3 異世界での邂逅
前に盗賊から奪った馬を連れながら、町で服と日除けのマント、靴、ナイフ、水筒、保存食、その他旅に必要なものを買った。
流石は交易路の町だ。
屋台や店も多くて、物が豊富で安い、銀貨4枚を使い装備を整えた。
(かなり出費したな、まあ仕方ないか!また盗賊でも狩るか)
さて馬で駆けること30分、前に来た岩場に到着する。
「この辺で俺たちは倒れていたんだが、そういえばなんだシンは気絶してたんだ?」
「私にもよく分からない、賢者の墓を探していたら急に暗くなったと思ったら気絶していた」
その時、馬もいなくなってしまったらしい、流石に徒歩で砂漠を旅してたわけじゃなかったか。
しかし、俺と同じ現象か?でも別の場所に飛ばされた訳じゃない。
(まあ、考えても分からないか!気を取り直して墓を探すか)
「なあ?いまさらだが俺たちのやろうとしてることは墓荒らしで犯罪なんじゃ」
「うぐっ!!それはそうなのだが」
「なんだ理解してたか?なら、覚悟を決めろ!大切なもののためなら命懸けで足掻け!」
「わ、分かった!」
本当かよ、っと思ったがいい。
こういうのは実際に経験しないと分からないし理解もできない。
きっといつかコイツも知ることになる。
大切なものを守るため追い詰められることの尊さと切なさとその心苦しさを、そして絶望する。
「まあ、色々と覚悟をしておけ、どの道遅かれ早かれ通る道だ」
「あ、ああ、何故かやけに説得力ある言葉だが、善処してみる」 「で、賢者の墓の情報はあるのか?」
「噂程度の情報しかないが、賢者の幽霊がこの辺りでよく見られるらしい」
「おい。まさかそんな情報を信じてこんな砂漠のど真ん中を歩いて訳じゃないよな?」
「まあ、賢者の噂は何処の国でもあるし、この辺りが伝説の賢者の出身地であるという伝承もあるが、私がここのこと知ったのは王家の伝承で我が一族はその賢者に魔力を貰ったと伝えられてる。
そして賢者に感謝して出会ったこの砂漠に弔ったと」
「それで、ここに墓もあるって思ったのか?」
「ああ、最近は幽霊の噂もあり多くの人間がここに賢者の墓があると言っている」
少し考えると信憑性に欠けるが、幽霊とやらに興味がある。もしかしたらその幽霊が俺をここに呼んだのかもしれないし、他に手掛かりもないなら、それに縋るしかない。
「その噂がガセネタじゃないことを祈るぜ!」
「ああ、伝承や文献だけだかこの地は確かに賢者の地なのだ。きっと何かあるはずだ」
王族に魔力を授けた賢者ねぇー、胡散臭さがあることを思い出して考え直す。
そう、俺も魔法や魔力は他人から教わり譲り受けたものなのだ。
ならその伝承もあながち嘘ではないのかもしれない。
「それでも、闇雲に探してたら見つからないな」
最初に会った場所の周辺を探すこと4時間、町で買った干し肉と黒パンの簡単な昼食をして捜索を続けるが何もない。
こんな広大な砂漠の何処を探せって言うんだよ!!!
