウァアアアーーー!!)
(それでいいよ、セイ!いまはそれでね♪)
今度こそ俺は嘘を本当にしてみせる。この世界でコイツの偽者として挑戦してやる!!!




