14 王都で虚実の真偽
これで終わりです。
影の少女に無理矢理に力を渡され激痛の中で気を失った。
前回よりも激しい痛みに苦しみながらも、懐かしい心安らぐ夢を見た。
中学時代にプリントを渡すために彼女に会いに行く日々、
病弱なために病院から出られず、
長い入院生活を送っていた彼女に初めて会ったときの夢だ。
あの日、病室でベッドに腰掛ける彼女を見て、
俺はまさかの一目惚れしたのだ。
それだけ彼女は美しかった。
儚い存在で、美しい黒髪は長くサラサラとして夕日で輝いていた。
本を読みながらこっちを見た彼女に事情を説明してプリントを渡すが返事はなかった。
無表情でこちらに関心があるようには見えない、何かまずかったかと焦ったがそのまま帰ってしまった。
それから、俺は週に2、3日は彼女に会いに行ったが、それで彼女の本性を思い知らされた。
彼女は、卯月理香はとにかくワガママだった。
何をしても自分の意見を曲げないでこちらの都合も無視して要求を通す、まあ簡単に言えばパシリに使われてしまった。
ジュースからお菓子、雑誌に小説とにかく彼女が要求するもの全部を買いに行った。
病弱だが彼女は強かった、精神的にも病気に負けず必死に生きていた。
その姿にきっと感銘を受けたのだろうな、俺は彼女に付ききりになった。
中学校には『親父』から習った魔法で誤魔化して、よくバレずに抜け出して彼女の病室で過ごした。
何度も彼女にサボったことを怒られたが、しつこく何度も来たせいな呆れながらも滞在を許してくれた。
そんなことが1年続いた。
ある日彼女の容態が悪化して危篤状態に陥った。
俺は禁忌として使用を控えるように言われた魔法を彼女に使った。
多分これが『親父』の言いつけを初めて破った瞬間だった。
病気そのものが消えて彼女は退院することになった。
そして、俺は彼女に告白して付き合うことになった。
しかし、3日目に彼女は失踪した。
いや、完全に消えたのだ。その存在ごと、全てが、写真も痕跡も全てが、跡形もなく。
俺は警察にも周りの知人にも話したが誰も信じなかった。
いや、信じてくれた奴もいたが見つからなかった。
神隠しのような出来事、俺が二度目の嘘つきと呼ばれるようになった出来事、この日から俺は世界に失望したんだ。
そして、アイツと出会って、理香のことを諦めないと決めて、それでも世界に失望し続け、堕落した日々を過ごしていたのに、どうして俺は異世界にきたんだ?
何度目か、分からないその問いを繰り返す。
目を覚ますと朝だった。
(嫌な目に会ったけど、懐かしい夢を見たもんだ!)
あの頃は『親父』がいて魔法やいろいろなことを学んで楽しかった。
『理香』と一緒にいると些細なことさえ嬉しかった。
そして、2人が消えて、誰も信じなくて、嘘つきと呼ばれるようになったあの時から俺は嘘を吐くようになった。
親のせいで、詐欺や嘘が嫌いだったがそれでも世界に対して復讐のつもりだったのか、嘘で自分を固めた。
平凡な男子生徒が嘘つきの生徒に変わった瞬間だった。
(いや、俺にとってあの2人がいない世界そのものが偽物で嘘の世界だったのかもしれない……)
だから、受け入れられなかった。
でも逃げたくなかった。
(だから、帰るだ!!あんな影に言われたからじゃない、自分の意思で、俺はあいつを王にする!!)
あの影はあいつ王にすることになんの得があるのか知らないが、そんなことは関係ない、
ただシンの姿が中学校のアイツと重なると、どうにも放っておけない。
いや、認めよう俺はアイツに憧れていたのだ、
誰からも愛される、
誰にもでも優しい、
世界に寵愛されたようなアイツに、
そう、俺はアイツになりたかったんだ!!
だからシンを王にすることでアイツのようになった俺を見たかった。
(まあ、あの影が約束通りに元の世界に帰してくれたら儲けもので嘘ならシンを使ってこの世界の魔法で帰るだけだ!)
来れたなら帰る方法も必ずあるはず、
(そのためにもまずは学園に潜入しないとな、そう言えば?あの影からまた魔力と力を貰ったのか?でも、素直に使うのはなぁー)
不安しかない、贈り物はとりあえず置いておく。
「セイ!起きてる?」
「ああ、ヤシロ起きてる!」
「なら、朝ごはん作ったから、食べよう!」
さて、ヤシロはどうしようか?そう思いながらも腹の虫が鳴ったのでひとまず朝食を頂くことにする。
(さて、世界を騙しに行きますか!)
この後、王都の反乱を鎮めて、四つの島国を傘下にした王子がいた。
その王子は学園にいながら、何故か各国に出向き時に嘘を吐いてでも人々を救った。
不思議とその王子は学園から抜け出したはずはないのに様々な場所で発見された。
まるで、
何かに騙されたような話、
嘘を吐かれたの真実となった話、
その王子は王となる、それは真実か偽物か誰にも分からない、
そんな物語…………
少し中途半端ですがご愛読ありがとうございました。
新作やまだ連載中の作品に力を入れたいと思っています。
これからもよろしくお願いします。