(この坊ちゃん王子に任せてたら切りがないな)
そう判断して魔法を使用した。
虚偽の魔法『偽眼≪ぎがん≫』、簡単に言えば偽物の目を作りだして、監視カメラのように見る魔法だ。
大量の目玉が中に浮く光景はもはやホラー映画だ。それを四方八方に飛ばして幽霊や墓らしきものを探す。
「セイの魔法は本当に凄いな!」
「ありがとよ!でも俺より強い奴なんていくらでもいるだろう?」
「いくらでもは言いすぎだが確かにいる。特に私の身近には」
「?」
「前にも言ったがこの世界ては魔力が高い者が貴族や王族になり易い。だから私以外の兄弟や親戚の王族、貴族は皆が優れた魔法使いなのだ」
「で、俺より強いのは誰なんだ?」
「相性にもよるが、少なくとも私以外の王子、王女は6人とも最高クラスの魔法使いだ!セイでも勝てないだろう」
「へぇーそんなに強いのか!具体的には?」
「それこそ伝説級だ。父上が歴代最高の魔法使いだったが、兄弟達もいずれはそれを超えると言われている。
山を削り、海を割り、天を裂き、地を砕く。
そんな人外の者達なのだ!」
よく分からん、実際に見てみないことには、だが少なくともコイツが敵いそうもないな。
ただでさえ甘ちゃんなんだから、権力争いなんて向かないことこの上ない。
そうしてると、
「お、なんか砂漠の中に変な物が埋まってるぞ!」
「本当か!」
「よし、行ってみるか!」
馬を走らせて15分、蟻地獄のように大きなくぼみがあり、その中心部に黒い石のような物が埋まってる。
墓にしてら貧相だし外したか?
「ただの石のようだが?」
「そうだけど、なんか気になるんだよな?」
意味深な所にあるただの石、一応触れてみることにした。
熱を持って熱いかなと思ったが熱くない、そしてあの時の急に暗くなる感覚に襲われた。とっさに身構える。
「うお!?当たりか?」
目を開けると、そこには黒い空間が広がっていた。暖かくも寒くもなく温度そのものがないような距離感も広さもよく分からない闇の空間。
呆然と立ち尽くしていると、黒い影の少女が現れた。
「こんにちは、嘘つきさん♪異世界はどう?」
「こんにちは、てめぇーが俺を呼んだのか?」
影の少女は頭を左右に振り、否定する。
「呼んだって言うと違うわね!どう言ったら適切かしら?」
指を顔に当てて可愛らしく首を傾げる。表情は影で分からないけどおそらくは微笑んでるような雰囲気は伝わってくる。
(それよりもなんてプレッシャーだよ!!!このガキ!!!)
「ガキじゃないわよ♪あなたが探してたこの世界に魔法をあげた賢者さまよ!
まあ賢者なんて呼ばれるよりお姫様とかにほうがいいけど♪」
(心を読まれた!?コイツヤバすぎる!!)
歳は12、13歳くらいだと思うが、押し潰されそうなプレッシャーを感じた。大人や野生の獣とも違う、教師や権力者とも違う圧力、そう目の前にいる存在に刃向かうことすら考えられないような力を感じる。
(もしかして、神様とかそんな存在なんじゃ!どの道、戦いになったら勝ち目はないな!!)
「まあ、いいわ!それよりあなたにお願いがあるのだけど」
「お願い?」
「あの王子さまを助けてあげて欲しいの!」
「何でだ?あの甘ちゃんに何かあるのか?」
「さあ?」
「さあって・・・」
「私はあの子≪・・・≫似ているから気まぐれで助けたてあげたいだけ、あの王子がどんな存在かは知らないわ!」
ふざけた奴だ!しかし、逆らえばどうなるか予想もできない。
いや、碌な目に合わないのは目に見えてるか。
「分かった。だけどお願いを利くんだ何か報酬でもくれよ!」
「うふふ、あなたは面白い子ね!嘘つきなのに優しいくて愚かな子!」
年下にしか見えない影に子供扱いされるなんて、まあこんな存在が見た目通りの年齢なわけないか。
「いいわ!あの王子を次の王様に出来たらあなたを元の世界に返してあげる!」
「出来るのか?」
「ええ、簡単なことよ♪」
実にあっさりと帰還の目処が立ってしまった。
拍子抜けしてると、影の少女が急に目の前まで接近してた。 少し距離が離れていたのに瞬間移動でもしたのか、
「でも、このままじゃ厳しいでしょうからあなたに特別な力をあげる♪」
「俺に?あいつじゃなくて?」
「ええ、あの王子にあげてもうまく使いこなせないから、嘘つきのあなたに真実をあげるわ♪
それで、自分すら騙してみせて!」
頭に手が置かれる。身長的に届かないはずなのに!!
そして、また浮遊感に襲われた。
頭から何か流れるような感覚がする。それが激痛に変わり俺は悲鳴を上げる。
「うぁがああああーーー!!!!!!」
「それじゃあね♪」
最後に可愛らしくこちらに手を振る影の少女を見て意識が途切れた。
ーーーーこれは夢か?
懐かしい、あの家出して『親父』に出会ってからいろいろなことを教えて貰った。
体術や勉強、釣りや野宿のやり方まで様々なことを、でも何よりあの人から熱心に教わったのは魔法だった。そう俺は『親父』から魔法を教えて貰った。
この世界のものに比べれば大した威力もない、子供騙しの魔法たが、それでも特別な何か得られるのは快感だった。
本当の両親なんて親じゃない、『親父』が俺の親だと思っていた。
親父が消えてからも両親は『母』と『父』と呼びながら、決して親だと思ったことはない。
あの2人は母と父と言う赤の他人なのだ。まあ、詐欺で逮捕されたからどの道俺は一人なのだが、
最後に親父に会ったときに何か約束した気がしたけど何だったか覚えてない。
その話を両親や警察、同級生にしたが誰も信じなかった。
俺が嘘つきと呼ばれるようになった出来事、それでもアレは本当のことだった。
そして、現在は俺は高校生になり、それから・・・
ーーーー目が覚めた。そうだよ異世界きたよ!前の話より信じられない!!
俺は異世界に飛ばされた。
何でもあの王子を次の王様にしないといけないらしい。肝心の王子は?
「ああ、よかった目覚めたか?驚いたぞ!急に意識を失って倒れたから」
「ん?ああ、戻ってきたか?」
「ううん?戻ってきたとは?」
「夢?なわけないか、ならこれは・・・墓は本物、いやあれは死んでる生きてるのレベルじゃ・・・だとしたら、本当に・・・でもあれが俺を呼んだんじゃないなら?・・・誰が?そもそも何で俺がここに?」
「おい?大丈夫か?」
「大丈夫だ。少し混乱してるけど、まあいい目的は達した」
「え?どういうことだ?」
コイツにあれを教えていいのか?
俺は少し考えて教えないことにした。
あれは賢者なんて生易しいもんじゃない、この甘ちゃんが下手に会えばどこぞの魔王のように世界を半分もらってゲームオーバーだ。
ハッピーエンドにはならない。
「賢者なんていなかったって話だ!さあ、暗くなる前に町に帰ろうぜ」
「しかし、」
「王になるための儀式をもう少し詳しく教えろ。こんな信憑性のない噂に躍らされるよりもいい方法があるかもしれないだろう!」
「グッ!わ、分かった。とりあえず、町に戻るとしよう」
(悪いなシン、俺はお前を利用するぜ。
あんな帰る場所もない世界だが、俺は帰らないといけないんだ!)
時間も経ち夕日で赤く染まった砂漠を馬に乗りながら眺める。血に染まったような砂がやけに不気味に感じた。
嫌な予感がする。
「はぁーっ、やはり噂は噂でしかないのだろうか?」
「そうだな!まあ、噂が本当でも賢者の墓があろうとお前の目的は変わらないだろう?俺の知り合いの言葉だが、何か出来るか考えるよりも何でもやってみる方が早いだったかな?」
「何ができるかより何でもやってみるっか、そうだな私はまだ何も行動してない、やれるだけのことはやってみよう!」
「そうそう、その意気だ!」
「ああ!感謝するセイ!」
もうすぐ町が見えるはずだ。その前にもう一度王位継承の儀式を詳しく聞こうと思っていたら、
「なあ、やけに明るくないか?」
「ああ、夕日も沈みかけてるのに?」
胸騒ぎがして急いで町に戻る。すると
「「「「「うわあああああああああああーーー!!!」」」」」
叫び声と何が焼ける音、馬が駆ける音に建物が崩れる音、町がアイリースが襲撃されていた!!!!!